仮想化道場
“やわらかいデータセンター”を作る、IntelのSoftware Defined Infrastructure
(2013/7/30 00:00)
米Intelは7月22日に、「Software Defined Infrastructure(SDI)」という、データセンターのサーバー、ネットワーク、ストレージなどに関する戦略を発表した。
SDIの大きな特徴は、コンピュート(CPU、メモリ)、ネットワーク、ストレージなど、データセンターを構成するハードウェアをすべて抽象化して、ソフトウェアで自由に設定を変更することができる点だ。
IntelのSDIは、単なるコンセプトではなく、「Rack Scale Architecture」というハードウェア規格を提唱し、サーバー、ネットワーク、ストレージを統合した製品を提供しようとしている。
なおSDIはIntelだけが提案しているモノではなく、Software Defined Datacenterといったキーワードで、米EMCや米Ciscoなど、多くのハードウェア、ネットワーク、ストレージベンダーが提唱しているが、今回はIntelのSDIの特徴を詳細に見ていこう。
仮想化によるサーバー統合が契機に
クラウド以前のサーバーは、アプリケーションごとに垂直統合型のデザインを採用していた。このため、企業内部では、DNS、DHCP、メール、人事システムなど、ハードウェアとアプリケーションが強固に結びついたシステムが複数存在していた。このような垂直型システムの場合、プロセッサがマルチコア化、高速化し、使用できるメモリ容量も飛躍的に増えてきた現在、サーバーが単一のアプリケーションを動かすだけでは、あまりにもパワーが余ってしまう。さらに、ストレージもHDDの大容量化により、バイト単価が急速に低下し、個々のサーバーに接続したストレージの容量が余ってしまう状況になってきた。
そこで登場したのが、ハイパーバイザーによる仮想化だ。仮想化により、パワフルなプロセッサ、大容量のメモリを複数のOSで共有しようというコンセプトは以前から存在したが、2000年代に入りハイパーバイザーの性能がアップしたことと、安定性が増したことで、多くの企業において、サーバーを統合していくことがトレンドになった。
サーバー統合が始まったのは、プロセッサのアーキテクチャが変わったことも1つの原因だ。クロック周波数をアップして性能向上を図ってきたプロセッサが、クロックはそれほどを上げずに、マルチコア化を果たすことで全体的な性能をアップしていく方向に変わった。つまり、サーバー統合化によりハードウェアの台数を減らしていこうという流れに向かいやすくなってきたわけだ。
しかし実際には、サーバー統合化で減る台数よりも多くのサーバーが必要になってきた。これは、企業におけるITシステムの重要性が増したことと、インターネットの爆発的な普及、デバイスの種類が多様化してことが大きな理由といえる。
企業においても、サーバーで使用するITシステムが大きく変化してきた。以前までは、社内のデスクトップPCだけにサービスを提供してきたが、ノートPC、タブレット、スマートフォンなどユーザーが利用するデバイスが増えてきた。
さらに、インターネットの普及により、FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、ソーシャルゲームの登場などにより、世界中のユーザーが同時にアクセスするという、20世紀では考えられなかったサービスが登場したことも原因だろう。
このようなトレンドを踏まえると、ハードウェアとソフトウェアがタイトに結びつくのではなく、ハードウェアを抽象化し、必要に応じてソフトウェアから設定を変更するだけで、サーバーのリソース構成をダイナミックに変更できるシステムが必要になってきたのである。
プロセッサやメモリに関しては、コンピュートということで、ハイパーバイザーにより抽象化が行われ、仮想マシン上でシステム リソースをダイナミックに変更することができる。ストレージに関しても、Storage Area Network(SAN)と仮想ディスクの登場により抽象化が進んだ。
さらに、ネットワークに関しても、Open FlowなどのSoftware Defined Network(SDN)の登場により、抽象化が始まっている。