インタビュー

IBMのx86サーバー事業がレノボになって変わること、変わらないこと

 レノボによるIBMのx86サーバー事業の買収に伴い、日本での事業活動を行うレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、LES)が、10月1日に設立してから約1カ月半を経過した。

 LESは、旧IBMのx86サーバー事業を継承するとともに、レノボ・ジャパンが展開していたThink Serverなどのサーバー事業を統合。日本のユーザーやパートナーとのリレーションシップの維持と、検証センターをはじめとする顧客サービスを展開することになる。

 一方で、日本IBMから継承したx86サーバー製品の保守およびメンテナンスは、従来通り日本IBMが担当する。LESによって、日本におけるレノボのサーバー事業はどうなるのか。LES エンタープライズソリューション事業本部長の小林泰子取締役執行役員、レノボ・ジャパン 法人事業本部担当の瀧口昭彦執行役員専務に話を聞いた。

【お詫びと訂正】

  • 初出時、サーバー事業をThink Centreとしておりましたが、Think Serverの誤りです。お詫びして訂正いたします。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの新役員。(左から)取締役執行役員の小林泰子氏、代表取締役社長のロードリック・ラピン氏、取締役執行役員の瀧口昭彦氏(10月の記者会見より)

x86サーバー事業のウエートは極めて大きくなる

――小林泰子取締役執行役員は、9月30日まで日本IBMでx86サーバー事業を担当していたわけですが、10月1日のLES設立の日を、どんな気持ちで迎えましたか。

LES エンタープライズソリューション事業本部長の小林泰子取締役執行役員

小林氏
 ひとことでいえば、さわやかな気持ちでしたよ(笑)。ワクワク感もあった。これまで20年以上、日本IBM一筋で勤務してきたわけですが、あまり感傷的な気持ちというのもなかったですね。ただ、前日に日本IBMのなかで、お疲れさま会が行われ、いろんな方からメッセージをいただき、ちょっとググっときちゃいましたね。でも、翌日にはきれいさっぱり(笑)。新たな会社に対する期待感はすごく大きいんです。

 レノボへの事業売却が発表されて以降、レノボの経営トップとは、密にコミュニケーションを取ってきました。ロッドさん(=ロードリック・ラピン社長)の人柄が強く反映された会社ですし、意思決定のスピード感もある。これがワクワク感につながっています。

 また、日本IBMのなかでは、ハードウェア事業はあくまでもひとつの事業であり、そのなかにx86サーバー事業があるという構図です。しかし、レノボはハードウェア中心の会社ですから、x86サーバー事業のウエートは極めて大きくなり、貢献度も高くなる。日本IBM時代とは違った形で、気が引き締まる思いがあります。

――2014年1月にレノボによる買収が発表されて以降、LES設立までの期間はどんなことに力を注いできましたか。

小林氏
 この間、最も気をつけていたのは、お客さまやパートナーが持つ不安を一掃するということです。どうしても悪い憶測が先行する傾向にありますから、私自らが、お客さまやパートナーを訪問して、正しい情報を伝えることに多くの時間を割きました。5月ぐらいまでの間に、1日4、5件のお客さまを訪問しましたから、歩数計の数値も一気に増えましたよ(笑)。

 お話をすると、もうサーバー事業を止めてしまうのだから、継続的に使っていては駄目だ、というように誤解しているお客さまが意外に多かったですね。また、私がレノボに行って事業を継続的に担当することを知らない人も多かった。また文面でそれを伝えようとしても、なかなか正確には伝わらない。地方都市に行けば行くほど、誤解されているケースが多かったですね。x86サーバーはパートナーにとっても事業機会が多い商材ですし、それが日本IBMからなくなることに対する不安は、想像以上に大きかったといえます。

 また、これまで販売した製品に対するサポートはどうなるのかということに対する不安も大きかった。自信を持ってお客さまに導入したサーバーを、これからは一体どうすればいいのかといった声もいただきました。

 しかし、こうした不安についても契約窓口がレノボに変わるだけで、サポートは日本IBMが継続するということをご説明すると安心していただけるわけです。開発も、営業も、サポートもまったく変わりません。とにかく多くの人に会って、事業を継続すること、レノボに事業移管しても安心してご利用いただけることを説明しました。

 一方で、社内に対しては、レノボグループのなかでどういう役割を果たすのか、どう変わっていかなくてはならないか、ということを議論しました。そのなかで、4月と7月にそれぞれ組織を変えて、日本IBMの営業組織に準じた体制から、日本IBMから独立した後に動きやすい方向に向けて、準備を進めてきたわけです。

 新たな体制での大きな違いは、これまで以上に幅広いソリューションで売っていくことができるということです。x86サーバーですから、さまざまなアプリケーションが用意されているのですが、日本IBMの自社製品のなかに他社と競合するアプリケーションが存在するため、どうしてもそれに気を使わなくてはならない部分がありました。しかし、新たな体制では、自由にできる部分が広がるわけです。事前の組織変更においても、さまざまなISVやパートナーとの連携を広げるための体制へと変更をしてきました。

正しい情報の提供に注力してきた

――レノボ・ジャパンとしては、10月までの間にどんな点を考慮してきましたか。

レノボ・ジャパン 法人事業本部担当の瀧口昭彦執行役員専務

瀧口氏
 買収発表直後は、Windows XPのサポート終了まであと3カ月を切っていましたから、法人営業としてはそちらの方を優先してきました。そうしたなかで、x86サーバー事業に関して、私たちの方からも正しい情報を提供するということに力を注いできました。

 これまでにも、買収があるたびにさまざまな憶測が飛び交い、ビジネスに悪い影響を及ぼすということが繰り返されてきました。レノボの社員はこうしたことには慣れていますから(笑)、正しい情報を提供するという点では一定の成果があったと思っています。

 ただ、規制当局との関係上、いつから新たな体制がスタートするのかといったことを明確に打ち出すことができませんでしたし、日本IBMのお客さまのもとにレノボとして直接出向くということはできませんでしたから、その点においてはお客さまもストレスを感じていたかもしれません。

――とはいえ、この間、日本IBMのサーバーのシェアは減少しましたね。これは想定の範囲内のものですか。

小林氏
 シェアが落ちるというのは想定したくない事柄ですから、具体的にどれぐらい落ちそうだ、という数値はなかったのですが、それでもこれぐらいの範囲だろう、という水準には落ち着いています。自らリーチしているお客さまについては、継続的に安心して導入をしていただくといったことが続いていました。しかし、どのメーカーのサーバーを導入しようかと検討しているお客さまについては、いまの時期にはちょっと検討対象からは外しておこうという動きがあったといえます。そうしたお客さまに関しては、こちら側に話がこないといったことはあったと思います。

瀧口氏
 PCにしても、サーバーにしても、10~15%のお客さまは常に変わっていきます。こうした新規のお客さまが、IBMのサーバー導入の検討には「待った」をかけていたといえます。その影響分がシェア減少につながっているのではないでしょうか。これはある程度仕方がない範囲であったともいえます。

製品開発、製造、供給体制は何も変わらない

――レノボになっても変わらないこととはなんでしょうか。また、変わることとはなんでしょうか。

小林氏
 変わらないことは、System xにかかわる組織は、米本社を含めてすべてレノボに移行していますので、製品開発、製造、供給体制はなにも変わりません。われわれは、他社に比べてアドバンテージを持った製品が持っていますので、これは今後も継続的に提供していきます。またサポートについても、日本IBMが継続的に行いますし、われわれが社内に持つサポート体制にも評価をいただいています。これも変わりません。

 一方で、変わることは、われわれの立場からすれば、インテルワールドでのスケールメリットを発揮できること、そしてサプライチェーンの効率化によって、製品力を高めていけるということです。さらに、これまではサーバー製品しか持っていなかったのに対して、クライアントやモバイルデバイスが加わることになります。

 細かい話をすれば、私は日本IBM時代にはサーバーとネットワークは担当していましたが、ストレージやサポートは担当外でした。しかし、実際の商談ではサーバー、ストレージ、ネットワークを一緒に提案することになる。新たな体制では、これらをすべて私のチームで担当することになります。エンド・トゥ・エンドで提案できるというわけです。

 また、レノボグループとしての強みも発揮できるようになると期待しています。レノボ・ジャパンとの連携、さらにはNECパーソナルコンピュータとも、米沢事業場での生産を検討するといったことで、グループ力を生かせると考えています。

 さらに、IBMの場合は、グローバルでのシングルオペレーションが基本でしたから、日本だけが例外というのは認められませんでしたが、レノボでは意思決定の自由度がかなり高まりますから、日本のお客さまにあった提案がやりやすくなる点も大きな変化のひとつです。

――変わらない点のひとつとしてあげたサポートですが、日本IBMとの5年という時限が設定されています。なぜ5年なのでしょうか。また5年を経過した段階ではサポート契約は終了することが前提なのでしょうか。

小林氏
 今年1月の発表時点では、「ある一定期間」という表現でした。他国ではその表現に対してはあまり反応がなかったのですが、日本のお客さまからは、「一定期間」ということに対して、もう少し明確にしてほしいという声が多くあがりました。

 そこで、日本市場に向けて明確なメッセージを出してもらうために、レノボとIBMに協議をしてもらった結果、「いまの時代に10年という期間は長すぎる、では、ひとまず5年という期間に設定しましょう」ということで設定された期間なのです。つまり、5年という期間には深い意味があるわけではなく、区切りとして設定されたという理解をしていただければと思います。

 レノボは、かつてIBMからPC事業を買収した際にも、保守はIBMが行うという体制を取りました。日本では、NECパーソナルコンピュータに保守が移管されましたが、グローバルではいまだにIBMがサポートを続けています。それも当初は5年といっていたものが、すでに9年に伸びている。この例からもわかるように、今回も5年で終わりということを示したものではないのです。

 また、LESではIBMから調達したストレージを販売していくことになりますが、これに関してもIBMがサポートします。サーバーとストレージをトータルで保守するというのは当たり前のことであり、この点も今回の保守契約のなかに含まれています。

保守サービスはIBMが引き続き提供するという

自らソリューションを持たないことはマイナスか?

――日本IBMはミドルウェアやアプリケーションを自社ブランドで持ち、クラウドサービスも提供しています。それに対して、LESでは自らソリューションを持ちません。これはマイナスになりませんか。

小林氏
 言い方を変えれば、いま「イケている」ソリューションを、「イケている」パートナーといち早く市場に提供できる体制が整ったといえます。単にハードウェアの性能がいい、価格が安いということだけを訴求するだけではいけません。

 われわれの強みは製品力であり、このソリューションには、こうした理由があるから、レノボのSystem Xが適しているということを明確にしていかないと導入していただけない。LESには、さまざまなソリューションのスキルを持ったSEがいますから、さまざまなパートナーのソフトウェアと製品を組み合わせて、ソリューションフォーカスでパートナーと一緒になって提案していくモデルを作り上げたることができる。多くのパートナーからは、以前に比べて、垣根が低くなり、組みやすくなったという声をいただいています。

 先日もVMwareとの協業を発表し、これからは同社のSDNソリューションである「VMware NSX」を取り扱っていくことになります。もともとIBM時代には、IBMのSDN for VEという製品があり、NSXを本気になって担ぐわけにはいかない状況でした。

 新たな組織では、それが解消できる。製品の強み、弱みを理解しながら、遠慮をしないでお客さまに最適なものを提案することができるのです。また、システム管理の「System Director」や、「FlexSystem Manager」といったように、ISVがやっていないところに関しては、開発部門ごと持ってきましたので、その点でも不利にはなりません。そうした点からも、決してマイナスにはならないと考えています。

――多くのISVと組むことでユーザーの選択肢は増えますが、HP、デル、そしてIBMといった企業は、ハードウェアでの収益確保よりも、自社ソリューションで収益を確保する姿勢を見せています。ハードウェア事業だけでは収益性は低くなりませんか。

小林氏
 x86サーバーは、日本IBM時代から収益をあげている事業です。これに加えて、ストレージやサービスも販売するわけですから、収益構造としては問題がないと考えています。クライアントと一緒に提案できる強みもあります。提案の幅が広がり、リーチできる顧客が広がることにもなります。

 かつて、IBMがPC事業を売却した際に、一部のユーザーからは、IBMに声がかからなくなったということがありました。例えば、大学の教室向け商談では、IBMが自らクライアントを持たないため、声をかけにくいということが起きていたからです。しかし、サーバーとクライアントの両方を持つことで、自然のターゲットの範囲が広がるということが起きているのです。

ポートフォリオが圧倒的に増加するメリット

――サーバーとクライアントの組み合わせ提案は、レノボ・ジャパンの法人事業においても追い風になりますか。

瀧口氏
 レノボ・ジャパンの立場から見ても、ポートフォリオが圧倒的に増加するという点は大きなメリットです。確かに、サーバーやストレージがないからPCを購入できないという例もありました。ひとつの窓口で対応してもらわないと、導入や運用の効率が落ちることを懸念しているお客さまは確実に存在しますし、そうしたお客さまに対しても、ポートフォリオの拡大によって、これまでできなかった提案が可能になります。

 レノボのポートフォリオは、PCからタブレット、そしてサーバーへと広がりました。製品を使って、生産性向上、ワークスタイルの変革の提案することができる。VDIなども大規模なシステム提案まで可能になりますし、さまざまなアプリケーション、クラウドプロバイダー間の連携提案などもできます。相乗効果は非常に高いと認識していますし、安心感も持ってもらえる。これは大きなメリットです。

 11月17日からは、新たに検証センターを秋葉原のUDXで本格稼働させますので、これもお客さまの目の前で、実際に使っていただきながら検証することができます。

 一方で、いままでメインとして扱っていたIBMのミドルウェア製品も、既存のお客さまのなかにはこれがベストだというケースも多いですから継続的に提供しています。それに加えて、ISVのミドルウェア、アプリケーションを検証した形で提供することで、より早く、ベストプラクティスのソリューションを提案できる。スピードが格段にあがり、最適なソリューションを最適なタイミングで提案できる。ここが変わっていくところだといえます。

――日本IBM時代にも検証センターは持っていましたね。それとは仕組みが異なるのですか。

小林氏
 一番の違いは、やりたいことができる施設であるという点です。これまでは外部と接続するにもさまざまな制限がありましたし、製品の優先度という点での影響もありました。今回は、エンジニアチームとビジネス開発チームが、やりたいことを柔軟にできるようにネットワークの設計を行っています。

 また、クラウドショーケースという提案も可能にしています。ここでは、クラウドプロバイダーとも連携して、オンプレミスとクラウドを接続したハイブリッドクラウドの検証が可能になります。導入されている製品だけを見ると施設の内容は同じように見ますが、環境は大きく変化しているといえます。モバイルからクライアント、クラウドまでを含めたエンド・トゥ・エンドのソリューションをお見せできる場になります。

瀧口氏
 サーバーだけの提案にとどまらず、サーバー、ストレージとクライアント、ネットワークを含めた検証と提案が可能になるといえます。レノボ・ジャパンとLESが連携した形で利用する場になります。

――競合ベンダーから見ると、いまはチャンスだといいますが、長期的にはレノボの価格戦略には注意しなくてはいけないとの見方が出ています。

小林氏
 サプライチェーンのスケールメリットは確かにあるでしょう。ただ、このメリットをすべて製品価格に転嫁するという考えはありません。例えば、他社にはできない投資に振り向けるということもできます。検証センターはそのひとつともいえるでしょう。確実なのは、製品力がこれまで以上にあがっていくということです。これは販売パートナーにとっても、ISVにとっても魅力に感じてもらえる部分だと考えています。

瀧口氏
 スケールメリットやコンポーネントの調達手法といったバックエンドの仕組みについては、レノボの特徴を発揮できる部分ですから、その結果、価格という観点から魅力を提案できるかもしれません。ただ、レノボの魅力は、価格がすべてだというのは極端な見方です。最大のポイントはスピードがあがるということではないでしょうか。一番いいものを、より早く提供できるようになるというのが、レノボの魅力だといえます。

小林氏
 IBMも決してスピードが遅いわけではないのですが、グローバルレベルで意思決定をする仕組みとなっていることや、さまざまなストラテジーのなかでx86サーバー事業の意思決定を行っていくわけですから、一事業部門の立場から見るとスピードが遅く感じる部分もありました。レノボは、ディシジョンが速く、日本で意思決定をできる範囲が広い。ハードウェアの会社のなかに入り、われわれの事業が、中心的事業のひとつとして意思決定できるようになった、というポジションの変化は大きいですね。

瀧口氏
 検証センターの活動においても、われわれが中心となってやっていくことができますから、そのスピード感はまったく違うのではないでしょうか。

小林氏
 レノボには、異なる文化を経験した人同士が勤務しており、ひとつの文化に流されない。そのせいか、判断やアクションが速い。私自身、気持ちよく、いろんな物事が進むのではないか期待しています。

パートナープログラムはIBMから継承も、早期にレノボと1つへ統合したい

――LESにサーバー事業が移管したことで、パートナー向け施策には変化がありますか。

小林氏
 現時点では、日本IBM時代からの仕組みをそのまま継承しています。ただ、パートナーから見た場合には、レノボのパートナープログラムと、日本IBMから継承したパートナープログラムの2つが存在することになりますから、その点では早いうちにひとつのパートナープログラムに統合していく必要があると考えています。

瀧口氏
 法人事業におけるパートナー向け組織については、すでに統合する動きを開始しました。パートナープログラムは、非常に重要な部分であり、できる限り早く新たなものに作り替えていきたいですね。年度内がひとつの目標時期。そこに向けてがんばりたいと考えています。

小林氏
 ただ、パートナー向けのITシステムの統合までを含めると、さらに時間がかかることになると思います。一緒になったことで、パートナーがメリットを感じてもらえるようなものにしたいというのが基本的な考え方です。そのあたりはパートナー各社とも相談しながらやっていきたいと思います。

――具体的にはどんなパートナーブログラムを計画していますか。

小林氏
 サーバーに関する高いスキルを持ったパートナーを対象に認定しているSystem xスペシャリティ認定制度と、PureSystem認定制度は一本化していきます。一方で、新たなパートナーが参加しやすいような仕組みを構築していきたいと考えています。基本的には、これまでSystem xを扱っていただいている約1000社のパートナーには継続的に扱っていただきたいと思っています。

 日本IBMは昨年、指定ディストリビュータ制度を導入しましたが、System Xはその対象外でした。しかし、ディストリビュータを通じた販売という仕組みを導入しています。現在、すべての販売パートナーが、イグアス、エヌアイシー・パートナーズ、グロスディー、ネットワールドの4社のVAD(Value Added Distributor)と、ソフトバンクコマース&サービス、大塚商会、ダイワボウ情報システムの3社のVOD(Volume Distributor)のどのディストリビュータからも製品供給を受けてもいいということになっています。LESでもこの仕組みは踏襲していくことになります。

瀧口氏
 ただ、なにかあれば改善をしていくという柔軟性は持つつもりです。

米沢生産で何が変わるか?

――NECパーソナルコンピュータの米沢事業場において、x86サーバーの生産に向けた検討プロジェクトを開始しました。米沢生産のメリットはどこにあると考えていますか。

小林氏
 最大のメリットは納期だと考えています。われわれのサーバー生産は、海外3工場で行っており、主力工場は中国・深せんにあります。ただ、通関などを踏まえると工場を出荷してから日本に到着するのに1週間かかる。受注段階から逆算すると3週間かかる場合もある。

 もちろん、ディストリビュータに在庫してもらっているものを活用すれば納期は短縮できるが、そうでない場合にはどうしても時間がかかっていましたし、ディストリビュータにとっても納期が長いという不満がありました。これは随分怒られていたことでもありました。そして、納期が長いことで機会損失につながっていたということもあったでしょう。

 それを米沢生産にすることでギュッと短縮できる。受注から納品まで1週間という水準にできるのではないかと個人的には期待しています。もうひとつは国産ということでの日本人の期待値にあった品質を実現できる点も大きな期待です。さらにカスタマイズに対する柔軟性も出てくるでしょう。

x86サーバーの国内製造について検証を開始している

――米沢生産に向けた検討課題とはなんでしょうか。

小林氏
 米沢生産を開始する上では、ITシステム連動の部分をどうするかという課題はあります。ただ、IBMのITシステムからの移行するタイミングを待っていると時間がかかってしまいますから、それを待たずにスタートするためにはどうするかということも検討していきます。全量を米沢で生産するというのが理想ではありますが、いつまでになにをやるのか、どこまでやるのかといったことを踏まえて検討をしていくことになります。

瀧口氏
 全量生産に向けては、ステップ・バイ・ステップで検討していくことになるでしょうね。

小林氏
 ただ、ここでも日本が中心になって検討を進めることができるという、レノボだからこそのスピード感、判断力が発揮できると思います。

瀧口氏
 もうひとつ付け加えたいのは、NECパーソナルコンピュータ米沢事業場との連動だけでなく、レノボの大和研究所との連携というのもこれからのテーマになってくると思います。大和研究所は、日本人が製品を設計おわび開発している拠点であり、日本の市場にフォーカスする上では重要拠点となります。よりダイナミックな形で成果を出していきたいですね。

――今後1年後には、LESのx86サーバー事業はどうなっているでしょうか。

小林氏
 x86サーバー事業においては、ソリューションにフォーカスする姿勢を強めます、その上で、ISVやパートナーが、一番お客さまに勧めたいサーバーがSystem Xであるというような評価を、ぜひいただけるようになりたいですね。そうなれば、数字がついてきますし、シェアも広がるでしょう。製品もよくて、品質もよく、サービスもよくて、さまざまなソリューションにいち早く対応できるのがレノボのx86サーバー。だからこそ、一緒にビジネスができるというパートナーとの強い信頼関係が作りたいですね。
瀧口氏
 PC、サーバー、そしてクラウドへのサポートを含めて、レノボからワンストップで、お客さまに最適なものを提供できる体制が整うといえます。そのなかで、パートナーから見て一緒にビジネスがやりやすくなったと感じていただくことができ、お客さまからは、より良い製品が提供され、幅広いラインアップによって対応でき、ソリューションを短期間で届けられるという評価をもらえるようになりたいですね。

――国内トップシェアはいつごろに?(笑)

小林氏
 それは、なるべく早く達成したいですね(笑)

大河原 克行