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SAPジャパン、2018年の中堅中小企業向けビジネス戦略を発表

「パートナー・パッケージ・ソリューション承認制度」を本格展開

 SAPジャパン株式会社は4月10日、同社パートナーが中堅・中小企業向けにSAPのソリューションをパッケージ化して販売機会を創出しやすくする新たな取り組み「パートナー・パッケージ・ソリューション承認制度」を、本格的に展開すると発表した。

 同日に行われたプレスセミナーでは、中堅中小企業向けビジネスの概況、および「パートナー・パッケージ・ソリューション承認制度」を含めた2018年のビジネス戦略について説明した。

 まず、2017年の中堅中小企業向けビジネスを振り返って、SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長の牛田勉氏は、「2017年は、グローバルで中堅中小企業の新規顧客が9300社増加し、新規顧客全体の85%が中堅中小企業で占められた。日本市場でも、中堅・中小企業の新規顧客が昨年に比べて倍増し、デジタルマーケティング経由の案件創出数も2.5倍に拡大している」と、国内外で中堅・中小企業の新規顧客が右肩上がりで増加していると述べた。

SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長の牛田勉氏

 「また2017年は、中堅・中小企業向けビジネスの認知度向上を図るため、専用のWebサイトやブログを立ち上げ、積極的に情報発信を行ってきた。この結果、Googleオーガニック検索の『中小企業 ERP』で最上位となった。さらに、2017年に実施したSAPソリューションに対するイメージ調査でも、『大企業向け』のイメージは前年の32.5%から大幅に下がり17.4%となった。一方で、『低コストで導入できる』、『使いやすい』、『実績が多い』というイメージは前年から上昇した」(牛田氏)と、中堅・中小企業への認知度も浸透しつつあることを強調した。

SAPソリューションに対するイメージ調査結果

 こうした状況を踏まえ、2018年の重点施策として、「製品戦略では、調達系ソリューション『Ariba SANP』の中堅企業向け製品を新たにリリースする。パートナー戦略では、パートナーとの共同による営業・デジタルマーケティング活動を推進していく。そして、マーケティング戦略では、中堅・中小企業専用Webサイトをリニューアルするとともに、AIを活用した戦略的マーケティング活動や積極的なブランディング活動を展開していく」との計画を明らかにした。

 今回、このマーケティング戦略の一環として、「パートナー・パッケージ・ソリューション承認制度」を本格展開する。同制度は、中堅・中小企業がソリューションを導入する際、より早く導入効果を体感することが重要であるということを背景に開発されたもので、パートナーがSAPの最新ソリューションを活用して開発したソリューションをSAPが承認し、顧客に提供する制度となる。

 この制度によって、顧客は、質の高い事前定義済みソリューションを短期間かつ低コストで導入することが可能となる一方、パートナーは獲得までの投資を抑え、高い利益率を確保して競争力を高めることができる。

 従来の「SAP Business All-in-One for SAP S/4HANA, on-premise editionパートナーソリューション承認制度」で対象となっていた「SAP S/4HANA」オンプレミス版に加え、同制度からは「SAP S/4HANA」パブリッククラウド版およびプライベートクラウド版や「SAP Business ByDesign」「SAP SuccessFactors」「SAP Analytics Cloud」「SAP Leonardo」など、複数のSAPソリューションも対象となる。これにより、パートナーは、容易に顧客のクラウドソリューションの導入を支援できるようになる。

 また同制度は、動画やソーシャルメディアを活用したデジタルな販促活動にも対応しており、パートナーはより効率の高い営業活動への切り替えが可能になるという。

 なお、プレスセミナーでは、中堅中小企業のSAPソリューション導入事例として、東京化成工業株式会社の取り組みが紹介された。東京化成工業 代表取締役社長の浅川誠一郎氏は、「当社は、『試薬を通じて社会貢献する』を企業理念に、グローバルビジネスを展開する化学薬品メーカーで、現在の製品数は2万8000を超えている。SAPソリューションについては、グローバル展開を見据えて、2003年にSAP R/3の導入を決定し、2004年から稼働を開始した。また、2012年にSAP ECC6.0.2014年にはSAP HCMを稼働開始している」と、SAPソリューションの導入経緯を説明した。

東京化成工業 代表取締役社長の浅川誠一郎氏

 「SAPソリューションの導入によって、長年の課題であった生産の遅れや納品の遅れを解消することができた。また、在庫の精度が高まり、営業活動にも貢献した。さらに、海外拠点との整合性が高まったことで、グローバル展開が加速し、中国やインドへのビジネス進出を実現した。同時に、各部署の世代交代が進み、会社全体の活性化にもつながった」と、大きな導入メリットがあったことを説明。

 「しかし、10年以上使い続ける中で、システムの複雑化やデータの散在化などさまざまな課題が浮かび上がってきた。これらの課題については、海外パートナーが提供するパッケージソリューションを利用することで解決できることがわかった。そして、昨年、SAP S/4 HANAを活用したデジタルトランスフォーメーションを実施することを決定し、2020年の稼働開始を目指してプロジェクトを進めていく」と、今後のSAPソリューションの展望について語った。