大河原克行のキーマンウォッチ
2017年は富士通にとって「信」の1年になる 富士通・田中達也社長
2016年12月14日 00:00
クラウド事業の強みはどこで発揮するのか?
――2016年10月29日の経営方針発表では、テクノロジーソリューション領域に投資を集中することをあらためて強調する一方で、「つながるサービス」として、クラウド、AI、ビッグデータ、IoT、そしてセキュリティに注力する姿勢を示しました。さらに、これによって、グローバル化を推進し、海外売上比率50%以上を目指すことも示しました。特に、これらの取り組みにおいて中核となるクラウド領域において、富士通は、どんな強みを発揮できると考えていますか。
クラウド基盤をOpenStackベースに移行するという点では、技術的な挑戦がありますが、むしろ、これによって、グローバルにクラウド事業を展開する上での強みが発揮できるようになると考えています。現在、社内システムを次世代クラウド基盤に移行するという社内実践を通じて、ノウハウを蓄積しており、これが他社にはない強みになると考えています。
一方で、投資が大規模なメガクラウドベンダーに対して、富士通の特徴をどう出していくのかといった点も明確にしていかなくてはなりません。インフラの部分では、OpenStackという強みを理解してもらえるが、これはあくまでも基盤であって、むしろ、どんな基盤にも乗るようにしてもらい、その上で富士通の特徴を出してほしいというのが、顧客目線からの要望だととらえています。顧客自身の事業を支援するクラウド環境が、世界中のどんな基盤の上でも動き、それを富士通がパートナーとして支援するという体制が求められています。
その点では、われわれが特徴を発揮できるのは、当然、PaaSやSaaSといった上位レイヤーであり、そのなかに富士通のAIである「Human Centric AI Zinrai」が組み込まれ、知的作業が自動化され、効率化が図れるといったような提案をしていくことになります。
インフラは提供しますが、クラウドインフラの整備はまだ道半ば。ここを強化する一方で、情報システム部門の支援に加え、現場のデジタルトランスフォーメーションに対応し、ここでもより強力に支援ができる体制を作っていきたいと考えています。
富士通の特徴は業務に深く入り、専門的に支援でき、そこに最新の技術を適用できる点です。日本の市場は、その点では先行していますが、アジア、米国、欧州では、「この分野は富士通に任せておけば大丈夫だ」という専門性をこれから作っていく必要があります。それを重ねることで、総合的にエンハンスしていく形を描きたいですね。
富士通のこれまでの経験こそが、メガクラウドベンダーに対抗する手段そのものになると考えています。