仮想化道場

サーバー向けにチューンナップされた新しいAtom「C2000シリーズ」

 最近サーバーの分野においても、1Wあたりのパフォーマンスが優れたプロセッサを多数搭載したマイクロサーバーに注目が集まっている。まだ、HPのMoonshotやAMDのSeaMicroなどしかリリースされていないが、2014年には64ビットのARMプロセッサを使ったマイクロサーバーを開発しようというサーバーベンダーが数多くいる。

 マイクロサーバー分野に向けて、Intelが提供するのがAtom C2000シリーズ(開発コード名:Avoton)だ。今回は、発表されたばかりのこの製品の特徴を紹介する。

Atom C2000シリーズのチップ写真

マイクロアーキテクチャを一新したAtom C2000

Atom C2000のアーキテクチャ。最大8コア、メモリは最大64GBをサポート。CPUコアの改良によりAtom S1200より7倍の性能アップを果たしている

 Intelは、低消費電力向けのプロセッサとして、昨年Atom S1200シリーズをすでにリリースしていた。Atom S1200シリーズは、Windows 8タブレットなどで採用されている、SaltwellアーキテクチャのAtom Z2760(開発コード名:Clover Trail)をベースにしていたため、CPUコアとしては、あまり高いパフォーマンスを示せなかった。

 実際、Atom S1200は発表はしたが、大手のサーバーベンダーは採用しなかった。大きな理由としては、Atom S1200ではあまり高いパフォーマンスを示せず、低消費電力性といってもそこそこでしかなかったことがあるようで、サーバー用のプロセッサとしては中途半端というサーバーベンダーの判断だった。

 またI/O関連にしても。タブレットやスマートフォンに向けたプロセッサがベースになっているので、サーバーで使用するにはあまりにも性能不足だった。

 こうした課題を解決するために新たに開発されたのが、Atom C2000シリーズだ。

 Atom C2000シリーズでは、Atomプロセッサとしては第3世代にあたる、新しいSilvermontコアが採用された。

 Silvermontコアは、以前のSaltwellコアからマイクロアーキテクチャデザインを一新し、アウトオブオーダー型のプロセッサに変更して、ある程度のパフォーマンスが出せるようになっている。

 64ビットのx64アーキテクチャを採用したほか、SSE4.1/SSE4.2をサポート。さらに、AES暗号の暗号化や復号を高速化する命令のAES-NI、IntelのIvy Bridgeプロセッサに搭載された、繰り返しの少ないランダムな数字を生成するIntel Secure Key(RDRAND)、スーパーバイザーモードで実行保護を行うIntel OS Guardなどが搭載されている。

 仮想化機能に関しては、第2世代VT-xをサポートし、EPT(Extended Page Table)、Virtual Processor IDなどにも対応している。このため、以前のAtom S1200シリーズよりも低負荷でハイパーバイザーを動かすことができるだろう。

Silvermontコアは、以前のSaltWellコア(Atom S1200のコア)よりも2倍以上の性能を実現している。また、最新プロセスを利用することで、低消費電力性の約4.7倍となっている
Atom C2000のSPEC CPU2006におけるシングルスレッド性能。Atom S1200と比べると1.9倍も高い性能を実現している。MarvellのARMプロセッサの5倍の性能を実現
Atom C2000のSPEC CPU2006における性能。シングルノードにおいて、Atom S1200の約5.1倍の性能を実現
Webサーバーのパフォーマンス。LAMP環境でPHPを動かした場合、Atom S1200の7.2倍の性能でAtom C2000は動作する
JavaのパフォーマンスもAtom S1200に比べると4.2倍の性能アップを果たしている
今後利用されてくる分散メモリオブジェクトキャッシングの性能もAtom S1200に比べると7.2倍(ランダムキー)、9.7倍(ホットキー)となっている

 CPUコア自体は、2コアで2次キャッシュメモリを共有するので、パリエーションとしては2の倍数となり、2コア~8コアまでが用意されている。さらに、最大2.6GHzまでのターボブーストも実現された。

 ただし、Atom S1200が持っていたHyper Threading(HT)機能は廃止された。これは、HTにより仮想的にコアを増やすよりも、物理コアを増やした方が性能的に高くなるためだろう。また、SilvermontコアのアーキテクチャがHTに不向きなのかもしれない。

Atom C2000は周辺チップも統合されているため、外付けのEthernetイーサネット チップやSATA IOチップ、USB IO チップなどは必要ない。Atom C2000のチップでほとんどの機能がサポートされている。これにより、サーバーユニットとしてみた場合、消費電力はAtom C2000シリーズの方が低い
Atom C2000シリーズでは仮想化機能も強化されている。レベル的には、Ivy Bridge世代に匹敵する機能が用意されている
Atom C2000は、マイクロサーバー、ストレージ、ネットワークなどに利用されていく
Atom C2000シリーズのダイヤグラム。Silvermontコアは、L2キャッシュを共有している。つまり2コアが最小コア数になる。また、アウトオブオーダー方式のアーキテクチャに変更された
Slivermontアーキテクチャでは、以前のSaltwellアーキテクチャではなく、Core iシリーズのプロセッサが採用しているアーキテクチャをベースにすることで、大幅にパフォーマンスをアップしている。さらに、低消費電力化も行われている
Silvermontコアを相互に接続するバスには、新しいSilvermont System Agent(SSA)が採用された。このバスでは、システムメモリのデータパス、キャッシュのコヒーレンシー管理、コアへの割り込み、コアとIOのパスを実現している。またSSAAは、クロスバー型のアーキテクチャを採用することで、バスがボトルネックにならないように工夫されている

(山本 雅史)