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キーワードは「自律化」「自動化」――、Oracle Open World 2017で披露された“明日を実現”する技術

さまざまな新製品やサービスを発表

 Oracle Autonomous Database Cloud以外の、IaaSおよびPaaS関連の発表も注目を集めた。

 これらは会期3日目に、米Oracle プロダクト開発担当のトーマス・クリアン プレジデントの基調講演で発表されたもの。プロダクションエンタープライズアプリケーション向けに、業界最高レベルのパフォーマンスを提供するとした「Oracle Cloud Infrastructure」の強化では、「サーバー、ストレージ、ネットワーキング、エッジサービスを提供し、競合他社より87%優れたパフォーマンスと、54%も優れた価格性能を提供する新しいコンピューティングプラットフォーム」と位置付ける。

 また、ERPをはじめとしたバックオフィスアプリケーションや、電子商取引などの外部向けデータベースアプリケーション、ハイパフォーマンスコンピューティングなどのパフォーマンス集約型アプリケーションを高速に実行できるとした。

米Oracle プロダクト開発担当のトーマス・クリアン プレジデント

 さらに、オーバーサブスクリプションのない25Gbpsネットワークなど、ハードウェア性能を向上させた新たなデータベースマシン「Oracle Exadata X7」や、コンピューティングインスタンスの新たなラインアップを発表。「Bare Metal Dense I/O」インスタンスは、1秒あたり数百万回のIOPSに対応する、52コア、51TBのNVMe SSD機能を提供するという。

 また、新たなベアメタルGPUインスタンスは、大量データセットの処理と分析を汎用プロセッサにより、効率的に行えるように設計。複雑な機械学習アルゴリズムや人工知能アルゴリズムに最適化しており、競合他社のソリューションよりも400%高速で、58%の低コスト化を実現しているという。

 クリアン プレジデントは、CPUおよびGPUコアあたりで最高のコストパフォーマンスと、業界最低のコストを両立したことを強調した。

 また、エンタープライズグレードの分散型台帳クラウド基盤「Oracle Blockchain Cloud Service」や、AIを利用したチャットボットとオペレーショナルアナリティクスの開発と導入を合理化する「Oracle Mobile Cloud」、完全なAI開発環境とクラス最高のAIコンピューティングインフラストラクチャーを組み合わせた「Oracle AI Platform Cloud Service」を発表。

 Oracle GoldenGateやOracle Data Integrationなどを統合した「Oracle Data Integration Platform Cloud」、SaaSとオンプレミス統合のための機能とプロセス自動化を追加した「Oracle Integration Cloud Service」の強化なども発表している。

 クリアン プレジデントは、「Oracleが競合他社と最も異なるのは、IaaSの上で稼働するソフトウェアスタックの強みである。ここでは39年の実績がある。ユーザーがOracle Cloudを選択する理由はここにある」とした。

“自律環境”によるセキュリティ面の利点

 もうひとつ、今回のOracle Open Worldでエリソン会長兼CTOが強調したのが、サイバーセキュリティへの取り組みだ。

 「サイバーセキュリティで大切なのは、データを盗まれないことである。そうした観点から考えると、自律型データベースであるOracle Autonomous Database Cloudにデータを格納することが最適である。そしてOracleは、自律型データベースと自律したセキュリティを一緒に開発しており、一緒に機能するようにしている。また、データは社内から盗まれることが多いが、自律型のOracle Autonomous Database Cloudは人が介在しないため、盗む機会を与えないともいえる。自律した環境はデータを盗まれず、安定した運用が可能になる」とする。

 サイバーセキュリティに関して、もうひとつ発表したのが、Oracle Management and Security Cloudの拡張だ。これは、会期3日目に行われた、エリソン会長兼CTOによる2回目の基調講演で発表された。

 「Oracle Autonomous Database Cloudとともに開発を進めてきたOracle Management and Security Cloudは、いずれも機械学習をベースにしたものである」とし、業界初のクラウドネイティブなセキュリティ管理製品だと位置づけた。

 膨大な生データを活用した機械学習によって、正常な振る舞いと異常な振る舞いを比較し、そこからサイバー攻撃の動きを検出。「弱点が脅威にさらされる前に、パッチを適用し、システムを修復し、情報資産を守ることを、ひとつのシステムで実現できる」という。

 ここでは、Splunkと比較をしながら、Oracle Management and Security Cloudの特徴を示した。

 エリソン会長兼CTOは、「Splunkには、データサイエンティストが必要であり、分析機能だけを提供し、修復機能を持たない。運用に必要とされる重要なデータおよび最適なセキュリティ機能が欠けている」と指摘。「新たな機械学習によるITセキュリティの実現によって、Oracleは、優れたセキュリティ管理環境を提供できるようになる。自動修復機能も提供する単一のモデルとして提供することができる点も特徴」だとした。

Oracle Management and Security Cloudの特徴

 基調講演では、サイバー攻撃が激化していることに言及したのが印象的だった。

 エリソン会長兼CTOは、「Equifaxでは、米国人の約半分にあたる1億4300万人のクレジットカード情報、社会保障番号などが盗まれた。この情報がダークウェブに売り出されていないということは、東欧のある国が別の用途で利用したいと考えて盗みだしたものだろう。相手は個人や企業ではない。国である。そして、これは、人とコンピュータの戦いではなく、われわれのコンピュータと相手のコンピュータとの戦いである。われわれはそれに負けている。これに対抗するためには、情報を守る新たな仕組みが必要だ」とした。

 こうした観点からも、機械学習による自動化技術が必要であることを訴えている。

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 Oracle Open World 2017に参加して感じたのは、今回のテーマである「Your Tomorrow,Today」で示した「明日」を実現するのは、「自律化」「自動化」という新たな技術であることを、エリソン会長兼CTOが示したことだった。

 その領域に、Oracleが先んじて踏み出したことを強調したのが、Oracle Open World 2017のメッセージであったといえよう。クラウドシフトを加速するなかで、この新技術が強力な武器になるのは確かだろう。