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中堅・中小企業のデジタル変革をサポートする――、SAPジャパンのSME向け新ビジネス戦略

 SAPジャパン株式会社は4日、国内の中堅中小企業を対象とした新しいビジネス戦略を発表した。2017年1月1日付で年商250億円以下を含む中堅中小企業向けに特化した営業組織を設立。70名以上の体制で、グローバルと連携しながら、SME(Small & Medium Enterprise)市場シェアの拡大に臨む。

2016年までは30名ほどだった営業体制を2017年度からは70名体制までに拡張。パートナービジネスの強化にも取り組む

 SAPジャパンの営業組織にはこれまで年商規模での区分はなかったが、デジタル変革が企業規模を問わずにグローバルで拡大している現状を受け、国内においてもデジタルマーケティングを主軸とした中堅中小企業向けに特化したマーケティング/販売活動が必要と判断、2017年度からは年商1000億円以上の「エンタープライズ」とは別に、250億円以上1000億円以下の「中堅中小1」、250億円以下の「中堅中小2」と顧客企業の年商別にターゲティングを行い、営業組織をそれぞれに特化させている。

 また営業組織の再編成に伴い、パートナービジネスの統合にも着手、中堅中小企業に強いパートナーの発掘にも力を入れるとしており、すでに4月1日付で新規に11社のパートナーを獲得したという。

デジタル変革のトレンドにより、SAPの中堅・中小企業向けビジネスはグローバルで拡大中

 同社でSMEビジネスを統括するSAPジャパン バイスプレジデント ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長 牛田勉氏は「大企業のユーザー企業が多いSAPジャパンにとって、年商250億円以下の企業のサポートは正直かなりのチャレンジ。しかしグローバルで見ればSAPの80%以上の顧客はSMEであり、S/4 HANAの新規顧客の60%はSME。特にクラウドが普及したことにより、中堅中小企業にとってもデジタル変革の導入が容易になっている。この流れに乗って、クラウドにリソースを投入してきたSAPジャパンが日本の中堅中小企業のデジタル変革をサポートしていきたい」と語る。

SAPジャパン バイスプレジデント ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長 牛田勉氏

 具体的なSMEビジネス施策としては、「製品」「パートナー」「マーケティング」の3つに大別して進められる。

・製品:中堅中小企業の業務にフォーカスしたクラウドERP「SAP Business ByDesign」などクラウド製品のラインアップ拡充をはかる。ERPのほかにも営業系の「SAP Hybris Sales Cloud」、人事系の「SAP SuccessFactors」、分析系の「SAP BusinessObjects Cloud」などSaaSにも注力
・パートナー:SAPの専任担当者による個別のパートナー支援体制、地方を含む中堅中小企業に強い新規パートナーの発掘、パートナーとの共同マーケティング活動など
・マーケティング:中堅中小企業専用のWebサイト(http://www.sap.com/japan/gb)、ソーシャルメディアを活用した事例および製品紹介、Webセミナーや地方でのリアルセミナーイベントなど

国内の中堅中小企業向けWebサイトもオープン。導入事例やソリューションなどが数多く紹介されている

パブリッククラウドベースのERPがFinTechベンチャーのオペレーションを支える――Paidy

 発表会には、FinTechベンチャーであるエクスチェンジコーポレーション CFO 乾牧夫氏が登壇し、同社における「SAP Business ByDesign」の導入事例について紹介を行っている。

エクスチェンジコーポレーション CFO 乾牧夫氏

【お詫びと訂正】
初出時、乾氏の肩書きをCOOと記載しておりましたが、CFOの誤りです。お詫びして訂正いたします。

 エクスチェンジコーポレーションは現在、マルチプラットフォームでクレジットカード不要なオンライン決済サービス「Paidy」を事業として展開している。乾氏はFinTechベンチャーの課題として

・内部統制の徹底と事業プロセスの透明度維持
・取引先にとってのカウンターパートリスクの除去
・KPIのリアルタイム把握

を挙げており、「ベンチャーだからこそ、監督官庁や取引先に対する信用の積み上げと透明度の維持、強固なセキュリティの担保が重要。さらに“何をKPIにするか”の見極めがビジネスのスピード化と効率化に欠かせない」とする。そのためには、リアルタイムな財務把握、戦略性の高いKPI抽出、財務会計のインテグリティ強化といったことを実現するERPが必要であり、SAP Business ByDesignを選んだという。

 「SAP Business ByDesignを選んだ理由は、自社による技術開発を貫くぶれない設計思想、クラウド対応、低コストの3点。そもそもわれわれにとってオンプレミスは最初から度外視。パブリッククラウドでも十分に利用可能なパフォーマンスを実現するERPとして高く評価している」(乾氏)。

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 「パブリッククラウドへのアレルギーが、だいぶ小さくなっているという感触をもっている」――。牛田氏は国内の中堅中小企業がクラウドへ移行する障壁についての質問に対し、こうコメントしている。

 SAPは以前から中堅中小企業の顧客をSM"E"と呼んでいる。ビジネスの規模が小さくてもエンタープライズであることには変わりないというとらえ方だ。

 しかし、これまでSME向けに提供してきたERPは、「大手企業に提供してきたERPの機能縮小版、それもオンプレミス」(牛田氏)であり、小回りの利くソリューションを求めるSMEのニーズに決して適合してきたとは言い難い。

 だが、ここ数年でクラウドビジネスに主軸を向けたSAPは、クラウド製品のポートフォリオが拡充し、中堅中小企業に対しても「部分最適ではなく全体最適を考慮した製品を提供できるようになってきた。エンドツーエンドでサポートする体制も整っている」と、十分にビジネスを展開する下地ができたことを強調する。

 「SAPがこの分野(SMEビジネス)でチャレンジャーであると認識している。だからこそ、組織体制を刷新し、中堅中小企業を本気でサポートする姿勢であることを示す必要がある」と牛田氏。導入障壁の低いクラウドソリューションの推進により、グローバルから遅れてがちと指摘される国内中堅中小企業のデジタル化を支援していく。