サイボウズ「Kintone」始動、独自のクラウド基盤「cybozu.com」上から提供開始
サイボウズ株式会社は7日、業務用Webアプリを手軽に開発できるPaaS「Kintone」の提供を開始した。サイボウズ独自開発の新クラウド基盤「cybozu.com」上から、月額880円(税別)/ユーザーで提供する。
■Webアプリを手軽に作れる「Kintone」
代表取締役社長の青野慶久氏 |
Kintoneは、変化の早いビジネス環境に即座に適応するため、ファストフードやファストファッションのように気軽に使える「ファストシステム」をコンセプトとしたPaaS。アンケート、売上集計、問い合わせ管理、日報、タスク管理など日々の業務を効率化するWebアプリを専門家の手を借りることなく数分ほどで構築できるという。
目指したのは「ファストシステム」 | 従来の開発工程を大幅に短縮し、開発→利用開始の手軽さを実現する |
主な機能は、「データベース」「プロセス管理」「コミュニケーション」の3種類。
Kintone上の作業領域に用意されたフォームパーツなどをドラッグ&ドロップして手軽にデータベース化し、作成したWebアプリをPCやモバイル端末から利用できる。全文検索やグラフレポート機能なども備える。
また、登録された情報を基にチームで業務を進めていくためのワークフロー機能を備え、処理状況の確認やアクションを設定可能。すべてのレコードについて変更履歴が記録され、変更前への復元も可能だ。コミュニケーションには、コメント欄を使う。登録された情報について確認・議論が行える。
この3機能を合わせてKintoneとなる。代表取締役社長の青野慶久氏は「データベースに入力されたコンテンツが、プロセス管理によってチームの“仕事”になり、コミュニケーションによって円滑に進められる」とし、組織で仕事をするために必要十分な機能を備えるとアピールする。
Kintoneトップ画面 | ドラッグ&ドロップで手軽に開発 |
プロセス管理の設定画面 | レコード詳細画面 |
レポート画面(円グラフ) | レポート画面(横棒グラフ) |
Kintone機能一覧 | 利用例 |
■新クラウド基盤「cybozu.com」
Kintoneは、独自開発の新クラウド基盤「cybozu.com」上で提供される。この「cybozu.com」というブランドも今回明らかにされた新ブランドとなる。cybozu.com上では、Kintoneのほか、「サイボウズ Office」「サイボウズ ガルーン」「リモートサービス」といった各製品がSaaSとして利用できる。順次、メールサーバー、Web会議などもラインアップとして拡充する考え。
青野氏によれば「cybozu.comは一番大切なドメイン。これを使ってクラウドを開始する。サイボウズはクラウド企業に生まれ変わるという熱意の表れ」とのことだ。
また、cybozu.comのユーザーには「サブドメイン.cybozu.com」が開放される。ユーザーごとにドメインを分離して、ユーザー専用のシステム環境を用意する。
青野氏は「例えば、Salesforce.comはログイン画面のURLがすべて共通。全世界のユーザーが単一の入り口を入ってくる。しかも、IDは多くの人に知れ渡るメールアドレスを活用するため、あとはパスワードさえ分かってしまえば簡単に不正アクセスできてしまう。フィッシング用の偽画面を作成することも容易で、決してセキュリティに優れているとはいえない」と指摘。海外発のクラウドサービスが市場を席巻しているが、GoogleやAmazon、Microsoftのクラウドで障害が発生したケースと併せて、「(海外のクラウドは)必ずしも品質に優れたものとは言えない」とする。
これに対してcybozu.comでは、サブドメインごとに区切られたシステム環境を提供。この環境内でユーザー・組織・認証管理が行えるほか、ログイン画面もそれぞれ異なるURLとなるため、不正がしにくい。また、サブドメインごとにIPフィルタリングを設定でき、オプションの「セキュアアクセス」を利用してユーザーごとにクライアント証明書を発行できるため、高いセキュリティを実現できるとしている。
salesforce.comについて、ログイン画面の脆弱性を語る青野氏 | cybozu.comではサブドメインごとに異なる入口が用意される |
セキュアアクセスの画面例 |
こうした背景には「もっと高品質なクラウドを日本から生み出したい」という青野氏の思いがある。だからこそ「クラウド基盤から自分たちで開発し、新たなブランドを立ち上げた」という。データセンター・ラックこそ事業者から借りたものだが、従来のようにパッケージを提供するビジネスモデルよりも、ソースコードの模倣がされにくい。実際、過去にサイボウズはグループウェアの模倣などで痛い目を見ているらしく、「クラウドは自分たちのIPを保護するためにも機能する」という。
さらに信頼されるクラウドとするため、現在、ISMSの取得も目指している。加えてデータセンターは国内、24時間365日の有人監視とし、ネットワークからデータまで多重化を行い、SLO(Service Level Objective)99.9%を目指すという。
利用に際して、初期費用は一切かからない。ユーザー数に応じた課金のみで、サイボウズ Officeは500円/ユーザー、Kintoneは880円/ユーザー。オプション費用は、セキュアアクセスが250円/ユーザー、ディスク増設は100GBで1万円。「ネオジャパンのdesknet'sと比べても価格優位性がある」(青野氏)とアピールした。
今後の戦略としては、2012年中にcybozu.comの海外展開を図る。当面はサイボウズ上海がすでに存在する中国市場からはじめ、北米市場などにも拡大する予定だ。また、マルチデバイス対応やAPIによる機能拡張などを進めていく方針。
なお、サイボウズ ガルーンについては、サイボウズ総研が「ガルーンSaaS」を提供している。「当面は両者とも並行して提供していく。より手軽に利用したいユーザーにはcybozu.comを、カスタマイズして独自の基盤で利用したいユーザーにはガルーンSaaSといったすみ分けにしたい」という。また、サイボウズが従来より提供してきた「かんたんSaaS」はKintoneに融合させていく方針だ。