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ゲーム業界に寄せるクラウドの波 Microsoftとソニーが提携

先行しながらも脅威を感じているソニー

 クラウドゲーミングで、ソニーは先行している。2012年に3億8000万ドルでGaikaiを買収し、2015年にはOnLiveの知財を取得するなどクラウド型ゲームサービスを手中に入れてきた。同年米国で開始した「PlayStation Now」のユーザー数は70万人に達しているという。

 IHS Markitによると、ソニーの2018年末のクラウドゲーム市場シェアは36%。同社のゲーム担当アナリストPiers Harding-Rolls氏は、クラウドゲーミングは発生段階としながら、「ソニーは、PlayStation Nowで事実上の最良の選択肢になっている」とGameDailyにコメントしている。

 一方でPlayStation Nowの課題も指摘されている。Bloombergは「(PlayStation Nowは)インハウスでホスティングしているため、接続性が安定しないという不満が生まれている」と報じている。ソニーが、インフラを自分たちで構築・メンテナンスすることの限界を感じたことが、今回の判断に至ったとの見方も浮上する。

 Piers-Harding Rolls氏は「(ソニーは以前)サービスの展開にあたって慎重だったが、この12カ月はユーザー獲得に積極的になっている」とする。また「カタログコンテンツがサービスの中心ながらクラウドゲーミングの経験を積んできており、将来に向けていま準備を始めているのだろう。これがMicrosoftとの提携につながった」と解説。加えて、今後はPS Nowの新しいコンテンツが課題とした。

 この両巨人の提携について、ほとんどのメディアが双方にメリットがあると見ている。そんな中でモバイルやゲームなどコンシューマー市場に明るいRichard Windsor氏は、Forbesへの寄稿で「より大きなメリットを得るのはMicrosoft」と分析した。

 ソニーがAzureベースでストリーミングサービスを提供することは、Xboxの訴求力という点ではマイナスになるが、「クラウドとAIがMicrosoftの他の部門にもたらすメリットは、そのマイナスを上回る」からだ。

 提携のもう一つの柱であるAIとイメージングについても、AIはソニーがMicrosoftのAIを活用し、イメージングではソニーのイメージングセンサーをMicrosoftが活用すると考えられている。Windsor氏は「Microsoftは最高水準のセンサーを利用できる」と提携の効果を解説する。

 Bloombergも「Microsoftはソニーよりも得るものが多い」とみる。Microsoftは今年3月、ゲーム開発とクラウドホスティングに関する新サービスを発表しており、これに大手ソニーの獲得が弾みをつけるとの見方だ。