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立ちはだかる多くの難関 NVIDIAのArm買収

半導体は安全保障の問題へ

 英デジタル・文化・メディア・スポーツ省(「文化省」、デジタル経済も所管)は4月19日、大臣名で買収に介入すると発表。独禁法に加え、安全保障面からも本件を検討するようCMAに指示した。発表では「国家安全保障の利益が関係する、あるいはその可能性があると考える」と述べている。

 CMAは7月30日までに報告書をまとめ、大臣に提出する。同省はこれを受けて態度を検討するが、「公共の利益または競争上の懸念」があると考えられる場合、取引の阻止や、事業の一部の分離命令などもありうるという。

 この種の案件で安全保障上の問題まで取り沙汰された例はあまりない。しかし、最近の米中対立、半導体チップの供給不足などが大きな影響を与え、半導体は安全保障の重要な要素になっている。

 その中国だが、Arm Chinaでは、経営を巡って昨年からCEOと取締役会が対立。利益相反を理由に取締役会から解任されたAllen Wu CEOが後任の幹部を訴えて、トップの座にとどまったまま訴訟合戦が続いている。

 Arm Chinaの株式の過半数は、同国の投資家コンソーシアムなどが保有しており、Wu氏は深センの地元当局からの支援も受けているという。

 中国中央政府はこの争いでの立場を表明していないが、米国のNVIDIAがArmのチップ設計を支配することは望まないだろう。何らかの形で介入する可能性があるとみられている。

 NVIDIAは発表から約18カ月後(2022年3月)の買収手続完了を目指しているが、アナリストの多くは、そのまま実現する可能性は低いと考えているようだ。認められる場合も、NVIDIAが何らか大きな譲歩を迫られるというというのが大方の見方だが、それが何なのかは、まだ見えていない。