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NTTドコモビジネス、秘密分散技術を利用しセキュアなデータ保全を実現クラウドストレージ「析秘STORAGE」
オンライン発表会をレポート
2025年7月3日 11:00
NTTドコモビジネス株式会社(旧社名:NTTコミュニケーションズ株式会社)は、秘密分散技術を利用し、地理的に離れた3拠点にデータを分散保存するクラウドストレージサービス「析秘(せきひ)STORAGE」を、7月2日から提供開始した。このサービスによって、医療を始めとするさまざまな分野でのBCP(事業継続計画)対策や機微なデータの保全を支援する。同日には、新たに「析秘STORAGE」を提供する市場背景やサービスの概要などについてオンライン発表会を開催した。
デジタル技術の進展にともない、世界で生成されるデータ量は急速に増加を続けており、企業や組織が保管・保全しなければならないデータ容量もさらに増加していくことが予測されている。また、この状況を受けて、国内のIaaS/PaaSクラウド基盤の市場規模は順調に成長していくことが見込まれており、バックアップ、災害対策などBCPとしてのクラウドサービス利用はプロセス製造業やサービス、流通業界を中心に一定のニーズがあると推測されている。
こうした市場環境の中で、企業が直面しているデータ保全に関わる課題について、NTTドコモビジネス ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートヘルスケア推進室 担当部長の櫻井陽一氏は、「企業のBCP対策への意識は高まりつつあり、南海トラフなどの自然災害やサイバー攻撃への備えとしてデータバックアップの整備が急務となっている。しかし、リソースや専門知識に課題があり、実際にBCPを策定できている企業はまだ少ないのが実情だ。また、ランサムウェアの被害が増大している製造業では、企業機密や重要データを保護するために、よりセキュアなバックアップが求められている。さらに医療分野においては、医療情報を安全に管理し、医療機関の事業継続に向けてストレージサービスでの数世代のバックアップが必要になると想定されている」と指摘する。
「そこで今回、これらの課題を解決する新たなソリューションとして、『析秘STRAGE』をリリースする。『析秘STRAGE』は、秘密分散技術を用い、機密性かつ可用性を確保しながらセキュアにデータ保全が可能なクラウドストレージサービスとなっている。また、クラウドを活用することで、データ保全のための面倒なシステム運用負荷を軽減することができる。コスト面についても、ダウンロードに課金されない料金体系と柔軟なストレージプランによって、リーズナブルでセキュアなバックアップを実現する」と、新サービス「析秘STRAGE」を提供する狙いを述べた。
「析秘STRAGE」では、秘密分散技術によって、地理的に分散された3環境(北海道・東京・大阪)にデータを保存することで、1拠点でデータ漏えいがあっても元のデータに戻すことができない高い機密性を実現。また、1拠点に激甚災害が発生しデータセンターごと使えなくなるようなことがあっても、継続してサービス提供を行い、残りの2拠点からデータを復元することが可能な、高い可用性も備えている。なお、NTTの秘密分散技術は、国際標準化機構(ISO)の国際標準として採択されているという。
また、顧客のニーズに合わせて柔軟に選べる4つのストレージプランを提供する。ストレージ種別として、オンライン処理に適した「標準モデル」とバックアップに適した「アーカイブモデル」を用意。そして、実装方式として、運用作業が不要で面倒なシステム運用を行わずに済む「フルクラウド方式」(分散保存先の3環境をすべてサービス側で提供)と、顧客の環境を一部活用する「ハイブリッド方式」(分散保存先の2環境をサービス側、1環境を顧客の環境で提供)を各モデルで選択することが可能となっている。
料金体系としては、一般的なクラウドストレージサービスではデータ保管容量の料金に加え、データ転送によって課金が発生するが、「析秘STRAGE」では、ストレージサイズのみで料金が決定し、データダウンロードや転送による課金は発生しない。これにより、保存データをある程度の頻度でダウンロードする場合、他社クラウドサービスと比較して安価に利用することが可能となる。
利用料金は、初期費用が110万円。月額費用は、標準モデルのフルクラウド方式が396円/GB、標準モデルのハイブリッド方式が374円/GB、アーカイブモデルのフルクラウド方式が4.29円/GB、アーカイブモデルのハイブリッド方式が2.97円/GB。
なお、「析秘STRAGE」の操作画面は、ファイルストレージのように、ドラッグアンドドロップなど直感的に操作可能なWebインターフェイスとなっており、Amazon S3互換のAPIも備えている。
同社では今後、「析秘STRAGE」のユーザビリティ向上を進めるとともに、析秘ブランドのほかサービスやSDPF for Healthcareとの連携を深め、顧客の機微な情報の安全な収集・保管・分析を一気通貫で支援していく考え。