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マネーフォワード、金融機関向けにAWS上に構築された「Fintechプラットフォーム」を提供開始

第1弾として横浜銀行に導入

 株式会社マネーフォワードは22日、金融機関向けサービスとしてAmazon Web Service(AWS)上に構築された「マネーフォワードFintechプラットフォーム」の提供を開始することを発表。その第1弾として、横浜銀行は、同行の無料会員制ポータルサイト「〈はまぎん〉ビジネスコネクト」において、マネーフォワードFintechプラットフォームを2021年8月16日に導入することを明らかにした。

 マネーフォワードFintechプラットフォームは、個人/法人顧客向けのアプリやサービスおよび、Fintech企業をはじめとするパートナー企業が提供するサービスと連携可能な共通基盤だ。本プラットフォームはAWS上に構築されており、AWSが提供する分析サービスやストレージなどさまざまなサービスを活用することで、効率的なAPIの管理や運用ができるのはもちろん、パートナーサービスとのセキュアなデータ連携も可能にしている。

 マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードエックスカンパニー COO 神田潤一氏は、「現在の金融行政方針では、金融DXを取り入れた先進的でより良いサービスの開発・提供が求められている。こうした新たな金融サービスは利用者に大きな利便性をもたらすとともに、金融機関にとっても新たな収益機会が発生し、さらに利便性の高いサービスや収益機会が発生する好循環が生まれる。マネーフォワードFintechプラットフォームは、こうした金融行政の方針や金融機関のニーズに合致している」と述べた。

 さらに「マネーフォワードFintechプラットフォームは、『顧客向けWebサービス・アプリ』の提供から『データ収集』『データ分析』までをワンストップで導入できる」と述べた神田氏は、その具体的な価値として「UXの高いオンラインチャネルの顧客向けサービスの導入」、「アカウントアグリゲーション技術により、2600以上の金融関連サービスと連携して情報を収集」、「AIを活用したデータ分析で、顧客のライフイベントや企業の変化を検知」、「パートナーのサービスと組み合わせ、さまざまな用途で活用」などを挙げている。

マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードエックスカンパニー COO 神田潤一氏
【お詫びと訂正】
  • 初出時、「600以上の金融関連サービスと」と記載しておりましたが、正しくは「2600以上の金融関連サービスと」となります。お詫びして訂正いたします。

 マネーフォワードFintechプラットフォームは、2600以上の金融関連サービスと連携してデータ取得する「アカウントアグリゲーション基盤(X Business Aggregation)」と、取得したデータを蓄積する「データベース(X Cloud Storage)」、それらのデータをマーケティングオートメーションにより分析する「データ分析基盤(X Insight Marketing)」に加え、インターネットバンキングなどの金融機関IDだけで、すべてのサービスを提供できる(SSO対応)ID/認証基盤と連携パートナーサービスによって構成されている。

アカウントアグリゲーション基盤の「X Business Aggregation」、データを蓄積する「X Cloud Storage」、データ分析基盤「X Insight Marketing」
横浜銀行へのマネーフォワードFintechプラットフォーム導入イメージ

 アカウントアグリゲーションとは、複数の金融機関の口座情報を一つに集約、閲覧できる仕組みであり、これまでさまざまな金融関連サービスを多く手掛けてきたマネーフォワードにとって、X Business Aggregationは大きな強みでもある。

 現段階で連携パートナー企業として公表されているのは、AWSやNTTデータをはじめとする8社だが、今後は増える予定であるという。また、MoneyForword クラウドなどマネーフォワードグループが提供するサービスについても、マネーフォワードFintechプラットフォーム上で利用が可能となっている。

連携パートナー企業は現段階で8社

 AWSジャパン 執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏は、AWSが掲げる金融ビジネス戦略「Vision 2025」について、「金融機関には3つの変革ポイントが求められているとAWSでは考えている。1つ目はデータを活用して新しい価値を創造する『Business Model Reinvention』、2つ目はデジタルチャネルを補完的な位置づけではなくメインチャネルとする『Engagement in New Normal』、そして3つ目はセキュアな運用と柔軟なサイジングを可能にする『Resiliency for the Future』だ」と説明した。

AWSが掲げる金融ビジネス戦略「Vision 2025」

 横浜銀行によるマネーフォワードFintechプラットフォームの導入について鶴田氏は、「金融機関とパートナー企業が連携し、エンドユーザーに非対面/対面のチャネルで価値をお届けする良い事例であり、大変光栄に思っている。2011年に東京リージョンをリリースしたころは、Fintech企業を中心にノンコアな業務での利用が多かったが、2017年にMUFGがクラウドファースト宣言をして以降、金融・保険領域でのAWS活用が一気に増加した。そして、今後はAWSが金融ビジネスを変革するパートナーになる」と述べた。

金融機関とパートナー企業が連携し、エンドユーザーに価値を提供
2017年にMUFGがクラウドファースト宣言をして以降、金融・保険領域でのAWS活用が一気に増加

 メディアから今後のマネーフォワードとAWSの連携について質問された鶴田氏は、「今後の展開として、AWSとマネーフォワードが一緒になって、ほかの金融機関へのセールスやマーケティングを行うことも考えている。一緒にビジネスを創出していきたい」と回答。さらに神田氏も、「今後はデータアナリティクスや機械学習といった部分で、AWSのノウハウを活用することに期待している」と付け加えている。

AWSジャパン 執行役員 金融事業統括本部 統括本部長 鶴田規久氏

 横浜銀行は2021年1月、法人および個人事業主向けのポータルサイトとして、〈はまぎん〉ビジネスコネクトの提供を開始している。横浜銀行、NTTデータ、マネーフォワードの3社で共同開発されているサービスで、マネーフォワードの持つ金融機関との連携技術およびUI/UXデザイン力、NTTデータの認証機能や金融サービス開発のノウハウ・知見を掛け合わせて構築されている。なお、NTTデータは「BizSOL_Square」として同サービスをパッケージ化し、地方銀行を中心にサービスを展開している。

〈はまぎん〉ビジネスコネクト

 今回マネーフォワードFintechプラットフォームを導入し、〈はまぎん〉ビジネスコネクトと連携することで、マネーフォワードのアカウントアグリゲーション技術を活用し、他行の口座情報(利用者の同意にもとづいて取得)も含めた顧客の資金管理を一元化できるようになる。さらに、AWS上にデータを蓄積することで明細保有期間の長いデジタル通帳が実現するという。

マネーフォワードFintechプラットフォームを導入し、他行の口座情報も含めた資金管理を一元化
〈はまぎん〉ビジネスコネクトの画面イメージ

 横浜銀行 執行役員デジタル戦略部長 田坂勇介氏は今回のプラットフォーム選択について、「もともと〈はまぎん〉ビジネスコネクトを共同で開発していたことから、マネーフォワードFintechプラットフォームの導入に至った。また、以前から横浜銀行でもAWSを業務で利用していた実績、セキュアなデータ連携やデータの保管などの優位性などを総合的に加味して採用を決定した。データを安全に、容量を制限せず、安価に保存可能なオブジェクトストレージのS3を高く評価している。さらに、AWS GlueやAmazon AthenaなどAWSのサーバーレスアーキテクチャによるETL処理を活用できることや、セキュアに他行・他社のサービスと可能である点についても評価している」と説明。

プラットフォーム選定のポイント

 コロナ禍の影響などによって、金融機関でもクラウドシフトが加速している。しかし、なかなか基幹業務をクラウドにシフトしているという国内事例は少ない。田坂氏は「金融機関の基幹業務については、まだまだ事例も少ない。横浜銀行でも、一足飛びに基幹業務をクラウドシフトするというところには至っていない」と述べつつも、「セキュリティなど慎重に議論検討すべきことは多いが、今後も積極的にクラウドの技術を活用していきたいと考えている」と述べた。

横浜銀行 執行役員デジタル戦略部長 田坂勇介氏