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AWS、リセラー経由の契約において準拠法を日本法、管轄裁判所を東京地裁に変更可能に
2017年4月7日 14:48
アマゾンウェブサービスジャパン株式会社(AWS Japan)は7日、Amazon Web Services(AWS)のパートナー戦略に関する説明会を開催した。説明会では、AWSのリセラーとの契約において、準拠法を日本法、管轄裁判所を東京地方裁判所への変更を可能としたことを明らかにした。これにより、AWSのリセラーと顧客の間の契約においても、同様の変更が可能になる。
現在、AWSの準拠法は米国法、管轄裁判所も米国の州裁判所または連邦裁判所となっているが、今後はリセラー側でこれらの変更が可能となる。この変更を行うかは各リセラーの判断となるが、エンタープライズ分野の顧客などからは要望も多かったとして、そうした顧客を多く持つリセラーなどで今後、発表があるだろうとした。
【6/2追記】
AWS広報によると、リセラー経由でなくとも日本準拠法を選択可能になっているとのことです。
AWS Japanパートナーアライアンス本部本部長の今野芳弘氏は、AWSは現在190カ国で数百万のアクティブな顧客を有し、日本でも数万の顧客に利用されていると説明。2016年度のビジネス規模は122億ドル規模、前年度比55%増加と現在も成長を続けており、2006年のビジネス開始からは計59回の値下げを実施、2016年には1017の新製品、新機能を発表するなど、変革を継続しているとした。
現在、AWSでは95以上のサービス群を提供している。今野氏は、「やはりクラウドというとサーバーが中心になるかと思うが、AWSはそれだけでなく多数のサービス群を提供しており、モバイル、IoT、人工知能系といった分野のサービスが非常に伸びている」と説明。こうしたサービスに対する顧客のニーズも高まっており、今後さらにパートナーとともに強化していくとした。
AWSのパートナープログラムであるAWSパートナーネットワーク(APN)については、日本国内ではコンサルティングパートナー(SIパートナー)が170社、テクノロジーパートナー(ISVパートナー)が236社となり、前年比で85社増加。コンサルティングパートナーの最上位となる「プレミア」には、2016年12月に日本電気株式会社(NEC)と株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)の2社を新たに認定したことを紹介した。
NEC SI・サービス市場開発本部エグゼクティブエキスパートの川井俊弥氏は、大量データのハンドリングや、迅速なリソース提供、グローバル展開といった領域において、顧客のスピードに対応するためにはAWSとの連携が重要だと説明。NEC自身もAWS上でサービスを開発しており、業界ごとのマイクロサービス群を近日発表予定だとした。
また、NECでもAWSのスピードに追随していくため、技術者の育成と体制強化に努めており、AWS関連事業の売上を今後2年間で累計120億円に拡大するとともに、これをファーストステップとしてさらに取り組みを拡大していきたいとした。
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタ&クラウドサービス事業部長の濱口雅史氏は、法人顧客にミッションクリティカルシステムをAWSを活用して提供しているが、最近になってさらにAWSの利用が加速していると説明。2年ほど前まではITコストの削減目的が多かったが、現在では新規案件やグローバル案件が増えているとした。
NTTデータでもソリューション基盤としてもAWSを活用しており、電力ビジネス向けの「ECONO-CREA」、オムニチャネルコマースの「BizXaaSオムニチャネル」といった新規事業でAWSの利用が増えていると説明。公共分野に対する取り組みとしては、3月には政府統一基準に準拠したAWSクラウド利用のセキュリティレファレンスを共同で提供しており、今後はさらに金融・公共分野のミッションクリティカルシステムへのクラウド提案を強化していくとした。
企業のデジタルトランスフォーメーションをパートナーとともに支援
今野氏は、最近の市場の動向としては、ITインフラをクラウドなどに移行する「ITトランスフォーメーション」と、最新のテクノロジーを活用して新しい製品やサービスなどを創出する「デジタルトランスフォーメーション」の2つのトランスフォーメーションが活性化していると説明。ITトランスフォーメーションについては、以前はコスト削減を目的としたクラウドへの移行が多かったが、グローバル展開やBCP(事業継続計画)の観点からのクラウド移行が多くなっており、最近ではセキュリティやシステム堅牢性の向上を目的としたクラウド移行も増えているとした。
また、デジタルトランスフォーメーションについては、IoTやモバイル、認知技術といった新たなテクノロジーを活用してビジネスを創出しようという動きが活発になっているとして、クラウドは単なるサーバーの置き換えではなく、ビジネスプラットフォームであるという認識をパートナーとともに広めていきたいと語った。
最近の事例としては、米国のFINRA(金融取引業規制機構)が、毎日300億ドルの金融市場イベントの分析をAWSで実施しているという案件を紹介。AWSはFINRAの非常に高いセキュリティ要件をクリアしており、日本においても大手銀行のAWS採用が発表されるなど、エンタープライズセグメントへのAWSの浸透が進んでいるとした。
2017年のパートナー戦略については、引き続きITトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーションの、2つのトランスフォーメーションを加速していくと説明。パートナービジョンはこれまでと同じだが、AWSでは会話型インターフェイスを構築するための「Amazon Lex」や、文章を音声に変換する「Amazon Polly」といった新しいサービスや技術を提供し続けており、こうした技術によりさらにトランスフォーメーションが加速すると考えているとした。
パートナープログラムについては、「プレミア」「アドバンスド」「スタンダード」「レジスタード」といった階層によるパートナーの認定制度に加え、専門技術分野や特定市場分野における実績のある企業を認定する「AWSコンピテンシー」、特定のAWSサービス・製品に実績のある企業を認定する「AWSサービスデリバリー」などを実施しており、こうした認定パートナーがより目立ち、選んでもらえるよう支援していくとした。