大河原克行のキーマンウォッチ

2017年は富士通にとって「信」の1年になる 富士通・田中達也社長

PC事業は今後どうなるのか?

――テクノロジーソリューションをコア事業にとらえる一方で、ユビキタスソリューションおよびデバイスソリューションはコア事業から外れたことになります。分社化したPC事業の富士通クライアントコンピューティングはレノボとの提携を模索していますし、ニフティの個人向けインターネット事業も再編の検討対象となり、富士通テンもデンソーに株式を売却することを発表しました。携帯電話の富士通コネクテッドテクノロジーズを含めて、これらの事業は、今後、富士通のなかでどうとらえることになりますか。

 富士通は、メインフレームやシステムインテグレーション、ネットワーク、半導体など、さまざまな事業をやってきた経験があります。そのなかには、高い収益を得る事業もあり、それによって、さまざまな取り組みができ、垂直統合により製品やサービスを総合的に提供できたわけです。

 また、かつては、総合的な価値、総合的な提案が求められる時代でもありました。顧客から見れば、「富士通に頼めばなんでもやってくれる」ということが最適解でもあったわけです。しかし、これだけグローバル競争が激しくなり、サービスが重視されるなかで、果たして富士通は「何でも屋」でいいのかという疑問が出てきた。データを中心に考えたときに、データが入ってきて、それをセンターで蓄え、分析し、顧客に価値を戻していくことを、富士通の事業の中心に据えるべきだと判断したわけです。

 それぞれの事業において、過去にいいものがあったとしても、新たな時代に向けて、実際に形を変えないと、富士通は、顧客の要求に対応できなくなる。一方で、独立した事業体は、独立した環境のなかで、きちっと強さを追求してもらいたいと考えています。

 全体のなかのひとつの事業であり、ひとつの事業体としては利益があがらなくてもいいというような発想からは決別して、独自に利益を追求し、独自の強さを追求してもらいたい。そのなかで、コア事業とのシナジーを発揮できるものは、富士通との連携によって強さを発揮すればいいわけです。

テクノロジーソリューション事業に経営資源を集中させる

 独立した事業に対しては、そうした観点から自分たちの事業をもう一度見直してほしい、アイデアを出してほしいと、考えています。それが難しい事業であれば、さらに手の打ち方を考えていくことになります。

 例えば、カーナビの富士通テンは、餅は餅屋にお願いして、トヨタ自動車およびデンソーとの連携のなかで、われわれのセンター(コア)事業とのシナジーで特徴を出していくことになります。

 PC事業についても、信頼性や技術への挑戦という意味では、もともと非常にいいものは持っている。ブランドも大事にしたいのは確かですが、コモディティ化が進展した市場環境のなかで強くなるためには、まずは、部品の調達価格から改善する必要がある。その点で、レノボグループが持つ調達力は魅力であり、さまざまな検討のなかで、いまある課題を打開する道筋を探っているわけです。これまでとは違う形で体質を強化することで、富士通のセンター事業とのシナジーを高める方向を模索したいと思っています。

 レノボグループとの協議については、現時点では、具体的なことは言えませんが、一番いい形を模索したいと考えています。

ユビキタスの独立ビジネス化を図っているという