仮想化道場

“やわらかいデータセンター”を作る、IntelのSoftware Defined Infrastructure (アクセス頻度を考慮したストレージの活用が進む)

アクセス頻度を考慮したストレージの活用が進む

 ストレージに関しては、サーバー向けのAtomをベースにしてストレージシステム向けに特化した、Atom S12x9(Atom S1289、S1279 、S1269)プロセッサシリーズがリリースされている。

 クラウド環境において、データは、データ更新の頻度が高く高速なアクセスが必要なホットデータ、中程度のデータ更新と中程度のアクセスが必要なウォームデータ、ほとんどデータ更新がなく、参照が中心のコールドデータなどに分かれていく。

 今後、クラウドストレージにおいては、3つの異なる目的を持つストレージをサポートしていく必要がある。

 ホットデータ向けには、フラッシュメモリが利用されていくだろう。ただし、現在のSATA/SASインターフェイスのSSDは、フラッシュメモリのパフォーマンスを生かしきることができない(フラッシュメモリの性能がSATAやSASインターフェイスの性能を超えている)。そこで、PCI Expressに直接フラッシュメモリを接続し始めている。

 Fusion IOなど、いくつかのメーカーがPCI Express接続のフラッシュストレージを提供している。ただ、拡張カードではサーバーのメンテナンス性が高くないため、SFF-8639という2.5インチのフォームファクターのSSDとソケットが提唱されている。SFF-8639は、PCI Expressを最大4レーンを使用することができる。PCI Express 2.0なら最大2GB/秒、PCI Express 3.0なら最大4GB/秒となる。

 さらに、フラッシュメモリのパフォーマンスをアップするため、SATAが使用しているAHCIプロトコルではなく、フラッシュメモリ専用のNVM Expressプロトコルを採用することで、現状のSATA接続のSSDに比べると16倍以上の性能(PCI Express接続の場合)を実現する。クラウドストレージのホットデータは、NVM Expressを採用したSSDに保存されることになるだろう。

 ウォームデータは、現在のニアラインのSASストレージ、もしくはフラッシュメモリとSASドライブを組み合わせたハイブリッドストレージが利用されるだろう。

 コールドデータは、低コストのSATAドライブ、HGSTなどが開発しているコールドデータ向けのHDDストレージ(アクセス性能は低くても、1ドライブの容量が飛躍的に大きく、低コスト)などが利用されることになる。

 ストレージシステムで重要なのは、ダイナミックにホットデータやウォームデータ、コールドデータを見分けて、必要に応じたストレージに配置していくことだ。

 このようなストレージシステムを構築するためにパワフルなIAプロセッサを使うことで、複雑なストレージの配置をダイナミックなシステムソフトウェアが利用できるようになるだろう。

 まだIntelは、複雑なストレージシステムが構築できるソフトウェアスタックはリリースしていないが、ここでもWindRiverのリアルタイムLinuxなどを利用することで、高い性能を持つシステムデザインが提供されるだろう。

現在、SANとしてすべてのデータは高価なHDDに保存されているが、今後はデータの重要度により、フラッシュメモリ、HDDなどに切り分けて保存される。こういったストレージシステムを構築するには、パワフルなIAプロセッサを利用する
Xeonプロセッサ、フラッシュメモリの新しいプロトコルNVM Express、SSDなど利用することで、高度なストレージシステムが構築できる

(山本 雅史)