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「VDIには、もうSANやNASはいらない」~日商エレ、米Nutanixの仮想化アプライアンスを本格展開

Interop 2012で製品展示中

 日商エレクトロニクス株式会社(以下、日商エレ)は12日、米Nutanixの仮想化対応アプライアンス「Nutanix Complete Cluster」を本格的に取り扱うと発表した。すでに多くの実績があるVDI(仮想デスクトップ)への適用を始め、プライベートクラウド、Hadoop環境などへの訴求を図る考えで、企業へ積極的に販売を進めていく。

 なお、6月13日から15日まで、千葉県・幕張メッセで開催されている「Interop 2012」の展示会場にて、製品の展示も行われている。

製品はInterop 2012の展示会場に展示されている

必要に応じたスケールアウトが可能なオールインワンアプライアンス

Nutanix Complete Clusterのハードウェア構成。1つのノードが2Uのブロック(筐体)に4つ収納される

 Nutanix Complete Clusterは、仮想環境を容易に構築できるアプライアンスサーバー。1つのノード内にx86のCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークとVMwareのハイパーバイザーを搭載しており、各ノード内でVMwareの仮想マシンを動作させられる。いわば、ストレージを内蔵した仮想化向けのサーバーといえるのだが、この製品の肝は、ノードをまたがって1つのストレージプールを構成する点にある。

 具体的には、独自の分散ファイルシステム「NDFS」により、複数のノードが搭載するローカルストレージ(320GB Fusion-io io-Drive、300GB SSD、1TB SATA HDD×5)を仮想的なストレージプールとして束ね、各ノード上の仮想マシンから透過的に利用できるようにしている。

 ストレージプールを構成するノードは最小3ノードからスタートでき、規模の拡大に合わせて最大50ノードまで、オンデマンドで追加していける拡張性を備える。また、vMotion、VMware DRS(Distributed Resource Scheduler)、VMware HA(High Availability)もサポートしているため、これらと組み合わせて、仮想マシンの可用性を向上させることも可能だ。

 さらに、ストレージのパフォーマンスに優れるのも大きな特徴という。仮想環境では、SAN/NASといった共有ストレージネットワークのI/Oがパフォーマンスのボトルネックになるとも言われているが、Nutanix Complete Clusterでは、各ノードに超高速のFlashストレージであるFusion-ioのio-Driveを搭載し、高速なI/O処理を実現している。

 もちろん、すべてのデータをio-Drive内に格納できるわけではないものの、各ノードに搭載されているSSDやSATA HDDとの間でアクセス頻度に応じた自動階層化処理を行い、頻度の高い“ホット”なデータを極力io-Drive内に保存したり、io-Driveを書き込みキャッシュとしても利用したりして、I/Oのボトルネックを極力排除する仕組みだ。

スモールスタートが可能なだけでなく、規模を徐々に拡大できる柔軟性を持つ
パフォーマンスのボトルネックを排除する仕組みを備える

 一方、「仮想環境のシステムコストの約6割をストレージが占める」(Nutanix セールス担当副社長のSudheesh Nair氏)と言われる点も、現在のITシステムにとっては大きな問題だ。しかしNutanix Complete Clusterでは、前述のようにローカルストレージをクラスタ化してストレージプールを構成しているため、SAN/NASといった高価なストレージネットワークを廃して、コストを削減することが可能。

 日商エレ マーケティング本部 第二プロダクトマーケティング部の榎本瑞樹部長によれば、Nutanix Complete Clusterを利用すると、半分から1/3までコストを圧縮できるのではないかという。

 特に、Nutanix Complete Clusterが多く採用されているVDIでは、このパフォーマンスとコストの両面が評価されているとのことで、榎本部長は「ブートストーム時などアクセスが集中した場合にI/O性能が求められ、それを満たすためには高価なネットワークストレージを導入せざるを得なかったため、商談が止まってしまうケースが多くあるというが、Nutanix Complete Clusterによってパフォーマンスとコストの課題が解決できるし、VDI案件は小さく入れて拡張していくことが多いため、そこで大きな武器になっている」と、価値を説明した。

大きなコストを占めていたストレージがなくなることにより、仮想化基盤全体のコストを削減できるという
Nutanix セールス担当副社長のSudheesh Nair氏

単一ベンダーによるサポートが強み

日商エレ マーケティング本部 第二プロダクトマーケティング部の榎本瑞樹部長

 そもそも、x86ベースで仮想化/クラウドの基盤を提供するという考え方は、そう真新しいものではない。

 榎本部長は米国駐在時代の2008年に、クラウド/仮想化市場の立ち上がりを国内よりも一足早く経験しているが、GoogleやAmazonなどの巨大なクラウド基盤に耐えうるプラットフォームは、「x86アーキテクチャと分散技術を利用するやり方が主で、汎用サーバーを並べて分散させているので、外部ストレージは使っていない」といった特徴があったという。

 そして、こうしたアーキテクチャをエンタープライズにも応用すべく、Nexenta Systems、Caringoなどの新興ベンダーがソフトウェアベースのソリューションを提供し始めた。しかし、「こうした製品は技術力のあるサービスプロバイダでは使えても、簡単には使えないため、エンタープライズでは敷居が高い」(榎本氏)との欠点があったため、そのまま日本に持ってくるのは難しいという問題があった。

 一方、アライアンスでソリューションを組み上げるというアプローチが、大手ベンダーを中心になされており、vBlockやFlexPodなどのソリューションが市場には提供されている。Nutanix Complete Clusterがこれらと決定的に異なるのは、前述したように1つのベンダーから完成品のアプライアンスとして提供されている点で、Nutanix Complete Clusterでは、1つのノード内にCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークをすべて搭載し、VMwareの仮想環境もあらかじめ導入されているため、ハイパーバイザーのコード的な問題など一部を除けば、Nutanix(とその代理店)が責任を持ってサポートを提供できる。

 しかも、スケールアウト技術によってスケーラビリティが確保されているので、小さな顧客にも大きな顧客にも同じ製品で容易に対応でき、またコストも他のソリューションに比べて低い。こうした点からNutanixのNair副社長は、「複数の異なるベンダーから構成されるソリューションは、当社の製品に比べてコストが高くメリットがない」として、自社の優位性を訴えた。

 なお、現在はまだハイエンドストレージと比べると機能が充実しているとはいえない面があるものの、スナップショットはすでに対応しているほか、重複排除、圧縮、暗号化、ディザスタリカバリ、シンプロビジョニングなどの機能を随時追加していく予定だ。

ストレージとしての機能も強化していく