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「汎用人工知能」目指すOpenAI Microsoftと提携

「AI研究をリードする」

 OpenAIは、人類全体のためにAIを開発するだけでなく、研究のリーダーシップをとるとも宣言している。その実力を示したのが、オンライン戦略ゲーム「Dota 2」でプレーし、人間を次々に打ち破った「OpenAI Five」というAIプレーヤーだ。

 Dota 2は、マルチプレーヤーのオンライン対戦ゲームで、各5人の2チームに分かれて見方プレーヤーが協力しながら相手の本拠地を破壊する。OpenAIのAIは2017年8月、1対1で人間のプロに勝利したあと、翌2018年6月には5対5のチーム戦でアマチュアの人間チームを下した。さらに今年4月、世界トッププロのチームにも勝利している。Dota 2は、チェスや囲碁よりも行動・移動の選択肢が多く、複雑な要素がある。

 ゲームだけではない。今年初めに発表した言語モデル「GPT-2」は、例文を与えると、その主題とトーンに従ったテキストを自動で生成。人間のものと区別できないほどの滑らかな文章を作ることもできるという。

 このGPT-2について、OpenAIは最小限のバージョンだけをリリースし、モデルの詳細は公開しなかった。「フェイクニュースを大量に生成するといった悪用の恐れがある」との理由だが、「公開と共有」を基本とするOpenAIの理念に反するのではないかとの批判が上がった。Ars Technicaなどが伝えている。

 そして今回のMicrosoftとの提携では、また別の角度からの批判が出ている。

 Fortuneは、OpenAIが設立当時、「経済的利益を生み出す必要性に制約されることなく人類全体に利益をもたらす可能性が最も高い方法」を目標としていたと指摘しながら、もともとの「反企業的哲学」は、どこへ行ったのかと疑問を投げかける。

 この哲学は、Musk氏の「特定の企業がAGIの知的財産を所有すべきではない」という理念から出たものだ。しかし、Microsoftの提携を見る限り、OpenAIの使命が「微妙」になっているのではないか、とFortuneは問う。そして「その過程でMicrosoftは、いくばくかのもうけを得るかもしれない」と皮肉る。

 Fortuneは、提携に批判的なカリフォルニア大学バークレー校のBen Recht教授(機械学習アルゴリズム)のコメントを紹介しているが、相当に辛らつだ。Recht教授は言う。「Elon MuskとSam Altmanが、非営利で人類の利益のために何かをつくろうとしていると考えた者は、皆、思い違いをしていたのだ」「これはシリコンバレーの奇妙な虚栄心プロジェクトだ」

 とはいえ、OpenAIにも事情がある。