特集

リニューアルしたシャープグループの法人向けショールーム「3X3 Hub」をレポートする

 シャープのIoT開発部門を母体として設立された株式会社AIoTクラウドからは、現在、アルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」、設備点検DXサービス「WIZIoT(ウィジオ)」が提供されている。これらのサービスは、クラウドサービスならではの強みを生かして、リリース後もさまざまな機能追加が行われてきた。

 一方でシャープ本体でも、法人向け事業として、スマートフォンをはじめとする各種端末やプリンターなどの機器、スマートオフィスサービス「COCORO OFFICE」、議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」など、さまざまな製品・サービスを自社のブランドで提供しており、グループ全体で法人向け事業に取り組んでいる。

 そのシャープでは、東京・港区芝浦に設置している法人向けショールームを「3X3 Hub SHARP Interactive Showroom」(以下、3X3 Hub)として2024年11月にリニューアルしたが、同所ではこれらグループの製品・サービスを展示しており、実際に体験することもできるようになっているという。

 クラウドWatchでは、2025年2月に行われた内覧会で、この「3X3 Hub」を取り上げたが、紹介できたのはごく一部にとどまっていた。今回は同所をあらためて取材することができたので、その展示全般について紹介しよう。

「Smawrt Office」「Smart Retail」「Smart Logistics」の3つのゾーンに分けてソリューションを提案

 シャープの「3X3 Hub」は、2024年11月に、「BtoBショールーム」から名前も新たにリニューアルされてオープンした。ショールームでの説明によると、製品だけでなく、その製品を使ったソリューションやサービスを提案するのがリニューアルの意図だという。

ショールームの入口
エントランス部分

 「3X3」の名前は、「3つのゾーン」と「3つの『X』」の掛け合わせという意味から来ている。3つのゾーンとは「Smawrt Office(オフィス)」「Smart Retail(店舗、小売)」「Smart Logistics(物流)」で、ショールーム内をそれぞれのゾーンに分けてソリューションを展示している。

 また「3つの『X』」は、「DX(Digital Transformation、デジタル変革)」「CX(Commuication Transformation、経営資源の可視化とデータに基づく変革)」「GX(Green Transformation、脱炭素社会を目指す変革)」を指す。

 そして、これらの掛け合わせによる製品やソリューションが集結する「Hub(ハブ)」となるというコンセプトだ。

エントランス部分のLEDディスプレイに表示された「3X3 Hub」の説明(横に長いので写真を2枚に分けた)

 エントランス部分では、こうしたコンセプトが294型(比率は32:9)のLEDディスプレイ(液晶ではなくLEDで表示するディスプレイ)で紹介されていた。

 このLEDディスプレイ自体も展示の一つだ。リニューアル以前は液晶12面によるマルチディスプレイだったが、LEDディスプレイになり、継ぎ目なしでストレスなく表示できるようになり、配線もすっきりとしたという。

294型LEDディスプレイの紹介
294型LEDディスプレイの背面。以前の液晶ディスプレイから置き換え、配線がとてもすっきりしている

 エントランスからショールームに入った、「Smart Office」ゾーンの入口部分でも、LEDディスプレイについて展示されている。

 LEDディスプレイの画面は複数のモジュールから成り、そのモジュールには複数のピクセルカード(実際にLEDが並んだデバイス)が貼り合わされて構成される。液晶では一部分が故障するとパネル全体を換えないといけないが、LEDディスプレイではピクセルカード単位で交換ができ、メンテナンスしやすくなっている。なお、ピクセルカードは強い磁石でセットされているだけなので、簡単に交換できるという。

LEDディスプレイのモジュール(Eシリーズ)
LEDディスプレイのモジュール(FCシリーズ)
吸着ツールを使ってモジュールからピクセルカードを外すところ

Smart Office:リモート会議ソリューションや、エッジAIによる議事録作成支援ソリューションなどを展示

 Smart Officeゾーンでは、これからのオフィスのあり方をふまえ、働きやすい環境を構築するオフィスソリューションが展示されている。

Smart Officeゾーン

 Smart Officeゾーンの「Discussion Hub」コーナーでは、リモート会議ソリューションを展示している。360度カメラで参加者を撮影し、電子黒板型の大型タッチディスプレイ「BIG PAD」で情報を共有する。BIG PADは水平にまで角度を変えられるため、例えば、設計図を囲んで議論するのにも使えるとのことだ。

Smart Officeゾーンの「Discussion Hub」コーナー。直立した360度カメラや、電子黒板型の大型タッチディスプレイ「BIG PAD」などが設置されている
BIG PADは水平にまで角度を変えられる

 「Board Meeting Space」コーナーでは、リアルでの会議のソリューションを展示している。ここでは、2月18日に発表された、エッジAIによる議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」をデモしている。会話内容を話者認識しながら文字起こしをして、約1500字ごとに自動要約し、最終的に議事録をWordやPDFの形式で作成する。クラウドサービスではなくローカルで動作するため、情報を外部に送信する必要がないのも特徴である。

「Board Meeting Space」コーナー。大きな画面の向かって右下に、議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」がある
エッジAIによる議事録作成支援ソリューション「eAssistant Minutes」

 Smart Officeゾーンではそのほか、スマートオフィスサービス「COCORO OFFICE」や、情報セキュリティ機器、複合機などが展示されている。

スマートオフィスサービス「COCORO OFFICE」の展示
情報セキュリティ機器の展示
複合機の展示

Smart Retail:電子ペーパーや液晶によるサイネージから、POS、バックオフィスまで

 「Smart Retail」ゾーンでは、サイネージからバックオフィスソリューションまで、リテール向けのソリューションが展示されている。

Smart Retailゾーン

 店頭などに看板やポスターとして掲示するサイネージディスプレイとしては、まずカラーおよびモノクロの電子ペーパーディスプレイが展示されていた。

 電子ペーパーディスプレイは電気がなくても表示し続けるのが特徴で、展示されているものはすべて電源がつながっていない状態で置かれている。コンテンツを変えるときにだけ、モバイルバッテリーなどの電源をつなぐ。

電子ペーパーディスプレイ

 同じく店頭サイネージ用の液晶ディスプレイのラインアップも展示されていた。ショールームで、店舗に入れるためにサイズを確認できる。また、サイネージはディスプレイだけでなくコンテンツも大事なため、シャープの配信ソフトを使ってコンテンツを配信するデモも行っている。

店頭用の液晶ディスプレイのラインナップ
サイズを確認できる

 POSターミナルも展示されている。セルフレジなど、さまざまな形態に対して、柔軟にシステムを構築して対応できるという。

 また、ハンディターミナル端末や、AQUOSスマートフォン、Zebra Technologiesの業務用タブレットなどによるソリューションも展示していた。

POSターミナル
ハンディターミナルなどのソリューション

 店舗のバックオフィス向けのソリューションも展示されている。55型×4面液晶のディスプレイでは、店舗に関するさまざまな情報や映像をまとめて表示するところをデモしている。

55型×4面液晶のディスプレイで店舗の情報や映像を表示

 AIoTクラウドのアルコールチェック管理サービス「スリーゼロ」も、バックオフィス向けソリューションとして展示とデモが行われている。

 スリーゼロは、白ナンバーの業務用車両でもアルコール検知器によるアルコールチェックが義務化されたことに対応するためのソリューションだ。アルコール検出器がデータ通信による数値読み出しに対応していなかったとしても、スマートフォンカメラで撮影した画像をクラウドに送り、AIの文字認識によって数値をデータ化できる。なお、対応する検知器は130機種以上にのぼるという。

 また、検査している人をインカメラで撮影することでなりすましを防ぐ機能や、送信直後に電話で点呼を実施する機能なども備えている。

検知器の結果表示画面を撮影しクラウドに送信すると、アルコール検査の結果がクラウド上でデータ化される

Smart Logistics:スマートグラスによる支援から、設備点検、コインパーキング、熱中症対策まで

 Smart Logisticsゾーンでは、輸送の自動化や作業の省力化など、ファクトリーソリューションを展示している。

Smart Logisticsゾーン

 スマートグラスを使ったピッキングシステムは、作業員が倉庫にたくさんある物の中から対象の物を間違えることなく取り出せるよう、スマートグラスの映像で指示するものだ。

スマートグラスを使ったピッキングシステム

 熱中症対策のアイススラリー冷蔵庫も展示されている。アイススラリーとは、液体と微細な氷が混合した状態のこと。氷の冷たさと液体の流動性をあわせ持つため、アイススラリーの飲料は体の内部に入って効率よく体を冷却できる。

 このアイススラリー冷蔵庫では、飲料を過冷却状態の液体にしておき、強く振るなどの衝撃を与えると固体化が起こりアイススラリーとなる。6月以降にレンタル販売予定。

アイススラリー冷蔵庫
過冷却状態の飲料に衝撃を与えるとアイススラリーとなる

 ここでは、AIoTクラウドの「WIZIoT」も展示されている。点検のために、工場のさまざまな機器に付いているメーターなどの計器類を見て回るのを助けるクラウドサービスだ。

 計器とそこに付けられたQRコードをスマートフォンで撮影すると、クラウドで表示を認識して値をデータ化する。またそこで、異音や異臭、水漏れなどの点検項目も入力できる。

 これにより、人間が定期的に工場を巡回して計器類を確認し、紙に記録して、後からPCに入力するという作業を助け、負担軽減やヒューマンエラー防止につなげる。さらに、日報の作成やデータの分析まで支援する。

WIZIoTの展示
クラウドでデータ化されたところ

 コインパーキングシステムも、模型自動車を用いてデモしている。

 コインパーキングにおいて、ロック板レス、チケットレス、ゲートレスの3つが特徴。ロック板のかわりに、在車センサーとネットワークカメラで入庫を管理する。そのため、乗り越え事故などのトラブルがなく、パーキングのオーナーにも工事が楽になるというメリットがある。

 精算機も、シャープのPOSソリューションで使われている技術を応用し、タッチディスプレイでの操作や、多彩なキャッシュレス払いに対応する。

コインパーキングシステムの展示
模型自動車でデモ。左のパーキング部分にある黄色い半球状のものが、ロック板がわりの在車センサー
タッチディスプレイで操作するキャッシュレス精算機

 そのほか、倉庫や工場などで無人で物を運ぶ自動搬送装置(AGV)も展示されている。シャープの工場で培った技術を応用したもので、受注生産で提供している。

自動搬送装置(AGV)