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VMwareを610億ドルで買収 ソフトウェアを強化するBroadcom

「21世紀のソフトウェアメインフレーム」

 この買収について、多くのアナリストは「理にかなう」と見ている。

 StifelのアナリストBrad Reback氏は「VMwareはBroadcomの下で収益性を改善し、SaaSモデルへの移行という圧力も軽減されるだろう」とMarketWatchに語っている。

 VMwareの会計年度2022年度の売上高は128億5000万ドル(前年比9.2%増)、純利益は18億2000万ドル(同11.5%減)で、売上高は伸びているが、利益は増えていない。Next Platformは、CAやSymantecなどが、Broadcom傘下に入って過去12カ月(LTM)の負債を減らしたことを挙げながら、「Tan氏はこの問題をどうやって修正するのかを熟知している」と評価する。

 Light Readingは、VMwareの事業状況を、同じくハイブリッドに商機を見いだすIBMのRed Hat買収と比較している。

 2017年から2021年までの売り上げの前年比成長率をみると、VMwareは13%、Red Hatは19%だ。「オープンソースへの高い需要もVMwareにはじゃまになっている」(Light Reading)という。両社ともコンテナオーケストレーション技術のKubernetesを支援しているが、「(VMwareには)Red Hatほどの熱意はなく、いまだに売り上げの4分の1がライセンスからだ」(同)とする。

 Broadcomは、買収後もVMwareの進めてきたハイブリッドクラウド、プライベートクラウドの流れを大きく変えるとは予想されていない。

 この観点から、少ないながら買収の効果を疑問視する声もある。元VMwareソリューションアーキテクトで、現在The CTO Advisorのプリンシパル、Keith Townsend氏は「メンテナンス抽出のみのモードにあるVMwareは、自身の領域で革新的ではない」とSiliconANGLEに述べている。

 実際、VMwareの真骨頂は最新テクノロジーよりも、企業のシステムに深く浸透している仮想マシンだ。同社のハイパーバイザー「ESXi」は、今でも安定した収入源となっている。Next Platformは、その地位を「21世紀のソフトウェアメインフレーム」と形容する。

 Financial Timesは、Tan氏が“光り輝く新製品(shiny new objects)”にリソースを注ぎ込むことを嫌い、コストを重視する経営者だと指摘。「彼の戦略は、常に企業の中核部分への投資を2倍、3倍に増やすことだ」との関係者の言葉を紹介する。

 VMwareの戦略を予測する上でポイントになりそうだ。