仮想化道場
x86への移行を果たすHP Integrity Superdome X
(2014/12/25 06:00)
今後HP-UX、ItaniumのSuperdomeはどうなる?
今回発表されたSuperdome Xでは、前述したように現在RHELやSUSE Linux Enterprise Serverなどがサポートされている。さらに2015年には、MicrosoftのWindows ServerやVMware vSphereなどのサポートも行われる予定だ。逆に、今までHPがIntegrityシリーズで使っていたHP-UX、OpenVMSなどは、現状ではSuperdome Xには移植されない。
個人的には、数年のうちにHP-UXはSuperdome Xに移植されることになるだろうと予測している。もっとも、現状のXeon E7 v2では、Itaniumと同じレベルまでのRAS機能はサポートしていないため、そうした機能が導入された新しいXeon E7がリリースされた時になるのではないか。
なおHPでは、IntegrityやHP-UXが大規模なインフラ系のミッションクリティカル分野のサーバーとして利用されていることを考えて、「継続的成長システム」というコンセプトで長期間のサポートを約束している。これまでHPでは、HP-UXのリリース後10年間のサポートを保証してきたが、今後、新しいハードウェアがリリースされても、HP-UX 11の動作を保証することを明らかにしている。これは、HP-UX 11に互換性を持たせたまま新しい機能を導入する開発手法に代わったためだ。
こうしたことから、x86ベースのSuperdome Xが発売されたり、もしx86版のHP-UXがリリースされたとしても、エンドユーザーはそれほど心配することはないだろう。
ただ気になるのは、Intelからの新しいItanium(開発コード名:Kittson)のリリースが遅れていることだろう。当初2013年後半から2014年にリリースされると言われていたが、2013年に入りIntel自身がKittsonの方針変更を発表している。これにより、リリース自体が2015年以降にずれ込んだ。
また当初、KittsonではXeonとのピン互換にすると発表されていたが、方針変更によりXeonとのピン互換は止めて、Itanium 9300(開発コード名Tukwila)/9500(開発コード名Poulson)とのピン互換を選択した(Itanium 9500はSuperdome 2で利用されている)。
製造プロセスも32nmとなり、Xeon E7 v2が採用している22nmから比べると一世代古いモノとなる。一概には言えないが、製造プロセスが一世代古いと総トランジスタ数が減るため、CPUコア数などが少なくなる。また、消費電力などの面でも32nmプロセスで製造されるプロセッサは、22nmプロセスに比べると電力消費が高くなる。
また、すでに提供されているHaswellベースのXeon E5 v3は、最大18コアを搭載しているため、次のXeon E7では20コア以上になるだろうと推測される。こうした面を考慮すると、Kittsonは、2015年にリリースされる予定のHaswellベースのXeon E7に比べると、パフォーマンス面では見劣りするのではないかと思われる。
加えて次世代のXeon E7では、現在のRAS機能もより高いモノが搭載されることになるだろう。そうなると、ミッションクリティカル分野でも新規にItaniumサーバーを選択する意味が小さくなる。
もう一つ不安視されているのは、リリースが遅れているKittson以降、Itaniumプロセッサのロードマップが明らかになっていないことだ。こういったことを考えれば、2015年後半にはHPやIntelがKittson以降のItaniumプロセッサの開発中止を発表する可能性はある。さすがに、この時には、x86版のHP-UXがリリースされていたり、Itanium版のHP-UXからの移行ロードマップなども示されたりするだろう。
ちなみに米国では、Superdome Xの発表と同時にx86ベースのNonStop OSを使ったNonStop Xというサーバーも発表されている(提供予定は2015年3月)。Superdome XとNonStop Xには似通っている部分もあるものの、NonStop XはNonStop OSの機能を生かすハードウェア設計になっている。このため、Superdome Xでx86版NonStop OSを動かすことはできないようだ。