クラウド&データセンター完全ガイド:インタビュー

クラウドネットワーク管理運用ツール「Extreme CloudIQ」を柱に製品を展開、エクストリームネットワークの日本戦略

 コロナ禍において、ネットワークの重要性はさらに高まっているが、一方でクラウドサービスとオンプレミスの併用など、運用管理の面で複雑性も増している。こうした状況に対して、ネットワーク機器ベンダーの側でもさまざまなソリューションを提供している。今回は、さまざまなネットワークベンダーを買収し、多様なソリューションを提供しているExtreme Networks(以下、エクストリームネットワークス)の概要と戦略について、2021年7月に日本法人の執行役員社長に就任した林田直樹氏に話を伺った。

さまざまなネットワーク企業の買収で規模と技術を拡大

エクストリームネットワークス 日本法人 執行役員社長の林田直樹氏

林田氏:私は元々日本の商社に勤務していましたが、1999年からポリコムやネットギア、ターンバーグ、フォーステンネットワーク、バラクーダネットワークスといったグローバル企業の日本法人を率いてきまして、エクストリームネットワークスは2021年7月に日本法人の執行役員社長に就任しました。

 まず、エクストリームネットワークスはどういう会社かというと、設立が1996年で、売り上げが10億ドル、従業員が約3000人で、NASDAQに上場しています。本社はアメリカのサンノゼになります。

 創業から25年を経過した企業ですが、最初の10年ぐらいは業績も絶好調でして、ネットワーク業界に長くお勤めの方は覚えておられるかもしれませんが、日本でも多くのサービスプロバイダーに製品を納めさせていただいたかと思います。

 ただその後、グローバルで業績が悪化し、日本法人も一時撤退をしていた時期などもありましたが、2013年頃からはさまざまな企業の買収・投資により、ビジネスを拡大してきました。2013年にEnterasys Networks、2016年にはZEBRA、2017年にはAvayaとBROCADEといった買収を進めることでスケールを拡大した上で、2019年にはAerohiveという無線LANのクラウドAPのベンダー、2021年にはInfovista社IpanemaのSD-WANビジネス事業を買収し、クラウドネットワーキング企業として変革してきたというのが、ここ8年の流れになります。

 さらに、これまで買収してきた企業も過去にさまざま企業を買収しており、こうしたさまざまなテクノロジーカンパニーの技術を集約した会社が、エクストリームネットワークスであると考えていただければよいかと思います。

2013年から多くのネットワーク企業を買収
買収したさまざまなテクノロジー企業の技術を集約

サブスクリプションビジネスの拡大、パートナー企業向けのセールスオートメーション、サービスプロバイダー向けビジネスの再構築が3本の柱に

林田氏:エクストリームネットワークスの日本戦略としては、「サブスクリプションビジネスの拡大」「Sales Automation(EQQ)の実現」「サービスプロバイダー向けビジネスの再構築」を3本の柱としています。

 サブスクリプションビジネスの拡大については、ネットワーク管理運用ツール「ExtremeCloud IQ」をキードライバーとして、アプライアンス製品も併売していくことが戦略の柱になっています。

 Sales Automation(EQQ)は、パートナー企業向けのサイトになり、顧客企業が求める構成をベースに見積もりを取ることができ、そこから発注もできます。このサイトをグローバルで立ち上げたのは2020年ですが、日本も含めてこのSales Automationに注力しています。

 サービスプロバイダー向けビジネス、キャリア向けビジネスの再構築については、専門の組織を日本法人に設けまして、そこから拡販とサポートに注力していくということで、この3つを日本戦略の3本柱としています。

 まとめますと、Extreme Networksの強みとしては、クラウド環境での簡単でスマートなネットワーク管理運用ツールを提供していることと、買収企業も含めた開発陣と特許を持つことがあります。さらに、これは顧客満足度の高さにもつながるのですが、サポート部隊を完全社内化していることで、迅速な障害対応が可能で、社内にナレッジが溜まるためプロフェッショナリズムも高くなるということですね。こうした点を他社との差別化として、お客様に提供させていただいています。

エクストリームネットワーク日本戦略の3本柱
Sales Automation(EQQ)のサンプル画面

「Extreme CloudIQ」による運用効率化を多くのユーザーに

クラウド環境での簡単でスマートなネットワーク管理運用ツールを提供する「Extreme CloudIQ」

 さきほど、戦略の1つとしても挙げたExtreme CloudIQは、クラウド環境で簡単に使えるネットワーク運用管理ツールで、日本語化も完了していまして、既に提供させていただいています。メリットとしては、キーワードとして「エフォートレス」という言い方をしていますが、ネットワーク機器の管理運用を非常にシンプルに、機器の展開から拡張まで行えるという点になります。エクストリームネットワークスには買収した企業の製品も含めてさまざまな製品群がありますが、それらの機器で一貫して同じ管理ツールが使えるというのも特徴になります。

 現在、クラウドネイティブにより企業に求められる環境は多様化していますが、そうした環境にも対応できます。AWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドにも加えて、プライベートクラウド、オンプレミスにも展開でき、アクセスポイントやスイッチ、ルーターを管理できます。

クラウドネイティブで企業に求められる多様な環境に対応

 ネットワークのベンダーですが、セキュリティにも注力していまして、ISO 27000シリーズなどのトリプル認証を受けており、EUのGDPRにも完全に準拠できるようにする機能を搭載しています。

 Extreme CloudIQのライセンスメニューとしては、最も基本的な「Extreme Connect」は無料で利用でき、これだけでもさまざまなデバイス管理が行えます。さらに、マルチテナントのインフラ管理が行える「Extreme Pilot」というメニューを提供していまして、現在ではさらにその上位メニューとなる「Extreme Co-Pilot」というメニューをパブリックベータとして提供しています。

 Extreme Co-Pilotは、機械学習をネットワークの運用管理に利用できるメニューとなっていて、各種トラブルへの対応などを、機械学習によるインサイトとインテリジェンスでサポートしていく、運転支援という位置付けになります。

 さらにロードマップとしては、最上位の「Extreme Auto-Pilot」というメニューも予定しまして、これはその名の通り自動運転を可能にするメニューになり、AIによるフルオートメーション管理を可能にする機能を提供してきます。

 また、こうしたツールを提供するとともに、機器を導入した後にネットワークを変更したいといった場合でも柔軟に対応でき、大きな追加費用も発生しないというのが、エクストリームネットワークス製品の優位性になります。

Extreme CloudIQのライセンスサービスメニュー

――クラウド管理ツールの必要性は、大規模なネットワークを運用している企業であれば必要性が分かりやすいのですが、それよりも小さな規模の企業ではどうなのでしょうか。

林田氏:クラウド管理ツールはむしろ、中小規模のお客様の方が使い勝手がいいという面もあります。簡単にネットワークを管理できるということで、中小規模の企業ではクラウド管理ツールへの関心が高いですね。

 エクストリームネットワークスの製品は、過去はむしろCLI、コマンドラインの使い勝手が優れているという評価でした。そうしたCLIでの操作に慣れているインテグレーターのような方々についても、クラウド管理ツールの良さをエンドユーザーさんにお伝えしていただけるかというのがポイントかなと思ってます。

――そうしたクラウド管理ツールの良さを実感できるのは、具体的にはどのような製品が分かりやすいでしょうか。

林田氏:切り口としては無線LANのアクセスポイントが一番分かりやすいと思います。有線のネットワークと違って、無線LANのアクセスポイントは不安定になることがあります。それを自動最適化する機能などは、Extreme CloudIQの機能の中でも分かりやすく、メリットを感じられると思います。

 さらに、そうして管理ツールに慣れていただいた方が、スイッチなどの製品も同じツールで管理できるという点は、製品販売においても優位点になると考えています。

――新型コロナウイルスの影響はどうなのでしょうか。リモートワークが進み、オフィススペースも縮小傾向にあるといった話もありますが。

林田氏:今後の状況は分かりませんが、いずれにしても、例えば学校や教室の中でWi-Fiを使うという環境は引き続き必要になると思います。ホテルのような宿泊施設、リテールストアなどでも、ネットワークを必要とするアプリケーションや機器はさらに増えていますし、引き続き市場は伸びています。こうしたニーズに対応する、クラウド管理対応のアクセスポイントの重要性はさらに高まっていると思います。

 ただ、無線LANは市場が伸びている分、競合するベンダーの数も多いです。我々としては、きっかけとしては無線LANが重要ですが、管理ツールの利便性をアピールしていくことで、さらにそれ以外のネットワーク機器も販売していくことが重要だと思います。

――データセンターネットワーク向け製品についてはどうでしょうか。

林田氏:データセンター向け、特にエンタープライズ向けの製品ということですと、やはりマネージドサービスでしょうか。データセンター事業者がいろいろなサービスを提供するための機器提供ということになります。こちらについても、さまざまな企業とマネージドサービス分野での協業について話を進めています。マネージドサービスをやりたいという事業者は非常に多いですね。

――企業のクラウドシフトが進むことで、オンプレミス製品への影響は。

林田氏:確かにクラウドシフトは進んでいますが、オンプレミスに戻るという動きもゼロではありません。一部の企業などでは、クラウドを導入してみたけれど、やはりオンプレミスの方が使い勝手が良かったというケースもあると聞きます。

 そうした点を考えると、全体の流れとしてはクラウド化が進んでいますが、プライベートクラウドが今後増えることも考えられます。そうなると我々にとってはチャンスですし、プライベートクラウド向けのさまざまな製品を提案できます。いずれにしても、現状としては、無線LAN製品などから、エクストリームネットワークスの製品を利用していただく裾野を広げていくことが重要な状況であると思っています。