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OpenAIがロボットから撤退 AGIへの遠い道のり

 OpenAIは、先ごろ、ロボット部門を解散したことを明らかにした。自然言語処理モデルGPTシリーズで世界を驚かせた非営利団体のOpenAIは、ロボットの分野でも成果を上げていた。しかし、昨年のうちに、静かに撤退していたという。最先端を走っていたOpenAIの決断の背景は――。

OpenAIのロボット

 OpenAIの共同創業者のWojciech Zaremba氏は、機械学習スタートアップWeights & Biasesの6月4日付のポッドキャストに出演。インタビューの中盤で、「実は」と切り出し、「数年間、ロボット工学の仕事をしていたが、最近になってOpenAIでの焦点が変わり、ロボット工学チームを解散してしまった」と述べた。

 この話は、すぐには広まらなかったが、7月16日付でVentureBeatが報じて、広く知られることとなった。OpenAIの広報担当はVentureBeatの取材に対し、「昨年10月、これ以上のロボット研究は行わず、代わりに他のプロジェクトにチームを集中させることを決めた」と説明した。

 さらに「AIとその能力が急速に進歩しているため、人間のフィードバックを利用した強化学習など、他のアプローチの方が強化学習の研究をより早く進められることが分かった」と述べている。

 OpenAIは、GPT-3や「DALL-E」のような自然言語処理の応用技術で有名だが、ロボットの分野でも着実に進歩してきた。2019年10月に発表した「ルービックキューブ・ロボット」のデモ動画は印象的だった。

 片手だけのロボットにルービックキューブを載せると、器用に指を操りながらキューブの各面の色をそろえる。使用したロボットハードウェアは、15年前からあったもので、ソフトウェアの改良で実現したという。

 採用された「ADR」(Automatic Domain Randomization)は深層強化学習の手法だ。まず、一定の狭い(ランダム化されていない)条件下でタスクを与え、パフォーマンスが十分なレベルに達したら、条件を広げる(ランダム化量が増加する)。これによってロボットは、簡単な環境から、段階的に複雑な環境を学習し、より高度なタスクをこなせるよう“成長”する。

 ルービックキューブ・ロボットは、教師なし強化学習でロボットのソフトウェアに新たな地平を切り開いたと言える。