仮想化道場

クラウドプラットフォーム企業に変容するVMware (ゲルシンガー体制が完成した2013年のVMware)

ゲルシンガー体制が完成した2013年のVMware

2012年のCEO就任当初は、VMwareを取り巻く環境を整理していたが、今後、SDDCをテーマにVMwareを率いていくパット・ゲルシンガー氏

 VMwareにとって大きなターニングポイントになったのは、2012年秋のCEO交代だ。

 2012年の7月、VMwareのCEOをポール・マリッツ氏から、EMCのパット・ゲルシンガー氏へ変更する発表が行われた(就任は9月)。実は、この発表は唐突に行われたわけではなく、2012年に入り戦略的に行われたモノである。

 VMwareのCEOを退任したポール・マリッツ氏はEMCに戻った後、2013年になり、EMCと米General Electric(GE)との合弁企業PivotalのCEOに就任した。

 Pivotalは、クラウドやビッグデータなど新たなアプリケーション環境をサポートするプラットフォームや開発環境を提供する企業だ。Pivotalの設立と同時に、VMwareが買収したSpringSourceやGemFire、開発したCould Foundryなどが移管された。また、Zimbraなど一部は他社に売却された。

2012年当時、vFabricといわれていたプラットフォームは、クラウド管理やハイパーバイザー側の製品はVMwareに、その他はPivotalに移管された。SpringSourceは、すべてPivotalに移管された(vForum 2011の資料から)
2012年までにVMwareに買収されたJava関連やミドルウェアレイヤの企業は、ほとんどがPivotalに移管されたり、他社に売却されたりしている(vForum 2011の資料から)

 一方、VMwareのCEOとなったゲルシンガー氏は、Software Defined Data Center(SDDC)を企業のメインのビジネスコンセプトに位置付けた(IT as a Serviceも入っているが)。

 つまりゲルシンガー氏に社長を移行する際に、VMwareの中核ビジネスとなるハイパーバイザーなどの仮想化プラットフォームと、それら以外のアプリケーションを切り離し、VMwareはデータセンターの仮想化に注力するという方向性を明確に打ち出したわけだ。

2013年のvForumでは、SDDCの構築というミッションを掲げている
IT部門にとっては、ITのメンテナンスではなく、新しいITを開発できるようにしていく必要がある。これをサポートするのがVMwareだという
ITインフラにとって、すべてのレイヤでの仮想化、管理運用の自動化、互換性のあるパブリッククラウドが重要になる
SDDCによりオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドを統合して利用できるようにする

 SDDCにかじを切った時点で買収されたのが米Niciraだろう。Niciraは、SDNプラットフォームの提供において先進的な企業だった。2012年にNiciraを買収したことで、VMwareとしてはコンピュートの仮想化、ネットワークの仮想化、ストレージの仮想化(EMCと協力して)へと進み始めた。

 そして2013年の秋に発表されたvCloud Suiteでは、コンピュートの仮想化を担当するvSphere、ネットワークの仮想化製品であるVMware NSX(Niciraの製品をベースにしたもの)、ストレージ仮想化を実現するVirtual SANなどが組み込まれており、SDDCを構成するためのソフトウェアスイートに位置付けられている。

ネットワークの仮想化に向けては、買収したNiciraを進化させたNSXを提供
ストレージの仮想化に向けては、Virtual SANがリリースされた

(山本 雅史)