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SAPジャパン、クラウド事業に本格参入~「SAPはクラウド提供に最適な企業」と安斎社長

SAPジャパン 代表取締役社長の安斎富太郎氏
SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長の馬場渉氏

 SAPジャパンは6月5日、クラウド事業に本格参入することを発表した。これに伴い、同社は4月にクラウドファースト事業本部を新設している。

 SAPジャパン 代表取締役社長の安斎富太郎氏は、いま日本でクラウド事業に本格参入する意義について「スピード感を持ってリアルタイム経営を行い事業効率を上げるには、クラウドが重要となる。企業の中にはさまざまな制約が存在するが、まずクラウドで動かすことを考えればさまざまな制約から解放され、イノベーションも加速する」と話す。

 SAPは2007年にクラウド事業を開始していたが、「当時のわれわれのクラウド事業は、スタンフォード大学で失敗事例としてケーススタディに取り上げられている。当時は本質を見誤っていた」と、SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長の馬場渉氏は過去の事業が失敗だったことを認める。しかしその後、「2010年に現在の新経営陣がSAPを率いるようになり、オンプレミスの企業からクラウド企業へと変革すべくさまざまな企業を買収した」と、同社が変わったことを説明。また、「クラウドの本質はITのコンシューマライゼーションにあるが、この数年間で注力してきたモバイルやインメモリデータベースHANAなどの事業は、システムを使う人ではなくその先にいる個人のことを考えており、まさにコンシューマライゼーションに焦点を当てている」として、クラウドの再定義はできているとしている。

 具体的なクラウド事業戦略としては、これまで中小中堅企業向けとしていたクラウドを、すべての規模の企業を対象とすること、提供地域も新興国中心だったが、日本を含め全地域を対象とすることなど、対象を広げることがひとつ。また、これまでのクラウドソリューションは中堅企業向けの全社統合型スイートだったが、今後はさまざまな企業に向けて「People」「Money」「Customer」「Suppliers」という4領域にて業務別ソリューションを提供するとしている。

 「Poeple」の領域では、SuccessFactorが提供する人事管理ソリューションを中心に提供する。「Money」の領域では、「SAP Cloud Financials」(旧SAP Financials OnDemand)、「SAP Cloud for Travel」(旧SAP Travel OnDemand)、「SAP Business ByDesign」などの財務ソリューションを夏以降に日本で順次提供する。「Customer」の領域では、「SAP Cloud for Sales」、「SAP Cloud for Service」、「SAP Cloud for Marketing」、「SAP Cloud for Customer」(旧SAP Customer OnDemand)などの顧客対応ソリューションを、同じく夏以降に順次提供する。「Suppliers」の領域では、Aribaによるクラウドベースの調達および請求処理アプリケーションと、トレーディングコミュニティを統合して提供する。

 「企業全体でシステムを導入すると何年もかかることがあるが、部門単位、業務単位では、半年以内に実行して効果を出すようなスピード感が求められる。そこで、業務部門が個別に素早く導入し、スピード対応できるような4つのカテゴリ別ソリューションを提供する」と馬場氏は説明する。

 ほかにも、SAPのクラウドポートフォリオとして、マネージドクラウド製品の「SAP HANA Enterprise Cloud」、HANAをベースに開発したクラウドプラットフォーム「SAP HANA Cloud Platform」、ソーシャルプラットフォームの「SAP Jam」を提供する。

 安斎氏は、「SAPはクラウドを提供するにあたって最適な企業になった」と話す。「完全にクラウドネイティブな企業であったSuccessFactorsと一緒になったことに加え、オンプレミス企業からクラウド企業へと移行したAribaの成功事例もある。このような両方のDNAを持った企業はほかにない。また、HANAのように単一でオープンなプラットフォーム持った企業もいない」と安斎氏は述べ、SAPの強みを強調した。

今後はさまざまな企業に向けて「People」「Money」「Customer」「Suppliers」という4領域にて業務別ソリューションを提供
SAPクラウド事業の強み

(沙倉 芽生)