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UiPath、エージェンティックオートメーションを実現する基盤「UiPath Platform for Agentic Automation」を提供

 UiPath株式会社は12日、エージェンティックオートメーションを実現する初のエンタープライズ向けプラットフォーム「UiPath Platform for Agentic Automation」を、国内市場で提供すると発表した。

 中核となるのは、カスタマイズエージェントの構築を行う「UiPath Agent Builder」と、エージェンティックオーケストレーションを行う「UiPath Maestro」の2つの製品であり、これらによって、AIエージェントとロボット、人を、ひとつのインテリジェントシステムに統合。オープンでセキュアなオーケストレーションを核としながら、拡張性と柔軟性、コンプライアンスを備えたAIエージェントを提供する。

「UiPath Agent Builder」と「UiPath Maestro」を提供

 UiPath プロダクトマーケティング部の夏目健部長は、「エージェンティックオートメーションは、信頼できるRPAやAIモデル、そして人間の専門知識を統合したワークフローで、人、ロボット、AIエージェントが相乗的に連携してプロセスを最適化し、企業の効率を高めることができる」としたほか、「UiPath Platform for Agentic Automationでは、オープンなエージェンティックエコシステムを実現しており、LangChain、Anthropic、Microsoftをはじめとするサードパーティーのエージェントフレームワークと連携し、高度なマルチエージェントシステムをサポートしている」と、特徴をアピールした。

UiPath プロダクトマーケティング部の夏目健部長

 UiPath Agent Builderは、エージェントのプロトタイプを迅速に作成し、必要に応じてカスタマイズすることが可能であり、技術に精通したビジネスプロフェッショナルと経験豊富なプログラマーの双方が、複雑なビジネス要件や進化する企業ニーズに適応しながら、高度な自動化を容易に作成できるという。

 「プロンプトで役割を定義するとともに、エージェントがアクションを起こす際に、どのアプリケーションと連携するのかを設定。RAGなどの技術を活用することで、LLMが学習していない要素も組み込むことができる。ビジネスのなかで安心して、安定利用ができる信頼性が高いAIエージェントを構築できる」とした。

UiPath Agent Builder

 マーケットプレイスに公開されているシナリオに沿ったテンプレートを活用できるほか、ユーザーがスクラッチでAIエージェントを開発する方法も選択できる。また、開発の際にも、すでに市場投入されているAutopilotを活用することで、自然言語によってエージェントの構築や改善が可能になる。Autopilotでは、ユーザーが構築したエージェントの精度についても、スコアで表示。改善方法に関するアドバイスも行うという。

UiPath Agent Builderでは、Autopilotを活用することで自然言語によるエージェントの構築や改善が可能になる
ユーザーが構築したエージェントの精度についてもスコアで表示してくれる

 なお、UiPath Agent Builderは2024年11月に製品発表を行っており、2024年末から、同社最大規模となるプライベートプレビューを実施。全世界で4000人以上が登録し、150社以上の企業で先行利用あるいはPoCを行い、2200以上のエージェントが作成されたという。ユースケースは、財務、人事、営業、法務、サプライチェーン管理、カスタマーサポート、ITと幅広い業務に渡っており、業種別では、銀行、保険、医療、製造、通信などで先行利用されたとした。

 日本のユーザー企業では、パーソルワークスイッチコンサルティング、パナソニックハウジングソリューションズなどが参加。「日本のUiPathと対話を行いながら、日本のビジネスにおけるユースケースを模索した」という。また、パートナー企業では、アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ、TISが参加している。

 「フィードバックをもとに、さまざまな機能を追加してきた。RPAと同様に、多くの業務、業種、シナリオで、エージェンティックオートメーションの活用が見込まれている」とした。

 一方のUiPath Maestroは、AIエージェントとロボット、人を連携したプロセスのデザインや実装、運用、可視化を可能にするもので、プラットフォームの中核となる新しいオーケストレーションレイヤーと位置づけている。

 継続的にパフォーマンスを向上させるために、内蔵したプロセスインテリジェンスとKPIモニタリングによって、複雑なビジネスプロセスをエンドトゥエンドで自動化し、モデル化および最適化を実現する。また、一元管理の監視機能も搭載している。

 また、UiPath Platform for Agentic Automationを構成する機能として、自動化ワークフローの自己修復機能である「Healing Agent」、APIの統合およびデータ操作に最適化されたワークフローである「API Workflows」(2025年6月からパブリックプレビューを提供予定)、LAM(Large Action Model)の活用により、UIの変化に対応して画面要素を認識する機能の「Agentic UI Automation」(プライベートプレビューを提供中)、ドキュメントコミュニケーションから必要な情報の特定と抽出を行う「UiPath IXP」(2025年7月までに提供予定)、ノーコードのデータモデリングとストレージ機能を提供し、UiPathのデータと、外部のデータストアや各種業務アプリケーション、データベースと統合する「UiPath Data Fabric」(パブリックプレビューを提供中)も発表した。

 さらに、UiPath Platform for Agentic Automationは、UiPathの公式サイト(https://www.uipath.com/ja)で無料トライアルを提供することも発表している。

UiPath Platform for Agentic Automationを構成する機能

「Act 1」と「Act 2」の能力を組み合わせることで真の自動化が実現する

 今回の説明会にあわせて、米UiPath製品戦略担当バイスプレジデントのフェイラン・ハオ氏が来日し、同社の基本戦略について説明した。

米UiPath 製品戦略担当バイスプレジデントのフェイラン・ハオ氏

 ハオ氏は、UiPathの最初の10年間を「Act 1」と表現。UIの自動化に特化した企業としてスタートし、ドキュメント処理を含むプロセスをオーケストレーションに注力して、エンドトゥエンドのオートメーションプラットフォームを構築してきた経緯を紹介した。

 そして、「この取り組みのなかで、顧客の活動を自動化する支援から、ワークフォースの自動化へと進化し、大規模なプロセスをオーケストレーションできるようにした。また、顧客が新たな自動化機会を発見できるディスカバリープラットフォームも開発し、自社開発のAIモデルを統合し、顧客が文書をプロセスに組み込めるようにした。これによって、顧客の自動化は、十分に実現されたと感じていた」と振り返る。

Act 1

 しかし2022年以降、市場に生成AIが登場したことで、この技術をどう役立たせるかを考えるようになったという。

 「初期の代表的な製品であるChat GPTを例にとると、なにかをする方法を尋ねることはできるが、実際になにかを実行させるのは困難であった。しかし、この技術が進化するのに伴い、自然言語処理だけでなく、アクションを実行し、それを組み合わせて実行するAIエージェントが生まれ、AIエージェント、ロボット、人が一緒になり、プロセス全体を自動化することが重要になってきた。これが『Act 2』のフェーズとなり、エージェンティックオートメーションの時代になる」と定義した。

 その上で、ハオ氏は、「Act 1とAct 2は対立するものではなく、Act2の登場によって、Act1が無意味なものになるわけでもない」と指摘。「Act 1とAct 2の能力を組み合わせることで、真の自動化が実現する」と位置づけた。

Act 1とAct 2の能力を組み合わせることで、真の自動化が実現する

 UiPathが目指しているエージェンティックオートメーションは、人が実行する多くのプロセスを自動化するものであり、クリックやタイピングの自動化から、ロボットによるワークフローを用いたオーケストレーション、ドキュメント処理までを行い、エージェントが考え、ロボットが実行し、人間が支援する未来を実現することになるという。

 ハオ氏は、「PoCでは、クールなエージェントAIが動いているが、その多くが信頼性やセキュリティが十分ではなく、エンタープライズ企業には適していない」とし、「UiPathでは、エージェンティックオートメーションを支える基盤として、セキュリティ、ガバナンス、AIの信頼性に重点を置いている。独立して動作し、動的な意思決定を行うエンタープライズエージェントを実現するとともに、ロボットとエージェント、人をつなぎ、ビジネス成果を生み出すことができる。また、Act 1で培った最高クラスのオートメーションを活用し、信頼できるクラウド環境で提供しているのもUiPathの差別化ポイントになる」と述べた。

 なお、UiPathは世界100カ国以上に展開し、1万社以上のエンタープライズ企業に採用され、300万人が利用。7000社以上のビジネスパートナーがいることを紹介。世界最高クラスとするUIおよびAPIの自動化だけでなく、セキュアでガバナンスが効いた柔軟性を持ったデプロイメントを実現。生成AIやNLP、IDP、機械学習などの技術も活用していることを強調。こうした実績が、UiPathならではのエージェンティックオートメーションにつながっていることを示した。

UiPathの実績

AIエージェントの適用範囲は広く、プラットフォーム型で提供することが望ましい

 また説明会では、IDCジャパン シニアリサーチディレクター データアンドアナリティクスの眞鍋敬氏が、同社の最新調査をもとに、AIエージェントを取り巻く動向について触れた。

 眞鍋氏は、「いまは自律型AIエージェント開発の転換点に立っている。ワークフローの自動化を行う独立したAIアシスタントから、より複雑なワークフローを解決するために、自律型AIエージェントの統合体へと移行し、企業の運営方法やイノベーションの方法を変革していく分岐点にある。人間とAIの関係を見直す必要もあるだろう」と指摘する。

 その一方、「アジア太平洋地域の企業を対象にした調査では、エージェントへの支出は、ほかの支出を削減してでも行うとの回答が49%にも達している。また、日本のCxOは、エージェント型AIに対して、生産性の向上、顧客体験の向上に期待しており、より複雑な業務の実行にメリットがあると考えている。だが、自律動作によるセキュリティの脆弱性の問題、プライバシーの侵害、悪意のある利用者にある誤用を、リスクとしてとらえている」と述べた。

 さらに、「AIエージェントの適用範囲は広い。そのため、プラットフォーム型で提供することが望ましいと考えている。また、利用者は、RPAを導入した時と同様に、エージェントの可観測性を確保した運用体制と組織体制を敷くべきである。さらに、ビジネスリーダーは、人とAIの関係や役割分担を明確化すること必要がある」と提言した。

IDCジャパン シニアリサーチディレクター データアンドアナリティクスの眞鍋敬氏