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パートナーとともに“New Normal”を顧客のもとへ―― AWSが2018年のパートナー戦略を発表、新プレミアパートナーにCTCを認定

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(以下、AWSジャパン)は26日、2018年のパートナー戦略について詳細を発表した。

 パートナーアライアンスのビジョンとして「パートナー企業とともに“New Normal”を顧客に届ける」(AWSジャパン パートナーアライアンス本部 本部長 今野芳弘氏)を掲げており、パートナーの経験と能力向上への投資に加え、さらにマシンラーニングやIoT、金融などイノベーションを生む、特定領域への積極的な投資を展開することを強調している。

AWSジャパン パートナーアライアンス本部 本部長 今野芳弘氏

 「AWSの日本の顧客は10万以上。これらの顧客のイノベーションを支援し、“New Normal”であるクラウドの価値を届けていくには、パートナーエコシステムの拡大が欠かせない。パートナー企業の経験/能力向上を支援しながら、新サービスの活用を促進し、イノベーションへとつなげていくことが“New Normal”へと導く道だと確信している」(今野氏)。

2018年のAWSジャパンにおけるパートナー戦略のビジョンは、「パートナーとともにNew Normalを顧客へ」

案件の大規模化をパートナーと支えるために――

 クラウドは“New Normal”になった――。2014年11月、AWS シニアバイスプレジデント(当時)のアンディ・ジャシー氏は、ラスベガスで行われたAWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent 2014」のキーノートでこう明言した。

 以来、AWSはたびたびクラウドの価値を表現する際、この“New Normal”という単語を使う。クラウドが物理サーバーのリプレースにすぎなかった時代、顧客の多くがスタートアップや小規模なビジネスチーム、Webやゲーム業界だった時代はとうに過ぎ去り、いまや世界中の大手金融機関や政府/公共機関、世界的グローバル企業が、イノベーションや新規事業のプラットフォームとして、さらにはより安全な基幹システムの基盤として、AWSクラウドを選択している。

 特に大手金融機関におけるクラウド採用の動きはここ1、2年、劇的に加速しており、日本でも三菱東京UFJ銀行が、5つの本番稼働環境を含め100を超えるシステムをAWSクラウド(MUFGクラウド)上で動かすなど、“New Normal”としてのクラウドを象徴する大規模なITトランスフォーメーション事例が目立つ。

2017年に発表された国内AWS事例の中でももっとも話題となったのが、三菱東京UFJ銀行の移行事例。世界的規模の金融機関でもAWSクラウドを本格活用しているという事実は、多くの企業に衝撃を与えた

 また、デジタルトランスフォーメーションを背景とするアプリケーション内製化の動きも依然として拡大中で、中でもAI/IoTへの注目度が高いことから、AWS re:Invent 2017では、開発者向けサービスでもそうしたトレンドを強く意識したラインアップが数多く発表されている。

 ITトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーションという、現代の企業を取り巻く2つの大きな流れに共通しているのは、いずれも案件が大規模化しているという点だ。

 AWSはこの流れをパートナーとともに支えていくため、以下の2つを2018年のパートナー戦略として掲げている。

1.パートナーの経験と能力向上に投資:マイグレーション、ERP/SAP、Windows関連におけるエンタープライズシステム対応能力向上、公共分野および地方エリアへの注力
2.イノベーションを生む特定領域への集中投資:マシンラーニング/IoT、金融市場、Alexa for Business、Amazon Connect、DevOpsおよびマイクロサービス化

顧客をNew Normalへと導くための柱となるパートナー戦略の概要

 そして、この2つの戦略で掲げた各領域での、パートナーへの投資強化項目として、

・認定プログラムによる支援
・専任のリソース
・トレーニングコースとリソース
・案件サポート
・事例化サポート

の5つを挙げているが、今野氏はこの中でも特に「認定プログラムによる支援」を拡充していく方針を示している。AWSの認定プログラムには

・AWSマネージドサービスプロバイダ(MSP)プログラム
・AWSコンピテンシープログラム
・AWSサービスデリバリープログラム

の3プログラムが用意されている。

 このうち、もっとも審査基準の厳しいMSPプログラムは外部監査による確認が100項目以上あり、顧客のシステムに対して計画から運用、最適化までのITライフサイクル全般を提供できる能力が求められるため、「結果として国内ではプレミアパートナーの8社しか取得できていない」(今野氏)という状況にある。

MSPプログラムはもっとも審査基準の厳しいプログラムであるため、結果として、国内で取得しているパートナーはAPNプログラム最上位のプレミアパートナー8社のみとなっている

 また、業種別および技術別に各ソリューション分野の有能パートナーを認定するコンピテンシープログラム、AWSのユニークな各種サービス(Aurora、Kinesis、DynamoDBなど)の導入成功実績をもつパートナーを認定するサービスデリバリープログラムにおいても、国内の認定パートナーはまだ決して多くない。

 そこで2018年の強化分野として、

・ITトランスフォーメーション:MSP、コンピテンシー: マイグレーション、金融、セキュリティ、ビッグデータ、SAP / サービスデリバリー: Server Migration Service、Database Migration Service、Aurora
・デジタルトランスフォーメーション:コンピテンシー: DevOps、IoT、マシンラーニング / サービスデリバリー: Lambda、Kinesis

をそれぞれ掲げている。

 特にコンピテンシープログラムのマシンラーニングにおける認定パートナーは国内にはまだ1社も存在しないだけに、AI関連のサービスを拡充させているAWSとしては、この分野のエキスパートとなるパートナーを早急に誕生させたいところだ。

 また、このほかにもパートナー企業が登録/更新したAWS対応ソフトウェアやSaaSソリューションを容易に検索できるサイト「ESP Online」を開設するなど、パートナーに関連する情報を積極的に提供する姿勢も示している。

パートナー企業のAWSサービスを簡単に検索できる「ESP Online」

パートナー2社も登壇

 なお会見には、2017年11月のAWS re:Invent 2017において、日本企業としては8社目となるAWSプレミアコンサルティングパートナーに認定された伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC) 執行役員 クラウド・セキュリティサービス本部長 藤岡良樹氏、AWSアドバンスドテクノロジパートナーのAOSテクノロジーズ 代表取締役社長 佐々木隆仁氏も出席し、それぞれAPNパートナーとしての意気込みを語っている。

 「CTCはクラウドには比較的早くから取り組んできており、AWSベースの「CUVIC on AWS」は2012年から業種/業界を問わず多くの企業に提供してきた。代表的な顧客企業は資生堂、コーセー、花王、中央魚類などで『技術者のレベルが高い』『案件を自分ごととしてとらえてくれる』などありがたい言葉をいただいている。今回、AWSプレミアパートナーに認定されたことは大変名誉なこと。今後はハイブリッドクラウドやデータベースおよびERPのマイグレーションなど、CTCの強みを生かし、AWSとともに顧客にクラウドの価値を届けていきたい」(CTC 藤岡氏)。

CTC 執行役員 クラウド・セキュリティサービス本部長 藤岡良樹氏

 「このままではパッケージソフトはなくなるかもしれない――、そう危機感を覚えて7年ほど前からSaaSビジネスに取り組んできた。パソコンやスマートフォンのデータをクラウド上に自動でフルバックアップする『AOSBOX』、機密性の高いバーチャルデータルーム『AOSデータルーム』など当社のクラウド製品はすべてAWS上で動いているが、その理由は現実的なコストでバックアップでき、そしてハイレベルなセキュリティ、信頼性、拡張性などがほかを圧倒しているから。加えて、ビジネスを加速するためのパートナープログラムが拡充している点も評価できる」(AOSテクノロジーズ 佐々木氏)。

AOSテクノロジーズ 代表取締役社長 佐々木隆仁氏

 2018年1月現在、国内のAPNパートナー数はコンサルティングパートナー(SIパートナー)が222社、テクノロジパートナー(ISVパートナー)が299社となっており、昨年比でプラス95社となっているが、前述した通り、AWSのパートナー審査基準は非常に厳しい。

 今野氏は「AWSとともに顧客に対してクラウドの価値を提供していく役割を負ってもらう以上、認定パートナーの審査基準を引き下げることは考えていない。AWSとしてはトレーニング開催や案件/事例化支援、ファンディングなどを通じて各パートナープログラムを強化していきたい」と、高いクオリティを維持したパートナーエコシステム拡大への方針をあらためて強調している。

 2018年、クラウドを本当の意味で“New Normal”として国内企業に位置づけるためにも、AWSパートナーの成長と拡大は重要なカギを握ることになる。