仮想化道場

苦難の2013年を越え、輝かしい2014年に賭けるAMD (現行Opteronの後継となる「Warsaw」)

Opteron Xの後継、サーバー向け64ビットARM、現行Opteronの後継の3ラインを提供へ

現行Opteronの後継となる「Warsaw」

Warsawは、現在のメインストリーム プロセッサOpteron 6300/4300シリーズのリフレッシュ版

 今回発表された2014年のロードマップでは、サーバープロセッサの利用分野を2つの分野に分けている。

 サーバーのメインストリーム(2ソケット/4ソケットサーバー向け)といえる、データベースやメッセージング(メールなど)などの従来型のIT用途には、Opteron 6300/4300の後継プロセッサの開発コード名「Warsaw(ワルシャワ)」が、2014年第1四半期に用意されている。

 ただWarsawは、現在のOpteron 6300/4300と同じPiledriverコアが使用される。製造プロセスに関しても32nmのままだ。

 説明会では、Warsawには新しい命令セットがいくつか追加され、回路設計もチューニングして省電力化を図ると説明していた。ある意味、デスクトップ向けのAPU「Trinity(開発コード名)」を再設計した「Richland(開発コード名)」と同じような位置づけなのだろう。

 CPUコアとしてRichlandは、Trinityと同じPiledriverコアが使用されている。また、Richlandは、製造プロセスもTrinityと同じ32nmプロセスが使用されている。ただ、TrinityではGPUコアにHD7600シリーズが使用されていたが、RichlandではHD8600シリーズに変更している(ただし、HD8600は以前のHD7600とほぼ同じGPU。GPUの世代としては、HD7600とHD7800もデスクトップのHD6000シリーズと変わらない)。

 このようなことを考えるとWarsawに関しては、大幅な性能アップは望めないだろう。また、製造プロセスも32nmプロセスを使用しているため、大幅な省電力化は見込めないだろう。ある意味、次世代コアのSteamrollerを採用した次世代Opteronが完成するまでのつなぎといえる。

 Warsawは、Opteron 6300/4300シリーズと同じソケットを採用し、同じTDPとなっている。このためサーバーベンダーは、現在のOpteron 6300/4300を採用したサーバーの設計を変更することなく、Warsawベースのサーバーをリリースすることができる。これは1つのメリットといえる。

 なおAMDでは、Warsawに関して、12/16コア プロセッサをカバーするとしていた。このため、Opteron 6300/4300シリーズのように、4コア、6コア、8コアといったバリエーションはリリースしないのではと思われた。しかし発表会において、今回発表したロードマップはあくまでも概要であって、Warsawで12/16コア以外のプロセッサをリリースすることも検討していると回答している。

 Opteron 6300/4300シリーズは、コストパフォーマンスの高さから大学などでHPC分野のサーバーとして採用されたり、CPUコアの数が多いため、VDI(仮想デスクトップ インフラストラクチャー)などの用途のサーバーとして企業でも採用されたりしている。

 しかし、IntelのXeonシリーズに比べると、採用率が高いとは言えない。実際、各サーバーベンダーの売れ筋サーバーがIntelのXeonプロセッサのサーバーだということを見れば、AMDが厳しい立場になっていることがわかる。

 2014年においてもサーバーのメインストリーム分野においては、AMDは厳しい環境といえるだろう。2014年の後半に、Steamrollerコアを12/16コア搭載した次世代Opteronがリリースされれば注目が集まるかもしれない。ただ、Steamrollerコアの性能自体が高くないと、積極的にユーザーも採用してくれないだろう。

 このような状況を考えて、AMDでは、サーバーのメインストリーム分野よりも、低消費電力プロセッサを使った高密度サーバー向けのプロセッサへとかじを切り始めているようだ。

(山本 雅史)