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ゲーム業界に寄せるクラウドの波 Microsoftとソニーが提携

ゲーム専用機はなくならない

 メディアの多くは、特にソニーの動きに着目した。Windsor氏は「ソニーには大きな動きだ。同社は歴史的に、手遅れになるまで劣勢技術にコミットし続ける企業だが、(インハウスという)劣勢なソリューションを早期に捨ててAzureに移るという今回の決断は、同社の企業文化から見て、大きな変化と言える」と評価する。

 なお、Bloombergによると、今回の提携に向けてソニーとMicrosoftは昨年から話し合いを続けてきたが、主導したのはPlayStation事業の幹部ではなく、本社の上級幹部だったという。「ゲーム部門の社員には寝耳に水だった」とBloombergは伝えている。

 この決断は未来を見据えたものだが、クラウドゲーミング市場がメジャーになるまでには、なお時間を要するようだ。IHS Markitの予想では、クラウドゲーミング市場は2018年の3億8700万ドルから5年後に25億ドルに成長するが、ゲーム市場全体からみると、その時点での2%にも満たないという。「ゲーム専用機の需要は当面続く」(Harding-Rolls氏)との展望だ。

 ソニーも、Microsoftも、それぞれ次世代のゲームコンソールの開発を進めている。ソニーは提携発表後の5月21日の経営方針説明会でプレイステーション次世代機(通称PS5)のデモを披露し、高性能ぶりをアピールした。

 日経新聞などによると、吉田社長は、コンソールはゲーム市場全体から見れば「ニッチな市場」との認識を示し、「長い目で見るとクラウド化やストリーミングの流れが来る」と述べ、Microsoftとの連携を進めていく考えを示したという。

 もう一つ気になるのがライバルの動きだ。中でも任天堂がどう出るのかに注目が集まっている。

 GameDailyは「ソニーの動きに続くのはどこか?」としながら、任天堂が台湾のクラウドゲーミング企業Ubitusと提携したことを紹介。「Ubitusとの提携によって、任天堂が日本以外でも展開を始める可能性はある」とする。そして、UbitusがMicrosoftと提携して、Azureのデータセンターを利用していることを挙げ、任天堂がAzureを採用する可能性も指摘する。

 今の時点で、クラウドゲーミング市場の勝敗を占うのはとても無理だが、現時点では、Microsoftの存在感が次第に大きくなっていると言えるだろう。