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故人との対話 「デジタル不死」ビジネスのいま

 「親しかった故人といま一度話したい」。これは人間の古くから願望だ。この切ない願いがAIによって実現されようとしている。すでにビジネス段階に入ったスタートアップも出ている。だが、「死者の復活」は微妙な問題で、課題も多い。

故人へのインタビュー

 3月末に放送されたCBSの長寿ドキュメンタリー「60minits」。キャスターのLesley Stahl氏が老人にインタビューしている。

Stahl氏:「あなたは、どこに住んでいたのですか?」
老人:「私は、Sokolow Podlaskiというポーランドの小さな町で生まれました」

 老人は第二次世界大戦中のホロコースト(ナチスによる大虐殺)の生き残りだ。プロジェクターが投影した映像で、実は4年前に亡くなっている。しかし、そこにいるかのように、Stahl氏の質問に答えている。

 これは、ジェノサイド(民族大量虐殺)に関する証言を収集・記録する非営利団体USC Shoah Foundationが製作した「故人との対話を可能にする」システムだ。質問を音声認識し、録画済みの回答のデータベースから最も適切なものを選んで再生する。

 技術面を担当したロサンゼルスのスタートアップStoryFileは、昨秋、同じ技術を利用したコンシューマー向けサービスを開始した。「StoryFile Life」という名称で、スマートフォンやWeb経由で、故人とやり取りできるクラウドサービスだ。

 まず自分の「デジタル人格」を残しておきたいユーザーが、用意された質問に答えて動画を保存する。そして、その死後、家族や友人がアプリで対話する。質問数33までの無料版と、1600超の質問に対応するプレミアム版(499ドル1回払い)がある。

 また昨年末には、カリフォルニア州のスタートアップHereAfter AIが、同様の仕組みのチャットボットサービスを開始して評判になった。スマートフォンスピーカーからも利用でき、料金は年間39ドルからだ。