仮想化道場

x86への移行を果たすHP Integrity Superdome X

 12月8日(米国時間)に発表されたHP Integrity Superdome X(以下。Superdome X)は、以前から米HPが提唱していた「Project Odyssey」のロードマップにおいて非常に重要なポイントになる、ミッションクリティカル向けの大規模SMP(Symmetric Multiprocessing:対称型マルチプロセッシング)マシンだ。

 今回は、Superdome Xのアーキテクチャを紹介しつつ、今後HPがItaniumプロセッサを使ったSuperdomeシリーズをどうしていくのか、UNIX OSのHP-UXをどうしていくのか、などを予想していく。

ミッションクリティカルの分野においても、x86テクノロジーを採用したサーバーが必要とされてきている
企業がミッションクリティカルサーバーで利用するアプリケーションは多岐にわたっている
企業においては、高可用性、高信頼性を持つITシステムを構築することが、ビジネスの成長の鍵となっている

x86サーバーとしては最大級のSuperdome X

 Superdome Xでは、1枚のブレードサーバーにXeon E7 v2シリーズ(Ivy Bridge世代で、22nmプロセス製品)を2基搭載し、HPが開発した専用のノードコントローラ「XNC2」を経由して、合計8枚のブレードサーバーと接続している。これにより、1システムあたり最大240コア(1プロセッサあたり15コア×2基×8枚)/480スレッドを実現している、“超ド級”のサーバーを構成している。

 メモリに関しては、現状では1プロセッサあたり24枚のDDR3-1333モジュールが搭載できるため、1枚のブレードサーバーで最大1.5TB(32GBメモリ×24枚×2基分)が搭載でき、8枚合わせれば、12TBの膨大なメインメモリを搭載する製品となっている。64GBのメモリモジュールも登場してきているから、バリデーションが済めば、最大24TBのメインメモリを持つサーバーが実現するかもしれない。

Superdome Xは、240コア、12TBメモリを持つ“超ド級”のミッションクリティカルサーバーだ
Superdome Xは、一般的なx86サーバーの20倍の信頼性を持ち、60%のダウンタイムを削減した。ミッションクリティカル分野に向けて作られたサーバー
Superdome Xは、汎用Linuxが動作するサーバーとしては240コア/12TBメモリと信じられないほどの性能を持つ
18Uサイズにブレードサーバーを8枚搭載している。背面には、インターコネクトモジュールなども配置されている

 Superdome Xの最大の特徴は、HPが開発したXNC2ノードコントローラになる。専用のノードチップを使用しないXeon E7 v2は、8プロセッサが最大構成になる。また8プロセッサ構成の場合も、1つのプロセッサが、ほかの7つのプロセッサにすべてダイレクトで接続しているわけではない。

 1つのプロセッサからは3本のQPIしか出ていないため、ほかの4つのプロセッサに対しては、一度別のプロセッサを経由してデータのやりとりを行う必要がある。もし、8プロセッサを1つのセットとして、16プロセッサのシステムを構成すると、データが通過するだけのプロセッサが多くなりパフォーマンスが悪くなるのだ。

 XNC2は、2つのプロセッサを1つのセットにして、ほかのブレードボードのXNC2に直接接続される。つまりXNC2では、1つのプロセッサから7本のラインが出て、それぞれのXNC2に直接つながるようになっている。Superdome Xでは、XNC2を2回経由するだけで、ほかのブレードサーバーのプロセッサと通信できるようになっている。

ブレードサーバーには、Xeon E7 v2のプロセッサを2個搭載し、ノートコントローラのXNC2でほかのブレードサーバーに接続されている。メモリをフル実装すると、1枚のブレードサーバーに1.5TBとなる
Superdome Xの特徴といえるHP独自開発のノートコントローラXNC2。XNC2を経由して、すべての16個のプロセッサと接続するため、オーバーヘッドが少ない

 注目すべきは、Superdome Xの8プロセッサと16プロセッサを比べるとほぼ2倍のパフォーマンスとなっている点だ。多くのシステムでは、プロセッサ数が増えれば増えるほど、オーバーヘッドが増えるが、Superdome Xでは、XNC2というノードチップを利用することで、プロセッサ数が増えてもリニアに性能がアップしている。

 膨大な処理を行うミッションクリティカル分野において、高額なシステム(プロセッサが多数搭載されていても)を採用しても、価格に見合う性能が得られないといったことがよくある。Superdome Xでは、こういった心配はないのだという。

 実際、Xeon E7 v2を搭載したHP ProLiant DL580(4プロセッサ)と比べても、SPECjbb2013ベンチマークにおいて、4.4倍の性能を実現している。

Superdome Xは、プロセッサ数が増えればリニアに性能がアップする

 また、Superdome Xをテストした九州大学とJST CRESTのベンチマークによれば、スーパーコンピュータ向けのビッグデータ解析Graph500において、他社のサーバーに比べるとコアあたり約5倍の性能を実現している。つまり、他社の640コアサーバーとほど同じ性能をSuperdome Xでは240コアサーバーで実現する、ということ。少ないプロセッサで高い性能が出せれば、サーバーの設置面積が少なくなるし、電源に関しても特別な設計をしなくて済むため、ユーザーにとっては、導入に関するハードルが下がる。

 ちなみにXNC2は、2010年に発売されたProLiant DL980 G7で採用されたノードコントローラ「XNC」をバージョンアップしたものだ。XNC2間のスピードも、XNCから比べると大幅にアップされている。

 Superdome Xは、HP自身もITシステムとして利用しており、膨大なCPUコアとメモリを使ったインメモリデータベースを利用することで、今までは2時間以上必要だった処理を88秒で終了するという、信じられないスピードをたたき出しているとのことだ。

ビッグデータの処理などでも、高い性能を発揮している。640コアを持つ他社サーバーと240コアのSuperdome Xは大体同じ性能を実現している
膨大なメインメモリを利用して、インメモリDBにより、2時間以上の処理を88秒で終わらすことができるようになった

(山本 雅史)