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サイボウズ、海外向けkintoneの基盤に他社のIaaSを採用へ

国内向けのcybozu.comなど、“既存ビジネスは堅持”

 サイボウズ株式会社は15日、米国で展開している業務アプリクラウド「kintone.com」の運用基盤に、他社のIaaSを採用すると発表した。現在、複数のサービスを比較・検討している段階で、年内にも決定するという。

cybozu.comを基盤としたクラウドサービスは順調に成長している

 もともと、グループウェアを中心にオンプレミス向けのパッケージソフトウェアを開発・提供していたサイボウズでは、2011年から、独自のクラウド基盤「cybozu.com」上で展開するさまざまなクラウドサービス(SaaS)を提供開始している。

 青野社長は、自社データセンターに独自基盤を構築した理由について、「当時もAmazon Web Services(AWS)は存在していたが、まだサービス的には充実していなかったため、当社の基盤として利用するには作り込まないといけない部分が多く、また信頼性の面からも、自信を持ってお客さまに提供できるとはいえなかった」と振り返る。

 また、「もともとパッケージで提供している製品をクラウド化することになるので、無理やりIaaSで動かすのも効率が良くないという事情があった」という。

サイボウズの青野慶久社長

 そこでサイボウズは綿密な調査を行って、自社での開発・運用が可能と判断。独自のクラウド基盤であるcybozu.comを開発し、クラウド版グループウェア「サイボウズOffice on cybozu. com」「Garoon on cybozu.com」や、業務アプリクラウド「kintone」など、cybozu.comを基盤としてさまざまなクラウドサービスをラインアップして、今日に至っている。

 現在もこうしたクラウドビジネスは順調に拡大しているとのことで、青野社長は、「クラウドへ展開しようという意思決定をした2010年と比べると、2016年は売上がほぼ倍になった。半分がクラウドからの売上になっており、日本のソフトウェア企業としては、クラウドに転換できたまれな例ではないか」とアピールする。

日本でのクラウドサービス
自社データセンターでの運用を継続している

“グローバル展開をさらに加速するため”他社IaaS採用を決断

 日本でのビジネスはまだまだグループウェアが中心だが、海外では米国子会社がkintone Corporation、ブランドがkintone.comとなっており、kintoneを全面的に押し出して展開してきた。では今回、kintone.comの基盤として、なぜ他社のIaaSを採用することになったのだろうか。

 青野社長はこれについて、「グローバル展開をさらに加速するため」と説明する。システム部門でなくとも簡単に業務アプリを作れ、すぐに利用を開始できるkintoneは、米国などの海外でもその利便性が評価され、有料契約がすでに135社(2017年9月現在)まで増加している。そのうち日系企業は33社(同)にすぎないことから、「kintoneは海外でも選んでもらえる、という手応えを得ることができた」(青野社長)のだという。

 そして、本格的に利用する企業が増える中で、「現地のデータセンターやオペレーションを求める声が増えてきた」(青野社長)のも、当然の流れといえる。日本企業が海外のクラウドサービスを利用するようになると、日本のデータセンターからのサービス提供を求める声が強くなるが、今のサイボウズに起こっているのは、これとまったく同じことだ。

 そうした際に、現地のデータセンターにcybozu.comと同様の環境を構築し、独自にオペレーションをするという選択肢もあるが、サイボウズは、kintoneを中心に展開する場合、スピード感や運用の手間などの問題から、これは必ずしも得策ではないと判断。kintone.comを独立させることで、よりシンプルな構成により、開発・運用を行えるようにする。また、米国以外の国で本格展開を行う場合にも、グローバルで広く展開されている他社のIaaS基盤であれば、横展開がしやすいメリットもある。

 「日本からのリモート運用では難しいところもあり、現地にデータを置いて現地で運用するやり方を意識しておかないといけない。また共通基盤のcybozu.comでは、現地のビジネスをスピードアップさせようという際には制約になるが、IaaSを使えればシンプルにできる。他方、以前に検討した際と比べて、現在のIaaSはだいぶ安定しているし、エコシステムが広がってきている点も大きい」(青野社長)。

海外でのサービス展開が本格化するにつれ、問題が顕在化してきたという
日本の基盤と切り離すことにより、さまざまなメリットが生まれるとした

 移行のスケジュールはまだ決まっていないが、IaaS選定は年内を1つのメドとしているとのこと。その後、2018年初頭から開発を始め、1~2年後にサービスインといった、長期間での計画となっており、IaaSに強い技術者の採用なども順次進めるとしている。

 なお、本件を発表するにあたり青野社長が強調していたのは、国内の既存ビジネスは好調であり、その路線にはまったく変更がないという点だ。国内事業は、これまで通り自社基盤のcybozu.comで運用を継続する。

 「サイボウズ Officeは毎月300社程度が増えており、2ケタ成長を継続している。パッケージも継続して売れているので、クラウドになったことで、申し込めばすぐに使えるし、ユーザー数の変更も容易といった利点が評価され、ライトな層を取り込めるようになったということだろう。今回はあくまでも米国でのお話なので、そこはしっかりと伝えていきたい」(青野社長)。

青野社長は、国内向けのcybozu.comやパッケージ提供など、現在の事業は継続することを何度もアピールしていた