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米国最大の石油パイプライン停止 「RaaS」ビジネスが暗躍

 米国最大の石油パイプライン「Colonial Pipeline」がサイバー攻撃で停止した。インフラを直撃し、ガソリン供給が停止するという大きな被害を与えた。実行したのは「DarkSide」という組織で、ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS」(Ransomware-as-a-Service)プラットフォームの一つだ。

米国最大のパイプラインが停止

 Colonial Pipelineは、メキシコ湾からニュージャージー州まで米東海岸を貫く延長約5500マイル(約8851キロ)に達し、東海岸で消費される石油の45%を供給している。このエネルギーの生命線が5月7日、ランサムウェアのため運用を停止した。

 これを受け、ガソリン価格は一時、過去6年半で最高値となり、連邦自動車運送安全局(FMCSA)は非常事態宣言を出してパニック回避を図った。中部大西洋岸ではガソリンが枯渇し、ジョージア州では11日にはガソリン不足になったという。

 ちょうどワクチン接種が進み、ロックダウンから平常に戻りつつある状況が、事態をさらに深刻化させた格好だ。

 FBI(連邦捜査局)は発生から2日後の5月9日、原因が、DarkSideのランサムウェアであるとの短い声明を発表した。セキュリティ企業のCybereasonなどによると、DarkSideは、2020年8月にロシア言語のハッキングフォーラムに現れた組織という。

 特徴は、RaaSプラットフォームを構築し、他の犯罪グループにランサムウェアを貸し出すサービスを提供していることだ。利用する犯罪グループは「アフィリエイト」と呼ばれる。

 DarkSideの宣伝によると、そのRaaSプラットフォームは「市場最速で暗号化できる上、WindowsでもLinuxでも対応」し、最新版の「DarkSide 2.0」では電話機能も追加、被害者(企業)に電話もできるようになった。アフィリエイトは、特定の被害者向けにツールをある程度カスタマイズもできるという。

 Bloombergなどは、Colonialへの攻撃では100GB近くの機密情報が暗号化されたと伝えた。元の要求額は明らかになっていないが、17日になって、同社が約500万ドルの身代金を支払ったことが一斉に報じられている。