インタビュー

日本HP ジム・メリット社長が語る、IBMやDellに負けない強みとは?

 Hewlett-Packard(HP) アジアパシフィック&ジャパン エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャで、日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)の社長執行役員でもあるJim Merritt(ジム・メリット)氏にとって、「日本は特別な場所」だという。

 市場が大きいだけでなく、HPが提供する多くの技術において日本がアーリーアダプターであることがその理由だというが、過去にデル日本法人にて長年社長を務め、現在は日本HPでも社長職に就いている同氏が、日本を特別な場所としてとらえるのも不思議ではない。

 インド・ムンバイにて開催されたアジアパシフィック地域のメディア向けイベント「HP APJ Media Summit 2014」では、基調講演のトップに立つなど存在感を示したMerritt氏。そのMerritt氏が日本からのメディアのインタビューに応じ、今回のイベントで強調した「New Style of IT」について、そしてHPの強みについて語った。

誰もがNew Style of ITを取り入れるべき

――HPは、ITのトレンドを活用して変革するというNew Style of ITを推進していますが、どういった企業がNew Style of ITを取り入れるべきなのでしょうか。

インタビューに応じる日本HP 社長執行役員のJim Merritt氏

 New Style of ITは、どの企業でも取り入れるべきです。数年前までITは、誰もよくわからない機能ばかりでした。それが今では、皆がクラウド、モバイル、ビックデータ、ソーシャルのトレンドを理解し、ITの力を実感しています。こうした理解が進むことで、企業の上層部や市場からの要求が高くなり、プレッシャーにさらされるのです。

 また、IT企業に対するプレッシャーも高くなっています。結果を出すまでの時間を短縮することが求められるからです。つまり、ユーザー側がNew Style of ITを取り入れる必要があるのはもちろん、IT企業もさまざまな企業を変革させることで自ら成功していかなくてはなりません。このように、New Style of ITはすべての企業に影響することなのです。

――今回発表した「The Machine」とは、一体どのようなものなのでしょう?

 これは今後のコンピュータのあり方についてのコンセプトであり、そのコンセプトを元にして誕生する製品でもあります。HPでは今、コンピュータアーキテクチャの構成要素を変えようとしています。汎用プロセッサではなく特定の用途に合わせたプロセッサを採用したり、光を使ってデータを転送しようとしたり、層になっているメモリの仕組みも変えようとしています。

 特定のプロセッサを採用するという点では、高密度サーバー「HP Moonshot」ですでに実現しています。このように、コンピュータの仕組みを変えていくコンセプト、そしてその製品がThe Machineです。

HPの強みは「イノベーション」

――IBMやDellなどの競合をどう見ていますか。HPの強みはどこにあるのでしょう。

基調講演でのMerritt氏

 IBMは、ハードウェアがコモディティ化してしまったと判断し、ハードウェア部門をLenovoに売却してしまいましたが、HPにとってハードウェアは成長分野で、最も利益の多い分野でもあります。それは、われわれがイノベーションとインフラにフォーカスしているためです。一方IBMは、サービスとソフトウェアにフォーカスしています。つまりIBMとHPでは、顧客に対するアプローチや市場にもたらすイノベーションが全く異なるのです。

 Dellに対してコメントすることは難しいですね(苦笑)。しかし、DellとHPにも大きな違いが2つあります。そのひとつは、HPはイノベーションを続けている一方、Dellは後発企業である点です。

 HPはイノベーションのリーダーで、Moonshotや今回発表した「3PAR」ブランドのストレージ製品、クラウドポートフォリオの「HP Helion」など、さまざまなイノベーションを展開しています。もうひとつは、サービスの幅が広くて深いという点です。もちろんDellもすばらしい企業で手ごわい競合ですが、イノベーションとサービスの幅広さではHPが勝っているといえるでしょう。

――IaaS(Infrastructure as a Service)市場についてはどう考えていますか。この市場ではAmazon Web Services(AWS)のプレゼンスが高いようです。

 AWSは確かに手ごわい相手なのでHPとしても注目していますが、日本では特にAWSへの注目度が高くて驚いています。われわれの日本の顧客で、グローバルアカウントを持っている顧客の多くは、プライベートクラウドを導入するケースが多いですね。

 一方AWSは、中堅中小企業向け市場での導入が進んでいるようです。この市場は急成長しており、HPにとっても大切な市場ですので、AWSの動きに注目しつつ、HPが提供できる価値や価格帯については常に意識するようにしています。

――5月の決算発表時には、追加の人員削減も発表しています。HPはいつ本格的に復活できるのでしょうか。

 HPは巨大で複雑な企業です。5月に発表した人員削減は、より筋肉質な企業にすることがチャンスにつながるとの判断によるものです。

 HPは今まさに復活の段階にあります。アジアでは特にハードウェアが成長しており、結果も出てきています。バランスシートやキャッシュフローに問題はなく、負債もありません。過去3年でビジネスが大きく改善し、顧客やアナリストなどの反応も前向きです。すでに復活の段階にあると見ていいでしょう。

沙倉 芽生