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OpenAIがロボットから撤退 AGIへの遠い道のり

撤退の理由

 OpenAIは、なぜロボットから全面撤退したのだろう。Zaremba氏はインタビューで、チーム解散の理由を「データがふんだんにある領域で進歩が続いているが、ロボット工学には、そのことが結局、足かせになっていた」と述べている。

 OpenAIは 「汎用人工知能(AGI)が全ての人類に利益をもたらすことを保証する」ことをミッションに掲げ、AGIの開発を目指している。AGIとは、特定のタスクだけでなく、人間ができるようなさまざまなタスクを実行できる“人に近い”AIを言う。一般にイメージされる人間のようなロボットだ。

 しかし、「AGIをつくるという観点からみると、実はいくつかの要素が欠けていた」(Zaremba氏)という。言語処理モデルで画期的な成果を上げた効果的なデータが、ロボット工学では「存在しなかった」というのだ。

 ADR技術は、ルービックキューブ・ロボット発表時、「実世界の正確なモデルを持つことから解放され、シミュレーションで学んだニューラルネットワークを実世界に応用可能になった」と説明されていた。これによってロボット自らが、データを通じて教師なしで実世界モデルを学び、自身で成長することが期待された。

 撤退は、それでもなお、実世界のモデルを構築するには効率が悪すぎる、あるいは、できないという結論に達したことを意味する。

 ロボットが、実世界の状態や空間を“認識”するためには、まだまだ人間の手を借りなければならない。周囲の状態や構造を人間が定義して、ようやく簡単なタスクをこなすことができる段階だ。ロボットに関しては、深層学習の応用が意外に進んでいないとする研究者もいる。

 Zaremba氏は「決断は、もちろん悲しくもあったが、とても満足している」と語っている。