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SAPジャパン、新たなCRMアプリケーションスイート「SAP C/4HANA」を発表

従来型CRMのボトルネックをすべて排除し最良の顧客体験を実現

 SAPジャパン株式会社は25日、CRMを刷新する新しいアプリケーションスイート「SAP C/4HANA」を、同日より提供開始すると発表した。記者発表会では、「SAP C/4HANA」の製品概要についてデモを交えて説明するとともに、株式会社スノーピークの導入事例が紹介された。

 「SAP C/4HANA」は、SAPの次世代ERPである「SAP S/4HANA」と連携し、「顧客フロントオフィスソリューション」と「バックエンドソリューション」との境目をなくすことで、エンド・ツー・エンドで一つの顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供する新たなCRMアプリケーションスイート。

 従来のCRMソリューションは営業だけに焦点を当てていたが、「SAP C/4HANA」では、CRM業務におけるボトルネックをすべて排除しており、例えば、エンドユーザーがどんなチャネルで企業と接しても、一貫した顧客体験を得られることができるという。また、マーケティング業務から配送納品業務に至るまでの企業内プロセスにおいても、良好な顧客体験を実現可能となる。

 SAPが実施した「2017年日本消費者インサイト調査」によると、日本の消費者の63%は「より良い顧客体験を提供する企業とかかわりたい」と思っており、満足のいかないエクスペリエンスを体験した場合は、91%が「すぐにまたは次回からはその競合から購入しよう」と考えていることがわかったという。

 また、メーカー/ブランドの個人情報保護管理に「大きな不安を抱いている」と回答した消費者は66%を占めていた。

 そして、日本の消費者がブランド/メーカーと決別する主な理由には、「知らない間に個人情報が再利用された」(78%)、「カスタマーサービスの対応が不満だった」(73%)、「大量の販促メールが送られてきた」(60%)、「納期遅れなどの2回以上のミスがあった」(49%)が上位に挙がっていた。

 SAPジャパン SAP Customer Experienceソリューション事業本部 事業本部長の高山勇喜氏は、こうした消費者行動を踏まえ、最良の顧客体験に必須となる要素として、1)デジタルファースト、2)エンド・ツー・エンドでの顧客との関係ケア、3)一人の顧客との全接点の管理、4)バックオフィスの情報(在庫など)とフロントオフィスとの遅延のない接続、5)高い信頼性――の5つを指摘。

 「『SAP C/4HANA』は、これら5つの必須要素を網羅し、最良の顧客体験を実現するためのすべての機能を完全に統合したクラウドソリューションとなっている。従来のCRMは、マーケティング業務から配送納品業務までの企業内プロセスで整合性が取れないため、消費者に不快な顧客体験を与えてしまうリスクがあったが、『SAP C/4HANA』では、そうしたボトルネックを排除したおもてなしを提供できる」としている。

SAPジャパン SAP Customer Experienceソリューション事業本部 事業本部長の高山勇喜氏

 具体的な「SAP C/4HANA」の製品ポートフォリオは、「SAP Customer Data Cloud」(買収したGigyaのソリューションを含む)、「SAP Marketing Cloud」、「SAP Commerce Cloud」(買収したHybrisのソリューションを含む)、「SAP Sales Cloud」(買収したCallidusCloudのソリューションを含む)、「SAP Service Cloud」(買収したCore Systemsのソリューションを含む)で構成される。

「SAP C/4HANA」の製品ポートフォリオ

 高山氏は、各製品の機能について、「『SAP Marketing Cloud』は、カスタマージャーニーを詳細にとらえた上でワン・ツー・ワンマーケティングを実現する。『SAP Commerce Cloud』は、B2CにもB2Bにも、すべてのタッチポイントでのパーソナライズショッピングを実現する。『SAP Sales Cloud』は、カスタマージャーニー全体にわたって顧客との良好な関係を維持し、営業活動をガイドする。『SAP Service Cloud』は、コールセンター機能などを利活用しながら、購入後の顧客体験を万全にサポートする。そして、『SAP Customer Data Cloud』では、顧客同意に基づいた信頼できる顧客情報を基に、さらなる顧客ロイヤルティ強化を実現する」と説明。

 「これらの機能は、『SAP Fiori』によって、すべて一つのユーザーインターフェイスから利用することができる。また、フロントオフィスの各機能は、他社製品をビルトインすることも可能で、既存の環境を生かしながら導入できるようになっている」とした。

 さらに、「SAP C/4HANA」は、インテリジェントテクノロジーであるSAP Leonardoの新しい機械学習機能と連携することができるため、例えば、消費者のプロファイル情報と人気商品の傾向を過去データから学習し、EC上でお勧め商品を自動的に提案したり、過去商談の受注/失注をデータから学習して自動的に販売予測を行ったりすることも可能になるという。

 「SAP C/4HANA」の利用イメージについて、SAPジャパン SAP Customer Experienceソリューション事業本部 ソリューションエンジニアリングマネージャーの阿部匠氏がデモを交えて説明。デモでは、ロボットアーム販売会社と、その顧客である農作物生産・販売会社を例に挙げて、それぞれの「SAP C/4HANA」の活用シーンを紹介した。

SAPジャパン SAP Customer Experienceソリューション事業本部 ソリューションエンジニアリングマネージャーの阿部匠氏

 「農作物生産・販売会社の生産担当者は、『SAP C/4HANA』の画面から、収穫した野菜を箱詰めするロボットアームの稼働状況を把握できる。そして、野菜の収穫量に対して、ロボットアームの稼働が追いついていない場合は、今後出荷量が減少するリスクがあるとアラートが出る。すると、ロボットアーム販売会社から最新機種のリコメンド通知が届き、製品のリプレースを検討し、出荷量の向上につなげることができる」(阿部氏)という。

農作物生産・販売会社の生産担当者が使う「SAP C/4HANA」のデモ画面

 「一方、ロボットアーム販売会社の営業担当者は、『SAP C/4HANA』の画面から、営業成績の状況や営業スケジュールなどを確認できる。また、今後商談につながる可能性の高い顧客が、機械学習によって表示される。ここで、顧客の農作物生産・販売会社が、現在稼働中のロボットアームでは野菜の収穫量に追いついていないことがわかり、最新機種の導入提案につなげることができる。この時、『SAP C/4HANA』の画面を顧客の担当者とシェアしながら、製品のカスタマイズや見積もり提案を行うことも可能だ」(阿部氏)と説明した。

ロボットアーム販売会社の営業担当者が使う「SAP C/4HANA」のデモ画面

 「SAP C/4HANA」の導入効果が高い業界としては、製造業(精密機械製造、産業機械製造、部品製造、組み立て製造、家電製造など)、小売卸売業(小売/卸、アパレル、フットウェア、消費財、旅行業)、サービス業(通信、公益、保険)を挙げている。今回の発表会では、導入事例として、スノーピーク 取締役 執行役員のリース能亜氏が登壇し、「SAP C/4HANA」の導入背景や目的などを語った。

スノーピーク 取締役 執行役員のリース能亜氏

 「当社は、アウトドアギアの製造・販売をコアビジネスとしてきたが、近年では周辺領域に事業セグメントを拡大し、急成長を遂げている。しかし、既存のオペレーションシステム基盤では、これをサポートしきれない状況だったため、中長期の成長を支えるオペレーション・顧客管理基盤を導入する必要があった」とリース氏。

 その中で、SAPを選定した理由について、1)顧客設定の最大化、2)海外・事業セグメントを横断したモデル、3)コストの最適化――の3点を挙げ、「長期的な拡張性を含めた観点で、SAPが優位であったため導入を決断した」としている。

 現在スノーピークが活用している「SAP C/4HANA」の機能は、「SAP Marketing Cloud」と「SAP Commerce Cloud」の2つ。「導入から約1年が経過するが、徐々に効果が現れており、特にフロントエンドである直営店の生産性が上がってきている。また、在庫管理のオペレーションも改善されつつあり、PDCAも早く回るようになってきた」(リース氏)と、「SAP C/4HANA」の導入メリットを述べた。