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故人との対話 「デジタル不死」ビジネスのいま

故人のデータの取り扱い

 故人のデジタル人格を作成するには、新たな法的、倫理的問題が発生する。この問題を取り上げた2020年4月のReutersの記事で、専門家は「倫理的な意味でパンドラの箱を開けるようなものだ」と指摘している。

 例えば、「故人のデータへのアクセス権」「その情報からデジタル人格を作る権利」「名前や声、肖像の使用権」はどのように扱われるのか。また、それらがマネタイズされたときの収益は誰のものになるか、など。従来は想定していなかったものも多い。

 StoryFileやHereAfter AIのサービスは、デジタル人格をつくる本人が理解して契約することが前提だ。その上でインタビューに答え、完成したデジタル人格も自分で確認できる。

 このため、プライバシーや、データへのアクセスなどの問題はクリアできると考えられる。しかし、残された者が作成する場合、そうはいかない。

 故人のデータの扱いについての規制はなく、データにアクセスできる他の者が死者をデジタル復活させることはありうるという。公開されているSNSの投稿から、その人のような反応をするチャットボットを作って、生きているように見せかけることも、理論上は可能だ。

 「世界のほとんどの国で、故人のデータは保護されていない」。バーミンガム大学アストン校メディア・プライバシー法上級講師のEdina Harbinja氏はこう解説する。

 「つまり、死者に似せたアバターやアンドロイドをつくることを妨げる法律は何もないのだ」

 状況は、いまもあまり変わっていない。