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キーワードは「自律化」「自動化」――、Oracle Open World 2017で披露された“明日を実現”する技術

Autonomous Database Cloudを発表

 今回のOracle Open World 2017でも、クラウドシフトを明確に打ち出すOracleの姿が示された。

 Oracle Open World 2017の初日の基調講演では、エリソン会長兼CTOが、最新データベースのOracle Database 18cをベースにしたOracle Autonomous Database Cloudを発表してみせた。

 ちなみに、Oracle Database 18cのナンバリングが既存製品の「12c」から一気に増えたが、「これは2018年版という意味であり、自動車の年式と同じようなものだ」(エリソン会長兼CTO)と説明している。

 Oracle Autonomous Database Cloudは、2017年12月に出荷するAutonomous Data Warehouse Cloud Serviceのほか、2018年6月に出荷するAutonomous OLTP Database Cloud Service、2018年に出荷するAutonomous Express Database Cloud ServiceおよびAutonomous NoSQL Database Cloud Serviceが用意される。

Oracle Autonomous Database Cloudは機械学習をベースに自動化を図る
Oracle Autonomous Database Cloudは4つの製品で構成される

 エリソン会長兼CTOは、「機械学習を活用した自律運用により、Oracle Autonomous Database Cloudの可用性は99.995%に達する。これは1年間に、30分間未満のダウンタイムで済むことにつながる」と、高い信頼性をアピール。

 「アップデートやパッチの適用、チューニングもすべて自動で行う。人件費が不要になるだけでなく、人手を介さないためヒューマンエラーもない。新たな時代のデータベースである」と強調した。

 Oracle Autonomous Database Cloudは、機械学習を用いたセルフドライビングが可能であり、アップグレードとパッチの自己適用を、稼働時に自動実行。サイバー攻撃を防止するために、稼働時にセキュリティ更新が自動で適用されるほか、ダウンタイムを発生させることなく、コンピュータとストレージの拡張および縮小を瞬時に実行するセルフスケーリング、ダウンタイムを自動で防止し、99.995%の可用性を保証したセルフリペリングなどを特徴として紹介している。

 適用範囲としては、トランザクションや混合ワークロード、データウェアハウス(DWH)、グラフ分析、部門別アプリケーション、ドキュメントストア、IoTなどの多様なワークロードに対応することができるとした。

 米Oracle システムテクノロジー担当のホアン・ロアイザ シニアバススプレジデントは、「Oracleは、20年前からデータベースの自動化に取り組んできた。今回の製品は、なにかの機能を自動化するというのではなく、データベース全体を自動化したものであり、最後の総仕上げといえるものだ」と説明。

 「複雑なものを簡単にするというのは難しい。クルマは100年前からあるが、いま進められている自動運転は、クルマを最初に作った時よりも難しい作業といわれている。自動の方がマニュアルよりも安全でなくてはならないからだ。データベースの自動化もそれと同じであり、他社が簡単に追随できるものではない。AWSとの技術の蓄積の差は20年間の差があるといえる」を自信をみせる。

米Oracle システムテクノロジー担当のホアン・ロアイザ シニアバススプレジデント

 一方、米OracleのハードCEOは、「Oracleは、あらゆる業界に向けて、クラウドに移行するための準備をしている。いつ移行するかが問題ではなく、どう移行するかが問題である」と述べ、クラウド移行はもう止められない流れだという点を指摘。

 その上で、「クラウドが登場したことによって、データセンターを持っていなくても、IT部門がなくても、最新のテクノロジーが使える環境が整ってきた。5年前にはスタートアップの企業に対して、Oracleのシステムを売るのは無理だった。だが、いまでは、IT部門がない企業がOracleのテクノロジーを利用できるようになった。世界最小の会社が、世界最大の企業と同じテクノロジーが使えるようになった」とする。

 なお、Oracle Autonomous Database Cloudによる自律化の進展は、IT部門を持たないような企業でのクラウド活用を促進することにもつながるが、一方で、自律型データベースの誕生は、データベースプロフェッショナルの仕事を奪う可能性があるともいえる。

 その点について、エリソン会長兼CTOは、「データベースプロフェッショナルの仕事は、逆にもっと増えることになるだろう」と反論。「自動化すれば、パッチ適用やバックアップなどに関する共通的な仕事はデータベースに任せることができる一方で、データベースデザインやデータアナテリティクスなどの作業に時間を割けるようになる。また、ポリシーの設定やディザスタリカバリーの設定、データセキュリティの強化にも力を注ぐことができる。業界に特化した知識が求められる部分の仕事に集中できる」とし、データベースプロフェッショナルは、より付加価値の高い仕事にシフトするとの考えを示した。