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NTT、AIの主要アルゴリズムによる学習・推論を暗号化したまま行える秘密計算AIソフトを開発、大学向けトライアルを開始

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は23日、AIの4大カテゴリ(回帰・クラス分類・クラスタリング・データ次元圧縮)の主要なアルゴリズムによる学習・推論において、データを暗号化したまま計算できる秘密計算AIソフトウェアを、世界で初めて開発したと発表した。

 NTTは、世界に先駆けて秘密計算技術の研究開発に取り組んでおり、秘密計算による統計処理に加え、秘密計算で深層学習を行う技術を世界で初めて実現している。ここからさらに研究開発を進め、機械学習の基本である回帰・分類・クラスタリング・データ次元圧縮の代表的なアルゴリズムを秘密計算で実現し、世界初の秘密計算AIソフトウェアを開発した。

 NTTでは独自の工夫により、データを暗号化したまま整列や分割操作を高速に行う技術や、浮動小数点演算を扱った実数演算および初等関数を効率よく実行する技術を開発しており、これらの技術をAIアルゴリズムにも応用することで、秘密計算によるAI処理のためのプロトコルを効率よく実現した。

 これにより、世界で初めてAIの4大カテゴリの主要なアルゴリズムによる学習・推論が可能な秘密計算AIソフトウェアを実現。具体的には、勾配ブースティング木・ニューラルネットワーク・階層型クラスタリング・主成分分析などを秘密計算で実行できる。秘密計算AIソフトウェアは、データサイエンティストがAI処理を実施する際に一般的に用いられる、Pythonを利用して容易にプログラミングできる。

 NTTではオープンサイエンスの実現に向け、大学の研究データを適切に管理しつつ利活用を加速するため、秘密計算を用いた安全な共用データ分析基盤に関する研究を進めている、情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下、NII)と共同で、秘密計算AIソフトウェアを利用できるトライアルを提供する。

 NIIとNTTは、秘密計算を用いた安全なデータ分析基盤に関する共同研究の中で、NIIが所有する計算機上に、NTTの秘密計算AIソフトウェア環境を構築し、研究者が試用できる環境を提供する。第一線で活躍する研究者からのフィードバックを得て、実際の研究における秘密計算技術の有用性を評価するとともに、次世代学術研究プラットフォーム「NII Research Data Cloud(NII RDC)」の秘匿解析機能の開発を見据えた技術検証を行い、世界最先端の学術基盤の構築を目指していくとしている。

 トライアルの利用対象者は、国内の大学・研究機関に所属する教職員・研究者。提供期間は2023年1月末から2024年3月度までを予定。利用料金は無料。利用は実験目的(非商用目的)に限る。

トライアルのイメージ