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Dell EMC、ひとり情シスの実態調査をふまえ、中堅企業向けの支援策を強化

 デルとEMCジャパンは30日、中堅企業のIT投資動向を調査し、その結果に基づいた中堅企業向け施策を強化すると発表した。

 2017年2月にも中堅企業IT投資動向調査を行っているが、今回はそれに続くもの。2017年調査では27%だった情報システム担当者1人以下である「ひとり情シス」、IT専任担当者がいない「ゼロ情シス」の割合が31%と、1年で4ポイント増加。また30%の企業が、直近3年間にセキュリティ事故被害にあっていることも明らかになった。

中堅企業のIT人材数
セキュリティ事故の発生状況

 その一方で、IaaSの利用動向は昨年と同様に限定的な企業の活用にとどまっていることも明らかになった。

 「IaaS利用については、『検討している』との回答が増加している一方で、オンプレミスに戻るお客さまも増えている。本来は、クラウドを経験することでハイブリッドクラウドなどの利用が増えるものだが、そうなってはいない」(デル 執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏)。

 昨年調査を行って以来、さまざまなひとり情シス支援策を提供してきた。その結果、日本におけるデルのPCシェアは前年から1ポイント増の14%だが、従業員数が100人以上1000人未満の中堅企業では26%と前年から11ポイントアップするなど、実績が出ているという。

デル 執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏

9つの打ち手でさらに中堅企業向け施策を強化

 デルでは、従業員規模100人以上1000人未満の企業を「広域営業統括本部」が担当している。

 同統括本部の統括本部長である清水氏は、「デルというと新興企業のイメージがあるようだが、ミッドマーケットは30年間ビジネスを展開してきた。それだけ長くやっているだけにシェアも高く、EMCとの相乗効果が最も高いのも、私の事業部だ」と述べ、事業の歴史と実績に自信を見せる。

広域営業統括本部の担当するお客さま

 その一方でこのマーケットに属する中堅企業の実態を調査すると、ひとり情シス、ゼロ情シスなど厳しいリソースで情報システムに取り組む企業が多いことも明らかになっている。

 「ひとり情シスには、1人でなんでもできるフルスタックのエンジニアもいる一方で、一番多いのは、ITリテラシーが高くないのに情報システム部門を担うことになった人。苦労して取り組んでいる方が多い」(清水氏)。

 こうしたひとり情シス企業を支援するために、“ゆりかごから墓場まで”、つまり端末の導入検討段階から廃棄・更新まで、ライフサイクルのすべての情報を一元管理し、企業をトータルでサポートしている。

 端末についても、「デスクトップ、ノート、ワークステーション、サーバーと、中堅企業に最適な端末をトータルで提供できるベンダーはデルだけ」(清水氏)とアピールし、中堅企業向けビジネスをさらに強化していく考えを示した。

中堅企業向け推奨モデルPC
クイックウィンソリューション
ゆりかごから墓場まで、をサポート

 さらに、昨年実施した「ひとり情シス向け 9つの打ち手」も強化する。

 具体的には、「クローニング支援」「自動故障通知」「VDI+セルフポータル化」「クラウドDRとデータ保護」「セミナー・ユーザー情報会」「HCI+ハイブリッドクラウド」「シンプルで高パフォーマンスなユニファイドストレージ」「ハイブリッド」「ITコンシェルジュ」の9つ。

 この中でも、ビジネスが伸長している要因となっているのが、ひとり情シスを支援するインサイドセールス部隊に配置した「コンシェルジュ」の存在。すべての製品に対する質問を受け付けており、訓練された製品知識と、顧客カルテをもとに、過去に購入した製品をふまえて30分以内に回答することを目標としている。

 コンシェルジュの人員は2017年から現在まで50人を増員しており、2018年も増員に加え資格取得者を増やすなど、質、量ともに増加していく方針だ。

 また、9つの打ち手で成功した事例を紹介し、参考例として紹介していく。

ひとり情シス向け 9つの打ち手

セキュリティトラブル対策ではCSIRTの必要性をアピール

 説明会では今回のアンケートの詳細についても発表が行われた。

 それによると、中堅企業経営者の平均年齢は57.7歳で、前年調査に比べ1.6歳若返っている。経営者の年齢が若返るとITの理解度が高くなる、といった傾向があるとのことで、今回の調査で平均年齢が若返ったことにより、ITを理解する経営者が増加しているという。

 また世代が若くなるほど、HCIなど新しいキーワードの認知度も高くなっている。実際に最新技術を選択するケースも増えていく傾向が出ているという。

 ただし、クラウド(IaaS)の利用は前年と変わらずに限定的な利用にとどまっている。「むしろ、オンプレミスに回帰する傾向が出ている。これはHCIなど新しいテクノロジーが登場している影響もあるのではないか」(デル 広域営業統括本部 企画部長 石垣浩輔氏)といった、新しい傾向も出てきているとした。

経営者の若返りが見られるという
デル 広域営業統括本部 企画部長 石垣浩輔氏

 セキュリティについては、調査によって明らかになった傾向と、それに対する対策が提案された。

 セキュリティトラブルについては、「誰もが遭遇することで、誰が悪いわけでもないことをまず認識しておくべき」(デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長 木村佳博氏)と提言。その上で、実際に起こったセキュリティトラブルをもとにした「セキュリティ事件簿」を紹介している。

 例えば、付き合いの長い物流業者を偽装したメールから感染するインシデントや、不正プログラムを検出して実行停止するソフトを導入していたものの、バッチファイル、パターンファイルの最新化を行っていなかったためにインシデントが発生する、といったトラブルが起こっている。

 経費削減目的で導入したフリーソフトから、ネット広告経由でインシデントが発生したケースや、不正プログラムの実行をブロックするように設定していたものの、ユーザーがブロックを許可してしまった結果、インシデントが発生したケースもあった。

 こうした実態をふまえてデルでは、「9つの打ち手を強化することをお勧めしたい。さらに、セキュリティ事故はどの企業にも発生するという前提で、事故後のプロセスを事前に用意することも必要だ。また、CSIRT活動の実践を提言したい。事故が発生した後に迅速な復旧をはかるための相談窓口/エスカレーションルームの設置、教育/啓発活動などが行われていない企業が多いが、CSIRTチームを作っておくことが、実はコストを最小限とすることにつながる」などとした。

セキュリティ対策状況
デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長 木村佳博氏

 昨年行ったセミナーでは、CSIRTを前提としたIPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」普及を目指した内容となっていた。今年度も同様の内容のセミナーを開催し、中堅企業に対策を呼びかけていく方針だ。