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UiPath創業者が語る、エージェンティックオートメーションと今後の自動化の世界

 2005年にルーマニアで創業し、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)プラットフォームを提供してきたUiPath。同社のプラットフォームは、業務を自動化し効率化を向上させるものだ。ここ数年で一気に生成AIが普及し、業務の自動化・効率化があらためて注目されるようになっているが、その影響やUiPathの方向性について、米UiPathの創業者で最高経営責任者を務めるダニエル・ディネス(Daniel Dines)氏が語った。

米UiPath 創業者 兼 最高経営責任者 ダニエル・ディネス氏

RPAの限界と生成AIの登場

 ディネス氏はまず、RPAについて、「RPAは人間のコンピュータ操作を模倣する技術だ。UiPathのソフトウェアロボットは、人間が実行する操作を正確に模倣することができる。この技術は、反復的なタスクや明確な命令に基づく構造化された作業に適している」と語る。

 ただ、RPAには限界があるという。それは、非構造化コンテンツが理解できない点だ。数年前に登場した生成AIは、非構造化コンテンツにも対応し、その点ではRPAの弱点を補っている。しかし、生成AIの最大の課題は信頼性が低いことだとディネス氏は指摘する。「生成AIのチャットボットに質問をすると、回答を得ることができるが、その回答を検証する必要がある。強力な機能だが、ビジネスのやり方を根本的に変えるものではない」(ディネス氏)。

 そこでディネス氏は、「真の変革は、生成AIの力を自律的な方法で提供することで可能になる。それを実現するのが、エージェンティックオートメーションだ」と語る。

 ディネス氏は、ロボットを左脳、エージェントを右脳に例えている。左脳は構造的で論理的、効率を重視し、システム化された処理を得意とする。一方の右脳は、創造的で直感的、適応力が高く、あいまいさにも対応する。「エージェントは、LLMによって提供される脳と、環境を視覚化し、エンタープライズデータを取得してLLMに提供し、脳がシステム上で行動できるようにするロボットの組み合わせだ。世界を理解する能力と、情報を取得しその世界に対して行動する能力を組み合わせることで、非常に強力なテクノロジーになる」とディネス氏は言う。

 UiPathのプラットフォームは、エージェンティックAIを提供するのに最適だとディネス氏は主張する。「ロボットやエージェントは、さまざまなビジネスアプリケーションにアクセスする必要があるため、UiPathではエージェントをさまざまなビジネスアプリケーションと統合できるようにしてきた。Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce、ServiceNowなど、あらゆるビジネスアプリケーションに接続することが可能だ。また、UiPathのエージェントは、ガバナンスとセキュリティを制御するテクノロジーをプラットフォームに搭載している」と、ディネス氏は同社プラットフォームの強みを語る。

 エージェントの重要な要素のひとつに、長い非構造化コンテンツを理解することがある。企業には自然言語を含む文書が多く存在するが、エージェントは非常に長い非構造化文書から情報を検索、理解、発見することが可能だ。また、ルールでは必ずしも表現できない意思決定が必要なこともあるが、これには専門知識と過去の知識が求められる。

 「意思決定に至るまでのプロセスは、エージェントが人とペアになって行う。エージェントの提案に対し、人間が承認するかどうかを決定し、承認した場合はエージェントに戻り、次へと進む。エージェントを使用することで、複雑で可変的なワークフローが構築できる。鍵となるのは、エージェント、ロボット、人間をつなぎ、オーケストレーションすることで、これは当社のプラットフォームが提供できる非常にユニークなものだ」(ディネス氏)。

Autopilot for EveryoneとAutomation Healing

 ディネス氏は、現在プレビュー版として提供している「Autopilot for Everyone」についても語っている。「Autopilot for Everyoneは、ビジネスユーザーの効率性と生産性を向上させるものだ。これによりユーザーは、あらゆる種類の文書から情報を抽出できるようになる。その情報を使ってほかのロボットを呼び出すことも可能だ」という。

 例えば、メールボックスにある請求書を処理する必要がある場合、請求書をクリックすると、その情報を処理するロボットを実行するオプションが表示される。フォームなどのアプリケーションに移動し、請求書の情報を貼り付けることも可能だ。「Autopilot for Everyoneを使用することで、何度もアプリケーションを切り替えてコピー&ペーストする必要がなくなる。すべての情報を抽出して別の場所に移動し、貼り付けることができるためだ。これはUiPathだけが提供できる機能だ」とディネス氏は説明する。

 米国では、大手クライアントでこのテクノロジーの採用が急速に進んでいるという。ディネス氏は、「日本のクライアントとも協力し、あらゆるユーザーに提供することを目指している。このテクノロジーが、日常業務にさらなるインテリジェンスをもたらし、作業量を削減する」としている。

 またディネス氏は、「Automation Healing」という機能も紹介した。これは、アプリケーションの変更を自動的に修正する機能で、問題が発生した際には管理者に問題の原因や修正内容が通知されるという。自らトラブルシューティングやデバッグをする必要がないため、開発者の修正コストやメンテナンスコストを大幅に削減することが可能だ。この機能も現在プレビュー段階となっている。

 自動化、そしてエージェンティックオートメーションの今後についてディネス氏は、「おそらく最初は、エージェントの決定すべてに人間が関与する。しかし、エージェントは人間のフィードバックからも学習し始める。人間がエージェントの決定を検証するためだ。そのデータに基づいてエージェントを再トレーニングすることで、エージェントはさらに優れた機能を発揮するようになる。最終的には、多くの作業がエージェントによって行われ、本当に複雑な作業だけが人間に任されるようになるだろう」と語った。