日本IBM、5月15日付けで外国人社長体制に~グローバル化の必要性を強調


社長を退任して会長に就任する橋本孝之氏(左)と社長に就任するマーティン・イェッター氏(右)

 日本アイ・ビー・エムは3月30日、社長交代人事を発表した。5月15日付けで橋本孝之代表取締役社長執行役員は代表取締役社長を退任して取締役会長に就任、新しい代表取締役社長執行役員には、IBM Vice President of Corporate Strategy and General Manager for Enterprise Initiativesのマーティン・イェッター氏が就任する。日本IBMで、日本人以外の社長が就任するのは2人目となるが、数十年日本人社長が続いており、イェッター氏は久々の日本人以外の社長となる。

 日本アイ・ビー・エムは3月30日、社長交代人事を発表した。5月15日付けで、橋本孝之代表取締役社長執行役員は社長を退任して取締役会長に就任、新しい代表取締役社長執行役員には、IBM Vice President of Corporate Strategy and General Manager for Enterprise Initiativesのマーティン・イェッター氏が就任する。日本IBMで、日本人以外の社長が就任するのは2人目となるが、数十年日本人社長が続いており、イェッター氏は久々の日本人以外の社長となる。


交代人事で、「世界に分散するIBMの資源を統合して日本の顧客に提供」

取締役会長に就任する橋本孝之 代表取締役社長執行役員

 3月30日に行われた記者会見で橋本氏は、「本日開催された日本IBMの取締役会で今回の人事が決定した。私が社長に就任した2009年1月は、日本は緊急危機の状況で、日本のお客様は厳しい経営環境に直面していた」と就任時を振り返った。

【お詫びと訂正】
初出時、「日本IBMの株主総会で」と記載しておりましたが、「取締役会」の誤りです。お詫びして訂正いたします。

 橋本氏は、「社長就任以来、スマータープラネットというビジョンを実現すべく経営を進め、2010年1月には世界を先駆け社長直轄のクラウド事業選任部隊を社長直轄で組織し、現在注目されているビッグデータへの対応、お客様がグローバル経営を実践するためのソリューション提供、北九州地区でのスマーターコミュニティの実証実験、東日本大震災における被災地支援のためのスマーターシティの取り組みなど行ったことによって、日本企業の経営変革のための第1フェーズを完了することができたのではないかと自負している」と実績を説明した上で、「いよいよ第2フェーズに入るに辺り、世界に分散するIBMの経営、資産、人材などの資源を統合して日本のお客様に提供する必要がある。5月15日以降、マーティン新社長のもと、それを実践することに大きな期待を寄せている」と社長交代人事について説明した。

 日本IBMが全世界のIBM中でも業績が悪いことや、3月29日にシステム開発失敗でスルガ銀行が日本IBMを提訴し、日本IBM側が74億円を超える賠償命令が出た件と今回の社長交代については、「確かに業績は芳しくないが、今回の交代とは全く関係はない。なお、スルガ銀行の問題については、本日付で控訴した裁判中の案件のため、コメント等は差し控えたい」と橋本氏が説明した。


独IBM社長を4年務めたイェッター氏「世界の主要国が抱える課題と日本の課題は共通」

5月15日付けで代表取締役社長執行役員に就任するマーティン・イェッター氏

 新社長に就任するマーティン・イェッター氏は、1986年にアプリケーションエンジニアとしてドイツIBMのインダストリアル事業部門に入社。ルイス・ガースナー氏がIBM CorporationのCEOを務めていた時代に、エグゼクティブ アシスタントを務めた経験もあるという。現職に就く前は、4年間にわたってドイツIBMの社長を務めた。

 マーティン氏は「日本での事業方針等については、5月15日以降にあらためて説明する」としながら、「橋本から話があったように、多くの日本のお客様が課題に直面している。その課題に対応するために私が社長に就任するのだと考えて欲しい。世界的に見て、企業であれ、政府、官公庁であれ、新たな産業モデルが出来上がる中、変革が求められている。従来型のビジネスモデルでは対応できなくなっている。世界の経済はグローバル化し、各経済圏は相互接続し、依存する関係となっている。成長市場に属する国であれ、日本やドイツ、アメリカのような成熟市場であれ、その状況は変わらない」と述べ、変革期を迎え、グローバルな人材などリソース活用が日本IBMにとって必要であることを示唆した。

 また、自身のドイツIBM社長時代の経験として「ドイツでは企業改革のイニシアチブを実行してきた。その結果、ドイツIBMのオープン化が進んだ。以前はドイツ国内にクローズした組織だったが、ビジネスもそうだったが人材なども大きく変革し、オープンで近代的な法人に生まれ変わった。その結果、お客様をよりよくサポートできるようになった。IBM自身の変革は、お客様第一に考えた結果ではないか」と企業体質を大きく変革させた経験を紹介した。

 現在の日本が抱える課題として、「世界の主要国が抱える課題と日本が抱える課題は共通している。自動車業界を例にとりましょう。トヨタ、本田、メルセデスベンツ、グローバルに開発が行われ、人材のグローバル化が行われ、生産もグローバルで進んでいる。IBM自身はこのグローバル化に向けての旅路をすでに10年前から開始し、すでに現実化している。我々はお客様にグローバルな人材を活用することができる。その道筋、旅路のお手伝いをすることができる経験とノウハウを持っている。これを生かして、グローバルな人材を積極的に日本に投入することも進めていきたい」と日本のグローバル化が必要であるとの見方を示した。

 なお、同じ5月15日付けで、現在は最高顧問の北城恪太郎氏が相談役に、現在は会長の大歳卓麻氏が最高顧問に就任する。



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