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“クラウド第2章”への賭け IBMのRed Hat買収

「大きな賭けに出るしかなかった」

 大胆な大型買収だが、攻めばかりとは言えないようだ。Rometty氏就任からの約7年間、IBMの業績は決して良かったとは言えない。

 Wall Street Journalは、同社の売上高が2011年をピークとして下降線をたどり、2017年第4四半期から2018年第2四半期には、実に22四半期ぶりの増収を記録したものの、直近の第3四半期で、また減収になったことを指摘。「Rometty氏は自身のキャリアにおいて、IBMがこれまでやったことのない大型買収という大きな賭けに出た」と述べている。

 さらに同紙は、「社運をかけた戦い」(クラウド専門の投資企業Madrona Venturesのアナリスト)や、「(Rometty氏と取締役会は)劇的なことをするしかなかった」(元IBM幹部)などのコメントを紹介。過去の買収が必ずしも成功とは言えなかったとしながらも、「Red Hatの高利益率のソフトウェア事業は安定した売り上げをもたらすだろう」と予想する。

 他方、オープンソース界は冷静に受け止めているようだ。ZDNetは、買収直後のRed Hat社員から「カルチャーの衝突が恐ろしい」「オープンソース企業の仕事を探そう」などの声もあるものの、「Microsoftに買収された方が良かった、とほぼ全員が言っている」と話している者もいると伝えている。

 Red HatはIBMのハイブリッドクラウド事業部の下、独立した事業部として運営され、Red Hatのブランドや本社、ビジネスに変更はないと両社は説明している。Red Hatのプレジデント兼CEOのJim Whitehurst氏はIBMのシニアマネジメントチームに加わり、Red Hatのオープンなガバナンスモデルを始めオープンソースでの活動についても変更はないと約束している。

 ArsTechnicaは、「われわれはオープンソース企業ではない。オープンソース開発モデルを持つエンタープライズソフトウェア企業だ」(Red Hatの製品とテクノロジー担当プレジデントのPaul Cornier氏)という言葉を紹介。今回の買収では「OracleのSun Microsystems買収の時のようにはならないだろう」と論評した。

 OracleはSunのオープンソース技術を活用しなかったが、「IBMはクラウドプレーヤーとしてのポジション確立にあたってオープンソースを重視している」と見られるからだ。なお、Red Hatは買収発表の2日後に、RHELの最新版と、コミュニティ版の「Fedora」の最新版をリリースしている。そして、IBMと一緒になるメリットとして、スケールなどを挙げている。

 買収手続きの完了は1年後の予定だ。賭けの効果が出るまでには、すこし時間がありそうだ。