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Azureが「S/4HANA」の優先クラウドに SAPとMicrosoftが提携強化

SAPとMicrosoftの関係

 SAPは今年1月に組織再編を発表した。クラウド移行とともに、AI、IoT、ブロックチェーンなどのテクノロジーに注力すると説明したが、同時に、4400人をレイオフすることにもなった。

 長年、CEOとして同社を率いてきたBill McDermott氏は、このとき「新しい経済がSAPを最も必要とするところに、人、そしてフォーカスを移す」と説明していた。そのMcDermott氏も9カ月後の10月10日、CEO退任を発表している。

 同社には、クラウド(サブスクリプションとサポート)、ソフトウェアライセンス、ソフトウェアサポート(共にオンプレミス)、サービス(コンサルティングなど)――の4つの事業セグメントがあり、このところクラウドの成長が大きい。

 Microsoftとの提携と同じ日に発表した決算報告(2019年第3四半期)によると、クラウドの売り上げは37%増で、クラウド売り上げの総利益率は5ポイント以上増えたという。クラウドの新規受注は前年同期比39%増。このうち今回のMicrosoftとの提携は18ポイントを占めると報告している。

 だが、なぜ、パブリッククラウドの最大手AWSではなく、Microsoftを優先パートナーにエ選んだのだろう?

 提携発表の10日前に二頭体制の共同CEOに就任したばかりのJennifer Morgan氏は、プレスリリースで「SAPとMicrosoftが力を合わせることで2つの業界リーダーの連携を保証し、顧客は自信をもって、効率的にインテリジェント企業に移行してゆける」と述べている。

 同氏は、さらに突っ込んだ説明として、SAPの大手顧客の多くが「最大のワークロードをAzureに移すことを選んでいたり、それを計画しているから」とBusiness Insiderに語っている。

 SAPとMicrosoftは業務アプリケーション分野では競合関係にある。だが、これまでもSAPのERPとMicrosoftの「Office」との連携(Duet)など、要所要所では手を組んできた。

 2017年には、SAPのマネージドクラウドサービスとAzureで提携を結んでおり、今回も双方のメリットを考えた上での動きだと解釈できる。

 両社は2018年、フロントの顧客データでAdobe Systemsと共に「Open Data Initiative」を立ち上げ、顧客データの相互運用を進めることを明らかにしている。

 では、どちらがより得をすることになるのだろうか――。