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Dell Technologies、自律型コンバージドインフラ「PowerOne」や新たな料金設定モデルなどを発表
Dell Technologies Summitレポート
2019年11月18日 06:00
世界に対する社会的影響力に多くの時間を割く
Dell Technologies Summitの会期初日には、デル会長兼CEOが約30分間に渡って基調講演を行ったが、そのなかで多くの時間を割いて説明したのが、世界に対する社会的影響力(ソーシャルインパクト)に関する内容だった。
Dell Technologiesでは2030年に向けたビジョンとして、「2030 Progress Made Real」を打ち出しており、「持続可能性の推進」、「インクルージョンの醸成」、「テクノロジーによるライフシーンの変革」、「倫理とプライバシーの維持」といった4つの観点から、技術や人、規模を通じて、人類と地球に永続的な影響を与えることを目指している。
今回のDell Technologies Summitでは、その具体的な数値目標について発表した。
具体的には次のような目標を掲げた。
・2030年までに、従業員の男女比率を50対50に
・役職の40%が女性となるようにする
・そのための女性の雇用・育成・維持を推進
・米国の従業員数の25%、役職の15%をアフリカ系米国人およびヒスパニックとなるように雇用・育成・維持を推進
・販売する製品の台数と、リサイクル回収したり再生資源を利用したりする製品の台数の比率を1対1とする
・製造する全製品の内容の半分以上にリサイクル資源または再生可能な資源を使用
・すべてのパッケージングに100%リサイクルした資源または再生可能資源を使用
・科学技術を基盤にした包括的な気候プログラムを推進
・顧客によるデル製品の利用およびサプライヤーとのコラボレーションを含めて、2030年までにユニット収益あたり60%の温室効果ガス排出を削減
・年1回のペースで全従業員の95%にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)やハラスメント、マイクロアグレッション(自覚のない差別)、特権意識の是正に関する啓発教育を実施
・10億人の健康、教育、経済機会の発展を促進
・1000の非営利団体のデジタルトランスフォーメーションを支援
・全社員の75%にさまざまなコミュニティへの慈善寄付とボランティア活動への参加を奨励
・倫理観および透明性向上をさらに推進する
「2030 Progress Made Realは、Dell Technologiesにおけるあらゆる意思決定の指針になり、2030年に向けた目標設定において、優先度を決める要素になる。Dell Technologiesは、テクノロジーや規模、経験とノウハウを生かして、地球全体および社会に有意義で目に見えるインパクトをもたらしていく。そのためには、従業員のスキルと意欲を高めるとともに顧客やパートナーの協力も必要になる」(Dell Technologiesのカレン・クイントス チーフカスタマオフィサー)とする。
もともとDell Technologiesでは、2013年に「2020 Legacy of Good」プランを策定。2020年を最終年度として、1億ポンド(約4万5400トン)のリサイクルコンテンツや再生プラスチックなどを、Dell Technologiesの新製品に使用したり、20億ポンド(約91万トン)以上の使用済み電子機器をリサイクルしたりするといった目標を掲げ、目標に掲げた項目のうち75%が、2020年を待たずに前倒しで達成されている。
再生したカーボンをノートPCの天板に使用したり、自動車のフロントガラスからリサイクルした素材を、ノートPC向けのバックパックに使用したり、再生素材パッケージに使用したりといったのもその一例だ。
また「2020 Legacy of Good」では、同社の社員が、全世界で500万時間にのぼるコミュニティへの奉仕活動を実施するといった項目も含まれており、これも前倒しで達成している。
新たな目標は、こうした実績や成果をもとに打ち出したものになる。
デル会長兼CEOは、「2030 Progress Made Realは、10億人の人々に影響を及ぼすものになる。そして、すべての従業員、お客さま、デル製品に対して、目に見えるポジティブな効果をもたらす企業目標となる。Dell Technologiesは創業以来、35年間でさまざまなことを達成し、社会課題の解決に貢献してきたが、私はこれからの35年のことを考えている。テクノロジーが人々の生活をもっと豊かにしていく必要がある。Progress Made Realは、こうした社会を実現するビジョンになる」と位置づけた。
ここでは、ヘルスケアの例を挙げた。
Dell Technologiesでは、医療システムが行き届いていないインドにおいて予防型遠隔医療システムを提供し、すでに1100万人に対してサービスを提供。今後は4000万人に対してサービスを提供する計画があることを示す一方、世界的に寿命が延長するなか、先進国である米国では、1人あたりの医療費がほかの国よりも30%も多いにもかかわらず、この3年間、寿命が短くなっていることなどが示された。
デル会長兼社長は、「ヘルスケアは、テクノロジーが最も貢献できる分野のひとつである」と語り、ここにも貢献の余地があることを示した。
今回明らかにした目標のなかで、注目を集めたのが、2030年までに従業員の男女比率を50対50にすることである。デル会長兼CEOがこの目標を発表すると、聴講していたメディア、アナリスト関係者からは拍手が湧いた。
Dell Technologiesギビング&ソーシャルイノベーション担当のジェレミー・フォード バイスプレジデントは、「現在、Dell Technologiesにおける女性比率は約3割。これを5割に引き上げることになる。そのためには、子供や若い女性にテクノロジーに関心を持ってもらうための活動をすることが大切である。また、育児や介護などで一度仕事から離れた女性が、職場に復帰しやすい環境を作らなくてはならない。多様性が高い組織は、そうでない組織よりも成長率が高いという結果が出ている。女性が5割を占めることで、さらに多様性が高まり、それが企業の成長につながる」とする。
一方、販売する製品と、リサイクルによって回収したり、再生資源を利用したりする製品の比率を1対1とすることも、重要な取り組みに位置づける。
Dell Technologiesサスティナビリティ担当バイスプレジデントのデビット・レア氏は、「2020 Legacy of Goodで達成したリサイクルコンテンツや再生プラスチックの高い利用率については、Dell Technologiesの取り組みだけでは達成できなかった。サプライヤーとともに技術革新を行い、品質や色、耐久性といったことも納得できる水準のものを開発でき、それを適用することで達成したものである。パートナーの協力なしには成し得なかったことであり、それは、2030 Progress Made Realの取り組みでも同様である。高い目標に対して、パートナーと一緒に挑戦する環境を醸成することが不可欠である」とする。
Dell Technologiesは、「2030 Progress Made Real」によって、今後10年間に渡り、企業の社会責任として、なにをするかということを明確化した。
テクノロジーを活用して社会を変えること、テクノロジーを活用して製品を変えることとともに、テクノロジーを利用して雇用を変え、働く環境も変える考えだ。
2030 Progress Made Realが、同社の根幹をなす取り組みであるのならば、今後は、Dell Technologiesの方針や事業戦略を見る上では、製品や技術だけでなく、こうした側面からの取り組みもとらえておく必要があるといえる。