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立ちはだかる多くの難関 NVIDIAのArm買収

 NVIDIAが英Arm Holdingsを400億ドルでソフトバンクから買収すると発表して約7カ月がたった。一体となれば半導体業界の勢力地図を塗り替えるともと言われる。それだけに外部にクリアすべき多くの難関が控えており、実現は次第に不透明さを増している。

固唾をのんで見守る半導体業界

 GPU製造大手のNVIDIAと、さまざまな分野で使われるCPUコアをライセンスしているArmの組み合わせは大きなインパクトを与える。Armは、自身が製造せず、チップの設計とソフトウェアを多くのメーカーにライセンスすることで「半導体業界のスイス」とも呼ばれてきたが、製造大手のNVIDIAと一緒になれば、その位置も変わりそうだ。

 NVIDIAは発表で「Armは引き続きオープンなライセンスモデルの運用を行うとともに、世界中の顧客に対して、 Armの成功の基盤である中立性を維持する」と説明した。だが、同社のライバルやライセンス先企業の多くは、技術へのアクセスの制限や利用コストの上昇などを懸案している。

 Bloombergは今年2月、消息筋の情報として、Google、Microsoft、Qualcommが、独禁当局に介入を求めていると伝えた。うち少なくとも1社は取引自体の中止まで望んでいるという。

 反対を声高に叫ぶ者は意外に少ない。だが市場調査・コンサル会社FeibusTechのアナリスト兼社長のMike Feibus氏は「Armへの依存度があまりに高いため、声を上げられない」のだとVentureBeatへの寄稿で指摘している。

 Armは大きなエコシステムを構築しているが、その中にいる「何百ものライセンシー、開発者、その他の人々の運命は、Armプラットフォームと切っても切れない関係にある。買収を受け入れ、買収後も関係を維持するしかない」とFeibus氏は言う。

 そして、多くが自分たちの「存続の危機」と認識しているものの、「(もし、買収が承認された場合の)NVIDIAからの報復を恐れ、記録に残るような発言を控えているのだ」と解説する。

 そして業界は、関係当局の動きを注視している。