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シスコ、中小企業向けブランド「Cisco Start」刷新 UCSサーバーのラック型モデルもラインアップ
2017年3月29日 12:41
シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は28日、中小企業向けソリューション「Cisco Start」のブランドを刷新した。同日プレス向けに開催された Cisco Startシリーズの中小企業向け戦略説明会において、新たに追加された製品ラインアップやファイナンシャルサービスが紹介された。
Cisco Startの売り上げは順調。昨年度の売り上げを半年で達成
発表会冒頭で、シスコ 専務執行役員 パートナー事業統括 高橋慎介氏は、「昨年9月に発表した新製品が順調な立ち上がりを見せ、半年で昨年度の売り上げを達成した」とCisco Startの売り上げが好調であることをアピールした。
順調な売り上げを牽引している大きな要因は、販売パートナーの存在といえる。2015年の開始当初、Cisco Startの製品を販売するパートナーは60社だったが、2017年3月には4100社へと大幅に拡大している。シスコでは販売パートナー向けにポータルサイトを開設し、販売促進資料やその他の資料、オンラインセミナー、トレーニング情報などを提供している。トレーニングセミナーで実施したアンケートによると、80%の販売パートナーがCisco Startを高く評価していると回答したという。
これほど急速に販売パートナーが増加したということは、Cisco Startが日本の中小企業向け市場にマッチしたソリューションだったという証明でもある。これまでシスコの製品は「品質は良いが高い」というイメージが強かったという。
しかし、高いコストパフォーマンスと、中小企業のニーズに合った製品バランスを追及したことで、中小企業だけではなく大手のブランチオフィスで導入するソリューションとして非常に魅力的な存在となっている。もちろん、シスコがこれまで築いてきたネットワークベンダーとしてのブランド力も、大きな要素であることは間違いない。
Cisco Startは日本国内の中小企業にフォーカスした日本発のブランドだが、最近では日本以外のアジア・パシフィック地域においても、Cisco Startの需要が拡大しているという。米国Cisco SystemsでもCisco Startのブランドが認められ、これまで日本独自で使用していたブランドロゴに代わる新しいブランドロゴが提供された。もちろん、これまで同様「simple」「smart」「secure」の要素は新ロゴにも採用されている。
製品ポートフォリオを拡充、UCSのラック型モデルも
新たにCisco Startの製品ポートフォリオに追加されたのは、ワイヤレスLANのアクセスポイント「Aironet 1815」シリーズ、データセンター仕様のサーバ「Cisco UCS C」シリーズ、クラウド型セキュリティサービスの Cisco Umbrella、コラボレーションソリューションのCisco Sparkなど。
Aironet 1815シリーズは、11ac wave2 対応でコントローラ機能も持ったハイパフォーマンスな無線LANのアクセスポイントだ。スタンダードモデルの「Aironet 1815i」、テレワーク向けモデルの「Aironet 1815t」、壁掛けモデルの「Aironet 1815w」、高出力モデルの「Aironet 1815m」の4モデル展開となっており、それぞれ日本語のセットアップウィザードが用意されている。
15cm四方で厚さ3cmの白い筐体から、高橋氏が「おでんのはんぺんのような形状のAP」と表現するほどコンパクトな設計となっているAironet 1815iは、保守費用を含まない市場想定価格は4万円台となっている。これまで「CiscoのAironetシリーズは高くて手が出ない」と思っていた企業でも、導入しやすい価格帯の製品となっている。
今回の発表の中で特に印象的なのは、Cisco Startシリーズにいよいよデータセンター仕様のラックサーバー「Cisco UCS(Unified Computing System) Cシリーズ」が投入されたことだろう。インテルのサーバー向けCPUであるXeon E5-2600 v4を搭載した高性能サーバーであり、Gigabit Ethernetポートを標準搭載するほか、40Gbps対応ネットワークアダプタも搭載できる。
25万円台というCisco UCS Cシリーズの市場想定価格について高橋氏は、「かなり無理をして値段を下げた」と苦笑しながらコメントした。
さらにクラウドサービスについても、新たに2つのサービスが追加されている。1つは企業向けにチャット、SNS、電子会議といったコラボレーション機能を提供する「Cisco Spark」で、ビデオ会議システム用の端末である「Cisco TelePresence」をバンドルし、「中小企業働き方改革パッケージ」として提供される。利用価格は、TelePresenceの端末利用料込みで月額1万800円だ。
そしてもう1つのサービスは、セキュアインターネットゲートウェイ(SIG:Secure Internet Gateway)の「Cisco Umbrella」。Umbrellaは、DNS(名前解決)の仕組みを利用したセキュリティサービスで、DNS時にドメイン/IPアドレスのレピュテーションを確認し、危険だと判断されたドメインやIPアドレスへのアクセスをブロックできる。Umbrellaの月額利用料は、契約ユーザー数によって多少の増減はあるものの、1ユーザーあたり350円程度であるという。
なおシスコでは、2016年9月に市場想定価格が4万円台程度となるスイッチ「Cisco Catalyst 2960Lシリーズ」に引き続き、今回発表された高性能アクセスポイントやデータセンター向けのサーバーなど、同社がこれまで販売してきた製品シリーズの低価格モデルを次々と市場に投入している。
高い性能とコストパフォーマンスに優れたCisco Startの製品によって、既存のCisco製品が売れなくなってしまう危惧はないのだろうか。高橋氏は「Cisco Startの製品では、いわゆるカニバリゼーション(自社商品の売り上げがそれと類似する自社の別の商品の売り上げを奪ってしまう共食い現象)は起きていない。日本市場においてシスコは昨年度も2けた成長している」と述べた。
中小企業が利用しやすいファイナンシャルサービス
中小企業において初期導入費用の捻出は大きな課題だ。いつかは利用したいと考えていても、初期投資が用意できずに断念してしまうケースは少なくない。そんな課題を解決するため、シスコではいくつかのファイナンシャルサービスを用意している。今回新たに追加さえた「Cisco Start easylease」もそんな施策のひとつだ。
Cisco Start easyleaseは、月額利用料金を支払うことで、スイッチ、ルータ、ワイヤレス、クラウドサービスなどが利用可能になる仕組みで、スイッチ1台の月額利用料金は400円からとなっている。25名規模のオフィスパッケージ(ルータ1台、スイッチ5台、ワイヤレスLANのアクセスポイント1台)であれば月額5千600円だ。さらに、働き方改革パッケージも併せて利用する場合には、月額1万6千400円となる。