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富士通とマイクロソフトの技術の結晶、「低カリウムレタス」は優しい味がした

試食会レポート

 富士通とMicrosoftが4月に発表したIoT(モノのインターネット)分野における協業。それは、Windows 8.1 Proベースの富士通デバイスや、Microsoft Azureを活用したクラウドサービス「FUJITSU Cloud A5 for Microsoft Azure」のIoTサービスなどを活用し、製造業のプロセスに変革を起こすというものだ。

 協業の第一弾として富士通は、以前半導体工場だった福島県会津若松市の工場内のクリーンルームにて、「FUJITSU Sustainability Solution 環境経営ダッシュボード」とIoTプラットフォーム、A5 for Microsoft Azure、Windowsタブレットを駆使し、洗わずに食べられる野菜シリーズ「キレイヤサイ」を栽培している。両社のテクノロジーにより、野菜の品質向上の実現と、システム統合や機能性の向上を図るための試みだという。

クリーンルームにてレタスを栽培する様子
2社の協業により実現する全体最適化

 両社は29日、この協業に関するイベントを日本マイクロソフトにて開催。Azureを活用したIoTサービスで誕生したレタスの試食会を行った。

 今回の試食会で提供されたレタスは、レタス特有の苦みやえぐみを抑えた「低カリウムレタス」。通常のレタスと比べ、カリウム含有量が80%カットされているという。富士通ホーム&オフィスサービス 取締役 兼 先端農業事業部長 兼 先端農業事業部 営業部長の中澤健一氏は、「苦みが少なく甘みが感じられるため味の評価は高く、野菜嫌いの子どもたちにも好評だ。また、腎臓が悪くカリウム制限を受けている人でも食べられることから、医療関係者にも評価してもらっている」と話す。

 また、クリーンルームで栽培された同レタスは付着している雑菌が少なく農薬も使用していないため、洗わずそのまま食べられるほか、腐敗の進行が遅く、収穫後2週間以上も日持ちするという。中澤氏によると「実際には40~50日後でも食べられる。そのことを証明するため、クルーズ客船『飛鳥II』にて世界旅行のお供としてレタスを活用してもらっている」とのことだ。

 クリーンルームでは、温度や湿度、二酸化炭素、気流、照明、養液などの状況をセンシング技術で収集して分析、管理している。この栽培法はすでに2年前より実施していたというが、今回の2社の協業により「セカンドイノベーションが実現する」と、富士通 統合商品戦略本部 ビジネスアプリケーション推進統括部 環境ソリューション推進部 シニアマネージャーの及川洋光氏は言う。

 「これまでの仕組みは、現場におけるオペレーションの最適化が実現するものだった。今回の新たなソリューションでは、経営層が生産や経営の全体最適化を目指し、現場から集めたデータを環境経営ダッシュボードにて見える化するものとなっている」(及川氏)

 例えば、レタスのカリウム含有量のばらつきを把握するために機械学習や分析技術を活用し、さまざまなパラメーターを組み合わせて相関性を把握するといったことがAzureにて実現するという。「人手を使うと長時間かかることが、Azureに標準搭載された技術で容易に処理できる」と及川氏は説明。また、「Azureは分析している時のみ課金されるため、試しに分析したい場合は非常に安価に利用できる」としている。

 こうした技術は、「最終的には自動車や電機機器などの工場の全体最適化にも応用できる」と及川氏は述べ、実際にそのような分野での商談も増えているとした。

中澤健一氏
及川洋光氏
マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏が試食会前日にレタスを食している様子もスライドで紹介された

 なお、今回の試食会は日本マイクロソフトの社員食堂「One Microsoft Cafe」内にて行われ、マイクロソフト社員もレタスを試食した。低カリウムレタスは、病院内の売店18店舗を含む全国88店舗で販売されているほか、ネット販売として、楽天、富士通のネット店舗「FOM Direct」、医療食などを取り扱う「ハートフルフード」でも取り扱っている。

試食会で提供されたレタス。そのまま食しても苦みがなく、実際に甘みが感じられるやさしい味だった

藤本 京子