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日本HP、4.3Uに45台を収容できる超高密度サーバー「HP Moonshot System」

アプリに最適化された「Software Defined Server」の市場を開拓

HP Moonshot System。シャーシ「Moonshot 1500シャーシ」の上に、サーバーモジュール「HP ProLiant Moonshot サーバー」(手前)とスイッチモジュール(奥)が置かれている

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は19日、超高密度型サーバーシステム「HP Moonshot System」を発表した。対象となるアプリケーションに最適化されることで、スペースと消費電力、コストなどを大幅に低減できるとしており、日本HPでは「Software Defined Server」というジャンルに位置付けて展開するとのこと。

 「HP Moonshot System」は、米HPが「Project Moonshot」として開発を進めてきた超高密度型サーバー。今回はその商用製品の第1弾として、4.3Uサイズの筐体「HP Moonshot 1500シャーシ」と、サーバーモジュール「HP ProLiant Moonshot サーバー」、スイッチモジュールが発表された。

 1つのMoonshot 1500シャーシには、45枚のサーバーモジュール、2台のスイッチモジュールを収納できるが、サーバーモジュール1枚が、1つの独立したサーバーとして動作するため、45台のサーバーが4.3Uサイズに納められることになる。これは、標準の42Uサイズの19インチラックであれば、405サーバーが収納できるということだ。

 もっとも、最初に提供されるProLiant Moonshot サーバー自体は、サーバー向けAtomプロセッサであるAtom S1260(2.0GHz、2コア)、最大8GBメモリ、2.5型SATA HDD/SSD×1、Gigabit Ethernet(GbE)×2といったスペックで、それ自体が高い性能を持つわけではない。しかし、それほど高い性能が必要とされない、専用ホスティングサービスやWebサービスのフロントエンドなどでは十分なスペックを持っており、高集積・低コストなどの特徴は、これらの用途には非常に適しているといえる。

最初のサーバーモジュールである「HP ProLiant Moonshot サーバー」

 米HP HPエンタープライズ インダストリ・スタンダード・サーバー&ソフトウェア マーケティング担当副社長のJim Ganthier氏は、1Uのラック型サーバーと比べて、スペースを80%、消費電力を89%、配線ケーブルを97%、コストを77%それぞれ削減できるとのデータを紹介。「アプリケーション最適型の観点から、8倍の改善を達成。1ラック分のサーバーがこの筐体1つに収まっており、お客さまはより売り上げを増大しつつ、スペースもコストも複雑性も減らせる点がメリットだ」と、その価値を説明した。

米HP HPエンタープライズ インダストリ・スタンダード・サーバー&ソフトウェア マーケティング担当副社長のJim Ganthier氏
アプリケーションに最適化されたSoftware Defined Serverの観点から、今までにない効率化を達成できるとしている

 またMoonshot Systemの特徴は、用途に合わせたさまざまなモジュールが展開可能な点にある。もともとのコンセプトが、「アプリケーションに最適化されたSoftware Defined Serverの提供」であるため、今回提供されたProLiant Moonshot サーバー以外にも、AMD APUやARMプロセッサ、または特定用途に向けたARMベースのSoC(system-on-chip)の採用も可能になっているとのこと。

 日本HP サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリスタンダードサーバー製品企画部の中井大士部長は、「チップベンダーと協業し、さまざまなアプリケーションにフォーカスしたカートリッジを提供していける点も、HPならではの強みだ」と述べ、さまざまなサーバーモジュールを提供していくとした。

SoCの活用も見込まれる
さまざまなサーバーモジュールの提供が予定されているとのこと

 また、現在はサーバーモジュール1枚が1台のサーバーだが、将来的には1枚が4台のサーバーになっている超高密度のクアッドサーバーモジュールも提供が予定されており、これが実現すると、42Uラックでは実に1620サーバーが収納できるということになる。

かつてないサーバー密度を実現できる

 一方、「Moonshot 1500シャーシには、将来を見越してありとあらゆるネットワークのサポートや、広帯域のファブリック実装などが行われている」(中井部長)点も大きなポイント。今回は活用されていないが、モジュール間を直接接続可能な専用ファブリック(クラスタファブリック)や、最大3枚のモジュールを接続できるストレージファブリックが用意されているほか、内部Ethernet通信も10GbEをサポートするなど、さまざまな仕掛けが施されている。

ストレージファブリックを搭載しているので、今後提供予定のストレージモジュールと組み合わせれば、柔軟なストレージ活用も可能になる
クラスタファブリックも実装されている。HPCなどでの活用を見込むという

 日本HPでも今回発表された第1弾製品の訴求を行う一方で、こうした先々のロードマップを見据えて、ユーザー企業やパートナーと一緒に、国内での市場を育てていく考え。パートナーとしては、CTC、SCSK、東芝ソリューション、日立システムズ、日商エレなど14社が名乗りを上げている。

 日本HP エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 インダストリスタンダードサーバー事業本部の林良介事業部長は、「HP Moonshot Systemのようなハイパースケールサーバーは、(AmazonやGoogleのような)メガサービスプロバイダ向けだろうと思っていたが、自動車、電機、バイオ、通信など、たくさんの解析を行う業種や、画像・ゲームのコンテンツプロバイダなどでも、非常に大きな機会があることがわかった。当社では業種特化型営業を40名そろえるとともに、一緒に検証して市場を開拓しようというパートナーとも歩調をそろえて、日本での展開を図りたい。これを既存ビジネスに加えて第2の柱に育て、2015年には6万台の出荷を目指す」とした。

日本において活用が検討されている分野
日本HPとパートナーが協調して市場開拓を図る
日本HP エンタープライズインフラストラクチャー事業統括 インダストリスタンダードサーバー事業本部の林良介事業部長

(石井 一志)