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「コンテンツクラウド」を打ち出すBoxの取り組み、レヴィCEOや日本法人の古市社長らが説明

BoxWorks Digital Tokyo 2022キーノートレポート

 Box Japanは7月6日・7日の2日間、オンラインで年次イベント「BoxWorks Digital Tokyo 2022」を開催している。

 「Welcome to "The Content Cloud"」をテーマに、あらゆるビジネスや業務の中心にある「コンテンツ」にフォーカスし、DX推進の基礎になるコンテンツを、使いやすく、高いセキュリティで管理、活用し、生産性向上や業務プロセスの最適化につなげるためのヒントを示す内容になっている。

 対象となるのは、企業や組織の経営層、情報システム部門や経営企画、DX推進部門、事業部門の責任者および管理職、担当者としており、5000人以上が事前登録。「働き方」「業務効率」「セキュリティ」「脱PPAP」「脱はんこ」「ペーパーレス」「BoxとOffice 365の活用」などの観点から、顧客事例やトークセッションを通じて取り組みを紹介する。また、最新のBox関連動画や資料を見ることができるバーチャル展示も用意した。

 開催初日の午前11時から行われたオープニングキーノートでは、Boxの共同創業者であるアーロン・レヴィCEOが登場。「コンテンツクラウド」を打ち出すBoxの今後の取り組みなどについて説明。あわせて、Box Japanの古市克典社長が、日本における事業戦略などについて説明した。

米Boxのアーロン・レヴィCEO

米BoxのレヴィCEOが示した、未来の働き方を牽引する3つのメガトレンドとは?

 BoxのレヴィCEOは、2005年にBoxを創業した際に、ファイルへのアクセスや情報の共有を、場所やデバイスを選ばずに容易に行え、これをセキュアな環境で提供すること、そして、誰とでもコラボレーションし、業務プロセスを自動化し、組織の働き方を変革することをビジョンに掲げたと振り返り、「このビジョンがいまほど重要だったことはない。働き方の変革や競争力の強化、デジタル時代での成功を目指す企業が、コンテンツ活用を促進するためにBoxを導入している」とした。

 また、未来の働き方を牽引する3つのメガトレンドとして、「どこにいても働ける」、「デジタルファースト」、「セキュリティ」の3点を挙げた。

未来の働き方を牽引する3つのメガトレンド

 「かつては重要な仕事をするためにはオフィスにいる必要があり、会議や意思決定もオフィスで行われていた。それが突然変化した。デバイスや場所を選ばず、誰とでもコラボレーションできるようになった。顧客やパートナーとのやり取りも、サプライチェーンもすべてデジタル化されている。もはや、デジタルは選択肢のひとつではなく、競争力を得るための手段でもない。21世紀のビジネスに欠かせない要件になっている。企業成長の必須要件である。さらに、サイバーセキュリティの重要性はこれまで以上に高まっている。激しさを増すグローバルコンプライアンス要件にも対応しなくてはならない。そして、これらのメガトレンドの核心にはコンテンツの活用がある」と語る

 その一方で、「だが、コンテンツの量は増大するとともに、多くのシステム上に分散している。その結果、企業内のデータが断片化し、データからの価値創出が困難になっている。データの重要性が高まっているのにも関わらず、こうした問題が起きている。特に、企業内の8割を占める非構造化データのコンテンツの多くが、システムごとに分散し、デジタル時代に適応できない状況ともいえ、セキュリティのリスクを生じさせ、管理負荷を増大させ、ユーザーの業務を停滞させている。デジタル時代にはコンテンツをクラウドで管理する新たな手段が必要である。それがコンテンツクラウドになる」と述べた。

企業内情報の8割を占める非構造化データは混乱状態

 Boxでは、単一のプラットフォームでコンテンツのライフサイクル全体を支援。データの自動分類と脅威検知でコンテンツを保護し、組織内外とのリアルタイムでのコラボレーションを実現するとともに、コンテンツに関わるワークフローの自動化などが行え、あらゆるアプリとの連携などにより、コンテンツの断片化を解消できる点を強調する。

 最後に、「DXを推進する日本のお客さまのお役に立てるように、Boxはコンテンツクラウドの拡充を続けていく」と語った。

コンテンツ管理、セキュリティ管理に特化したサービスとして機能を深掘りする

 一方、Box Japanの古市克典社長は、「Boxがさまざまな機能を追加していることから、マイクロソフトやグーグルのようなオフィスアプリ全般をカバーする企業になるのかと聞かれることが増えた。答えはノーである。Boxは包括的ITツールを目指すのではなく、コンテンツ管理、セキュリティ管理に特化したカテゴリーキラーとして関連機能を深堀していくことになる。多くの人が利用するすべてのアプリと中立的な関係を保ちながら、密に連携を取っていくことになる。これにより、これまでにできなかった新たな分析や運用が可能になる。そうした世界を目指していく」と切り出した。

Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏

 Boxは、全世界11万社の企業で採用され、フォーチュン500社の67%が利用している。日本では、1万2000社以上で採用。日経225の67%の企業が導入している。

全世界11万社の企業で採用され、フォーチュン500社の67%が利用している
国内では1万2000社以上で採用され、日経225の67%が導入

 「日本では、2年前に比べて顧客数が倍増しており、最近では、自動車、鉄道、金融分野での導入が増加。さまざまな業界で利用されている。日本郵政や関西電力、文部科学省、埼玉県庁など、慎重派の企業がBoxを導入しはじめているのも特徴である。クラウドの活用による日本企業の競争力向上に貢献したい」と語る。

 日本製鉄では顧客とのデジタル取引や契約管理、セールスイネーブルメントに活用。トヨタ自動車では知財保護やリスク回避、履歴監視による訴訟の低減にBoxを活用しているという。

Boxの活用事例

 古市社長は、企業ではクラウドを活用することでどこからでも働けるメリットが生まれたものの、さまざまなクラウドサービスを利用しているため、目的のコンテンツが見つけにくくなったり、どれが最新のコンテンツかがわからなくなったりといった課題が生まれていることを指摘する。

 例えば、OneDriveに保存しているコンテンツを社内共有するためにコピーして、SharePointで配布。一方で、顧客に提案するためにSalesforceにも別のコピーを展開し、契約の際にはDocuSignで電子署名を行って、これを別途保存するといったことが起こっているとする。

 「クラウドサービスごとにコンテンツが管理されていると、企業全体でコンテンツを捜索することが日常茶飯事になってしまうし、コンテンツ管理が煩雑になり、その結果、うっかりアクセス制限をかけ忘れたファイルから情報が漏えいする可能性も増えている。こうした悩みを解決できるのがBoxであり、全社ファイル管理基盤として、コンテンツの一元管理を行うことができる」とする。

 コンテンツの一元管理における秘訣(ひけつ)は、「容量無制限」と「コンテンツとアプリの分離」の2点だという。

 Boxは、容量無制限の環境を実現するとともに、コンテンツの変更履歴を自動保存し、最新版にアクセスできる環境を実現。さらに、外部組織に対してはコンテンツを送信するのではなく、Boxのコンテンツにアクセスしてもらう形にしているため、情報漏えい対策にも効果があるという。

 さらに、コンテンツとアプリを分離した管理を行っているため、DXを推進する際に、新たなアプリを活用してみたいといった場合にも、セキュリティ面での不安を持つことなく、統一したセキュリティポリシーのもとでコンテンツを守りながら、新たなアプリ導入の支援ができるとのこと。また、新たなアプリに変更する場合にも、コンテンツを保護しながら切り替えることが可能になる。古市社長は、現在、1500以上のアプリとの連携が可能になっていると説明した。

コンテンツ一元管理、2つの秘訣はコンテンツとアプリの分離

 加えて、「社内と社外、定型業務と非定型業務の組み合わせによる4つの領域において、データやコンテンツが分断されがちであるが、これもBoxであれば、分断することなく利用できるようになる。Box Platformを活用することで、顧客や代理店などの不特定多数とつながったり、定型業務システムとつながったりできる。非定型業務のコンテンツと連携させた使い方も可能になる。ある鉄道会社では、列車運行管理システムから得られる速度や停車時間などの構造化データに、駅の動画情報などの非構造化データを組み合わせることで、列車の運行効率化と顧客満足度を同時に向上させることができている。これまでにはないようなメリットが生まれている」と語る。

4つの領域ごとに、データやコンテンツ共有は分断されがちという
Boxを情報のハブとしてシステムや業務をつなぐ

 そして、履歴管理の機能を活用することで、ランサムウェアによる被害からもコンテンツを守ることができるという。「ほとんどの被害は、添付ファイルを開いてしまったことから起きている。Boxを利用すれば、そもそも添付ファイルを開くということがなくなり、プレビュー機能によって中身を確認できる。Boxでは、プレビューが可能なコンテンツの質と量の向上に取り組んでおり、最近では、ほぼ日本でしか使われていないDocuWorksのプレビューも可能にした」。

 最後に、古市社長は、「シリコンバレー企業と日本企業のいいところ取りによって、Box Japanの事業を日本で成長させていく」と述べた。

 BoxWorks Digital Tokyo 2022では、新たな製品や機能についても説明した。

 Boxでは、コンテンツクラウドのビジョンを打ち出し、マルウェアなどの脅威からコンテンツを守るBox Shield、コンテンツに対するガバナンスを実現するBox Governance、リアルタイムに複数の人とコラボレーションするBox Notes、コンテンツを中心としたビジネスプロセスの自動化を行うBox Relay、コンテンツのクラウドへの移行を支援するBox Shuttle、電子署名ソリューションのBox Signなど、品揃えの強化を図っている。

 Box Japan プロダクト&サポート部の坂本真吾シニアディレクターは、「Boxは、コンテンツを守るセキュリティやコンプライアンス、ユーザーに力を与えるコラボレーションとワークフロー、ビジネスをつなぐ業務アプリとの統合という3つの領域において、戦略的投資を行っている」と語る。

3つの領域で戦略的投資を実施

 「コンテンツを守る」では、Box Shieldの機能強化を挙げる。Box Shieldでは、スマートアクセスと脅威検知の2つの機能で構成。スマートアクセスでは、ファイルの種類に基づく自動分類、分類とアクセス制限の可視化などの機能を搭載したほか、新たに機密コンテンツの制御方法の拡大、分類済みコンテンツの可視化機能を追加する予定を発表した。

 脅威検知では、検出ルールの機能強化やディープスキャン機能の提供のほか、新たにマイクロソフトのOfficeファイルのディープスキャンサポート、アカウント乗っ取りリスクへの対応、ランサムウェアへの対応強化を予定している。

 またコアセキュリティでは、新たにグループベースのポリシー拡大、多要素認証オプションの機能強化、ユーザーセッション管理機能の搭載を予定。ガバナンスでは、リテンションポリシーの設定オプションの追加、ごみ箱の機能拡張、ガバナンスレポートの強化などを予定している。

 国際的なデータレジデンシー要件に対応できるBox Zonesでは、フランス地域を追加して、フランス固有のプライバシー法に準拠できるようになった。またGxPでは、ライフサイエンス分野のユーザーなどが、サンドボックスで新機能を事前に確認できるようになったという。さらに、FedRAMPやStateRAMPの認定を取得したほか、日本でも2021年9月にISMAPに登録し、3省2ガイドラインにも対応したことを報告。今後も世界中の業界標準に幅広く対応していくとした。

 管理エクスペリエンスの強化にも取り組んでおり、今後は、サポート記事検索機能、管理者向け管理機能強化を行う予定だという。

 「ユーザーに力を与える」では、コラボレーションとワークフローの観点から説明した。

 コラボレーションでは、Enterprise Plusプラン以上の顧客には150GBファイルまでをサポートするほか、編集可能な共有リンクなどを提供。Adobe Creative Cloudのコンテンツのプレビュー対応に加えて、日本のユーザーの要望に応える形でDocuWorksのプレビューにも対応したという。

DocuWorksのプレビューに対応

 今後は、Webアプリの機能強化、所有するファイルの一元管理、Box Notesの機能進化も予定している。また、コンテンツインサイト機能を新たに搭載し、各コンテンツの使用状況などを管理できるようになるという。

 ワークフローでは、ファイルリクエストのブランド設定、Box RelayとBox Signの連携強化を予定しているという。Box Signでは、Salesforceとの統合を図っているほか、今後は、送信者向け機能の強化、署名者エクスペリエンスの向上などを図ることになる。

 新たな製品として発表したのが、Box Canvasである。リッチでインタラクティブなビジュアルコラボレーションが可能なホワイトボード機能であり、「新製品開発やセールスアカウントの計画、マーケティングキャンペーンの作成、小売店のマーチャンダイジングなど、さまざまなビジネスの場面、さまざまな業界で、アイデアをまとめたり、プロジェクトやプランを実行するために活用できる。Boxのコンテンツクラウドの一部であるため、ほかのコンテンツとのコラボレーションにも柔軟に対応できる」とした。

Box Canvas

 3つめの領域である「ビジネスをつなぐ」においては、Microsoft TeamsやMicrosoft Officeとの連携強化、SlackやSalesforce、Zoomとの連携強化を進めているのに加えて、Box for Microsoft Officeデスクトップアプリ共同編集機能を、段階的にリリースを開始していることを明らかにしたほか、新たなApp Centerの提供や、Box for Salesforceの機能強化も予定しているという。

 開発者向けには、Box Sign APIやEnterprise Event Stream APIの提供などに続き、さらなるAPIの機能強化を図るほか、CLIの自動化スクリプトライブラリの提供を予定している。

 坂本シニアディレクターは、「今後も、プラットフォームやコラボレーション、ワークフロー、統合、セキュリティ、コンプライアンスなどの機能を進化させていく予定だ。これによって、Boxは、デジタルファーストの世界を支援することになる」と述べた。

Box Japan プロダクト&サポート部の坂本真吾シニアディレクター