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OpenAIがロボットから撤退 AGIへの遠い道のり

ロボット・スタートアップの不振

 深層学習で急速に進化したAIで、ロボット産業への期待も高まった。だが、このところ、ロボットを専門とする企業の後退の話がよく聞かれる。

 MIT(マサチューセッツ工科大学)から生まれたロボット企業Bostan Dynamicsは、歩行ロボットで一躍有名となり、Googleの傘下に入ったが、2017年にソフトバンクグループに売却された。「Spot」などの製品を出し、着実に成果を上げているように見えたが、今年、さらにHyundaiに約11億ドルで売却された。ソフトバンクグループは最近、「Pepper」の製造も停止したとも報じられている。

 ほかにも、人間と共働するロボットを開発するRethink Roboticsや、自動運転トラックのStarsky Robotなど、注目のロボット企業が身売りや閉鎖した例は、少なくない。

 背景には、ロボット開発には多くの資金が必要な一方、業績が思わしくないという事情がある。すごいテクノロジーを持つはずなのに、いつまでも利益が出す、投資家が嫌気してしまうのだ。

 新しいロボット技術を見た人は、「人間を超えた」という錯覚に陥ってしまうと言う研究者もいる。MIT Biomimetic Robotics LaboratoryのSangbae Kim氏は、NAVERの研究開発子会社NAVER LABSのブログに寄稿。こう指摘している。

 「私たちは、1回のロボットのデモを見て、AIが何でもできると思う傾向がある」。うまくバック転している人を見ると、その人が他のスポーツも得意だろうと判断する。人間の場合、それは正しいが、ロボットの場合、限られたタスクのためだけに訓練され、技を見せていることを見落としてしまう。Kim氏はこれを、「ロボットを見るときの“認知バイアス”」と呼んでいる。

 ロボットはまだ、皆が思うほどには、進化しておらず、AGIにははるかに遠いというのが実際のところだ。AI業界の重鎮の中にはAGIの実現自体が不可能と主張する人もいる。

 それでもOpenAIは、AGIを強く信じているようだ。Zaremba氏はインタビューの中で、こうも語っている。「原理的には、人間を超えるようなAIは不可避と言える。それは時間の問題なのだ」